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「金魚、大丈夫?先生。」


朝、教室にはいるとアキラーの声が聞こえた。

見ると水槽の金魚は、おなかを上にして口だけパクパクと浮いていた。


「病気かしら…。明君は席について、金魚の事はあとでね。出席を取りますよ、みんなも席についてー。」


あの金魚が死にかけているのは、コドモのオレたちでもわかった。病気なんて通り越しちゃっているのもわかっていた。

そして、オトナが、


「こりゃ、だめだ。死ぬな。」


なんて言わない事も知っている。あんな事聞くのはナイチャーのアキラーだけだ。

オレはゲンセイに目配せしながらアキラーを見てニヤニヤしていた。

アキラーは心配そうに水槽の金魚を見ていた。


アキラーは2学年の春にトウキョーから転校してきた。ぼっちゃん刈りで色が白い。背が高いのもそうだけど。丸坊主の焦げ茶色のオレたちのなかで目立っていた。そして学校でのテストはなんでもないようにいつも満点をとっていた。女子にも優しい。なんとなくヤナ奴だと思っていた。先生もオレたちにはミノルーとかゲンセイとか呼ぶけどアキラーには「明君」だった。


放課後、そうじ当番のオレとゲンセイは同じくそうじ当番のミドリーとアキコーから、そうじをしない男子は先生に言いつけるとおどされながらイヤイヤそうじをしていた。だから女子はスカン。

そしてアキラーもいた。


 「アキラー、オレのかわりにそうじしれー。そしたら、オレ帰れるバーヨー。」


オレがアキラーに言った。


 「ごめん、ミノルくん。ぼく急いでるから…。」


アキラーの手にはビーカーが、ビーカーの中にはあの死にかけた金魚がただよっていた。

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