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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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イヴの夜

ライブが終わって帰って来た麗華と舞華。

作者視点(?)で書いております。

クリスマスイヴの夜、信也とすぐ傍の曲がり角で別れた二人は家の前で固まった。

電気が点いている。

出掛ける時は全部の電気を消したはずだ。

この家の鍵を持つのは聖ルチアの理事である叔母と両親だけ。

二人は不安になった。

「麗ちゃん・・・電気が点いてる・・・」

舞華は震えながら麗華のコートを掴んだ。

「大丈夫、私が一緒だから。舞ちゃんは黙っててね」

麗華はコートを握る舞華の手を優しく叩いた。

「ただいまぁ」

麗華の声にリビングから顔を出したのは久々に見る両親だった。

「麗華・・・舞華もこんな時間まで何してたんだ?」

普段穏やかな父が見せたのは険しい顔だった。

「ごめん、お父さん達が帰って来るって分かってたら出掛けなかったんだけどね。舞ちゃんに聴いて欲しいバンドがあって連れて行っちゃった」

麗華は平然と言った。

「聴いて欲しいバンド?」

「うん、GEMっていって信也のバンドだよ」

父、敦の視線が舞華に向けられた。

「どうだった?」

音楽の話になると彼は怒ることさえ忘れるらしい。

「うん・・・上手なんだけど、まだ早いって言うか・・・もう少し場数踏んだ方がいいと思う。将来は期待できるんじゃないかな」

舞華は困惑しながら答える。

「悪くない?」

「そうだね・・・ちょっと甘いけど、アマチュアじゃ群を抜いてる」

敦の目が輝いた。

「今度聴きに行こうじゃないか」

麗華と舞華が顔を見合わせる。

「でも、舞ちゃん。校則ではそういった場所への出入りは禁止じゃなかったかしら?」

母、美佐子の言葉に舞華は俯いた。

「ごめんなさい」

「こういう家庭環境だし、音楽に関しての事だし私達は構わないのよ。でも・・・百合さんが・・・ね」

美佐子は学園の理事である高井戸百合・・・敦の妹の事を気にしていた。

「舞華だけに厳しいからな・・・どうしたもんかな・・・」

敦は溜め息を吐いた。

舞華の耳は確かだ。

この耳のおかげで会社は大きくなっている。

だからこそ音楽から遠ざけてはならないと思う。

「ま、今は休みだし。私達と一緒に聴きに行く分には構わないんじゃない?私達の仕事だし、舞ちゃんはうちの後継者だしね」

美佐子は微笑んだ。

舞華は高校生にして既に幹部役員の欄に名前を連ねている。

それに対して他の幹部役員からの異論はなかった。

過去に何度も彼女の言葉を無視してデビューさせた歌手が全然売れなかった事実があるからだ。

舞華のOKなくしてデビューはありえない。

そんな意識が社内に根付いていた。

「たくさん料理作ったのに全然帰って来ないんだもの、料理冷えちゃったわ」

「お腹すいた、食べてもいい?」

麗華はテーブルの上に乗っている料理を摘んだ。

「麗ちゃん、お行儀が悪いわよ。コート脱いで手を洗ってらっしゃい」

「はぁい!」

麗華は舞華の腕を掴んで階段を駆け上がった。

「ね、大丈夫だったでしょ?」

部屋に入った瞬間、麗華は舞華に微笑んだ。

彼女は両親が音楽を聴く事に反対しないと分かっていたらしい。

「問題は叔母さんなんだよね。あの叔母さんさえ認めてくれれば苦労しないで済むんだけどな。舞ちゃんと堂々とライブに行っても怒られない方法ってないのかな・・・?」

麗華はコートを脱ぎながら独り言のように言った。

「無理だよ。叔母様はそういう事に理解のある方じゃないもの」

舞華は溜め息を吐きながらコートをハンガーに掛ける。

「あれ?舞ちゃんそんなの付けてた?」

麗華の視線が舞華の胸元に向けられた。

静斗から貰ったネックレスだった。

「あ・・・行く時は服の下に付けてたんだけど金属で痒くなっちゃったから外に出したの」

舞華は咄嗟に嘘を吐いた。

何故だか分からないが麗華に話せなかった。

「麗ちゃん良い匂いするね」

だから話題を変えた。

「これ?信也に貰ったコロンなの」

麗華は嬉しそうに手首を舞華に近付ける。

「麗ちゃんのイメージにぴったりの薫りね。さわやかで明るい感じ」

嬉しそうな麗華を見て舞華は微笑んだ。

「信也は私の事分かってくれてるからね」

「麗ちゃんは信也さんが好きなの?」

舞華は深い意味もなく尋ねた。

「そうね・・・信也は二番目に好きな男よ、限りなく一番に近い二番目。一番好きな男は手が届かないの」

そう答えた麗華の顔が少し寂しそうだった。

舞華の胸が少し痛んだ。

麗ちゃんでも辛い片想いなんてするんだ・・・。

それ以上尋ねる事は出来なかった。

「舞ちゃん、GEMの話だけど・・・まだ早いってどう言う事?」

麗華はベッドに腰を下ろして舞華を見上げた。

彼女もそれ以上触れられたくなかったのかもしれない。

「・・・まだ方向性が定まってないみたいに感じるの。たくさんの音楽の影響を受けてるのは分かるんだけどGEMっぽさがないの。それが定まればプロでも通用すると思うんだけど・・・」

舞華はそう言って苦笑した。

「それはGEMが解決しなきゃならない事だし、だからこそ時間が必要だと思うの。外野が言うと彼らの音楽を駄目にする可能性もあるし、少しずつ変わってきてるからプロになるなら二年くらい先が妥当だと思う。」

舞華は本当に高校生なのか?

麗華は時々そう感じる。

音楽の事になると大人も敵わない。

二人は一階の洗面所に向った。

手を洗ってリビングに向うと両親は笑顔だった。

久々の家族団欒。

四人の笑い声は朝方まで響いていた。

ご覧頂きありがとうございます。


最近ちょっとこの暑さでバテ気味。

皆様は大丈夫ですか?


あまりにも暑いので設定が寒い季節・・・。

そしてあまりの暑さに頭がショート寸前。

ちょっとスランプ。

あ・・・愚痴っちゃった。

すみません・・・。


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