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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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大晦日(舞華&麗華)

大晦日の舞華と麗華の過ごし方。

過ごす場所も過ごし方も全く違う二人。

いい新年が迎えられるといいんですが・・・。

冬休みの間、珍しくずっと両親は家に居るらしい。

私はそのせいでしずかと会う事も出来ない。

麗ちゃんは気にする事なく堂々と出て行ってクリスマスから大晦日の今日まで帰って来ない。

私は家で両親が持ち帰ったCDを聴かされ議論を交わしその合間にメールで静とやり取りをしていた。

聴き疲れた私は勉強をするからと自分の部屋に戻った。

ベッドに倒れ込んで携帯を開く。

『今年ももう終わりだね』

『そうだな』

『ねぇ、日付が変わるちょっと前に電話してもいい?』

『暇してるしいつでもOK』

大晦日のメール。

年が変わる瞬間は電話が通じにくい。

毎年だ。

おかげで両親に電話をするのは毎年朝になってからだった。

だから少し前から新年を迎えるまで静と話がしたかった。

一緒に新年を迎えたかった。

「舞ちゃ〜ん、ちょっと聴いてくれなぁい?」

またお母さんに呼ばれた。

勉強中だと言ってるのに・・・ってしてないんだけど。

私は仕方なくリビングに下りて行く。

お父さんとお母さんの声がする。

どうやら意見が対立しているらしい。

「あ、舞華。これ聴いてくれないか?お前の意見を聞かせて欲しい」

一体何時間こんなのにつき合わせる気なんだろう?

たまに帰って来たらこれだもん・・・。

お母さんがCDを入れ替えながら意外な一言を言った。

「ねぇ、舞ちゃん。信也君のバンド次はいつライブするの?」

私は訊いてなかったので知らない。

「麗ちゃんなら知ってると思うけど・・・」

「訊いてみてくれないかしら?もし休み中にあるなら一緒に聴きに行きましょうよ」

予想外の言葉だった。

だって、私はまだ早いって言ったんだもの。

「先手打たなきゃ他に取られる可能性があるでしょ?」

確かにその可能性は充分にある。

CDを聴きながら私は頷いた。

でも、私は自分の両親がこんな仕事をしている事・・・静に話してない。

最近はレーベルとしての認知度が高い。

プロ思考の彼等なら多分お父さんの顔くらい知ってると思う。

正直・・・一緒に行きたくない。

まだ静に知られたくない・・・。

「お父さん。これ・・・ドラムの人変えるか、打ち込みでもう一度録ってみてくれない?」

私はそう言い残して部屋に戻った。

「麗ちゃん?舞華。お母さんがGEMの次のライブ行きたいんだって。いつか教えてくれない?」

私は麗ちゃんに電話した。

電話の向こうで信也さんの声が聞こえる。

麗ちゃんは信也さんの所に居るんだ・・・。

限りなく一番に近い二番目に好きな人・・・。

『舞ちゃん、二日だって。いつもの所』

麗ちゃんの言葉に私は言葉が出なかった。

『舞ちゃん?』

「あ・・・ありがと。伝えとくね・・・」

私は何とか絞り出した声でそう言って電話を切った。

どうしよう・・・。

静にバレちゃう・・・。


お父さんとお母さんが居ると一日中音楽の話。

正直退屈。

私はクリスマスの朝から外に出た。

舞ちゃんが居るし、私なんか居なくたって問題ない。

私は真っ直ぐに信也の家にやって来た。

「信也、おっはよ〜」

持っている合鍵で中に入って信也のベッドにダイブした。

「ぐふっ・・・!」

信也が苦しそうに唸ってる。

「麗華っ・・・お前俺を殺す気か・・・?!」

「ごめんごめ・・・」

信也に腕を掴まれ、一瞬にして組み敷かれた。

「伯父さんと伯母さん居るんじゃなかったっけ・・・?」

「舞ちゃんが家に居るし大丈夫」

私は信也の首に腕を絡めてキスをした。

私達はそのまま愛し合った。

信也の体温と匂いは落ち着く。

私は舞ちゃんを人身御供として両親に差し出し信也と何度も身体を重ねた。

クリスマスにここに来てから家に帰らなかった。

今日は大晦日。

食事よりも愛し合う事に時間を費やし、ここ数日間服なんてほとんど着てない。

一日の大半はベッドに居るからだ。

「お前、帰らなくていいのか?」

「平気。いつもの事だもん」

別に今更だし、両親だって心配してない。

あの人達は舞ちゃんが居ればいいんだから。

別に拗ねてる訳じゃない。

私は放って置かれる方が楽だもん。

舞ちゃんみたいに大人に敷かれたレールを歩むのは性に合わない。

私達が再びじゃれあい始めたところで携帯が鳴った。

「もしもし?」

舞ちゃんだった。

『麗ちゃん?舞華。お母さんがGEMの次のライブ行きたいんだって。いつか教えてくれない?』

舞ちゃんの声は何故か沈んでる。

「信也、次のライブっていつ?お母さんが見てみたいんだって」

私は胸を触る信也の手を掴んで止めて尋ねた。

「え?伯母さん来んの?」

信也は顔を曇らせた。

「いつ?」

「・・・二日・・・いつものライブハウス」

信也は困ってるみたいだった。

当然よね。

うちの両親が日本で第二位の大手レーベルの社長なんて話、誰にもしてないんだから。

バンドのメンバーさえ知らないんだもん。

「舞ちゃん、二日だって。いつもの所」

舞ちゃんの声が聞こえない。

ちゃんと聞いてるのかな?

「舞ちゃん?」

『あ・・・ありがと。伝えとくね・・・』

舞ちゃんはそう言って電話を切った。

「舞・・・何か言ってた?」

「ん〜?ありがと、伝えとくだって」

私は携帯をベッド脇に置いて信也にキスをした。

信也が舞ちゃんを気にしてるなんて思わなかったし。

「二日、私も行くね」

「・・・あぁ」

信也はあまり乗り気じゃなかった。

ご覧頂きありがとうございます。


舞華は会社の幹部役員である自覚は全くないようです。

両親の持って帰ってくるCDを聴くのは彼女の仕事みたいな気がするんですけどね・・・。

会社役員ってことは・・・給料も貰ってたりするのかな?

ふと、そんな事が気になってしまいました。


毎日更新したかったんですけど・・・体力的に厳しいです・・・。

ちょっとの間病気療養をしましたが、一気に回復・・・とはいきません。

二つの病持ちの武村には現在確約が難しいので・・・偶数日更新で頑張ります。

次は20日。

楽しみにしていただけると嬉しいです・・・。

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