寂シサト希望ト
主人公病んでる?
会って間もないのに何となく惹かれてるメノウ。
ちょっと短い朝目覚めた彼女の心を語っております。
『メノウ・・・』
誰かが私の肩に手を置いた。
誰かが私の名を嬉しそうに呟いた。
__貴方は誰?
薄い桃色の綺麗な長髪。煌びやかな白銀のドレス。頭には金色に輝く輪っかみたいなものがあって、綺麗に微笑んでいる。目を細めて、私に微笑みかけている。
声をもう一度聞こうとしても何も言ってはくれない。
あぁ、何故だろう。私はこの人を知っている。
そして、どうして____?私の頬に伝う涙が止まらない・・・。
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「・・・ゆ、め?」
夢だった。
目を覚ましたとき、窓から白に似た黄色い光が目映くカーテンの隙間から差し込んでいた。
私は無意識に、閉じかけているカーテンをゆっくりと開けた。
一瞬、あの目映い光に包まれる。さっきの夢と同じだ。
まだくっきりと瞼に焼き付いているあの夢。
なんだか懐かしく、悲しかった。
よくわからない感情に戸惑い、風に当たりたくて窓を開けた。
それでも懐かしい悲しさは消えなくて。次の瞬間、少しひんやりとした風が颯爽と駆け抜けた。なんとなくスッキリした気がして、なんだか心地良くて。
人間界の朝は気持ちが良い。心を落ち着かせてくれる。
バサバサっ
何かが羽ばたく音がした。
何となく見上げて見ると、仲良さそうに鳥の群れが遠くへどんどん飛んでいく。
・・・羨ましい。
一層、自分が虚しく悲しく思えた。
私も翼があったら、飛べたのかもしれないのに。あの、自由な空へ。
そうえば、キーラスはいるのだろうか。
「・・・起きているのかな」
私は、廊下を通りリビングに到着する。
辺りを見回しても、閉まっているカーテンからの微かな木漏れ日だけが辺りに光を与えているだけで、昨日見た部屋と何の変わりもない。そして、目的の人はいなかった。
「どこ?」
どこにいるの?
急に不安と恐怖に駆られた身体は、言うことを聞いてくれない。ただ、どこにいるのか彼が知りたい。
自分でも、本当は寝室に居ることくらいわかっているのに、頭がよくまわらない。ただ、希望を求めてる。
ずっと独りであった、そんなトラウマが蘇る。私の裏切られて悪魔に弄ばれた悲劇が、静かに蘇るのだ。
お願い、私を独りにしないで。
私の側に居てよ。
貴方を信じるから、私が貴方の味方でいるから。
どんなことでもするから。
_だから、側に居て?
そんな焦燥感に理性が持って行かれそうで、必死に理性を留まらせた。
出会って間もないはずなのに、無意識に求めてしまう。
理由なんて分からない。ただ、私はどうやらほんの束の間の夢に囚われたのかもしれない。
そんなことを、頭の冷静な部分で考える。だって本当なら、私は直ぐに逃げる気だった。何日も居られない。一晩だけ、お世話になるだけだ。そう自分でも考える迄もなく納得していた。
でも、昨日の彼との触れ合いが、交流が、__私のリズムを狂わせたのだ。
頭に、悪魔に弄ばれた日々が過ぎった。
炎に焼かれて、凍らされて、縄で打たれて、あぁ身体も抱かれたっけ?
あのときの私の部屋は狭くて、ほんの小さな木漏れ日の如き淡い光だけが頼りの、本当に狭くて冷たい牢獄。
あれ、頭がガンガンするや。私、何思い出してるんだろう。
あれは終わったこと。既に済んだこと。その為に、今こうして逃げて隠れているのでしょう?
そう言い聞かせて、私はリビングの小さな椅子に座った。
椅子は、何故だかひんやりしていた。
「お~い」
「!」
聞き覚えのある声がした。
私は直ぐに振り向く。そして、振り向いた先に彼がいた。
私が振り向くと彼が、私のずっと側にいたことに気づいた。
寄り添うかのように、優しく側にいたことに。
先程まで見えなかった彼の姿が見えた瞬間に、_私の心が満たされるのを感じた。
「大丈夫か?人間の朝ってのは辛いか?まぁ俺も朝は苦手だけど」
彼にとっては、これは何の変哲もないスキンシップらしい。
こんな彼を見て、自分の心が静まるのを感じていく。
あと、一晩だけ居よう。もしかしたら迷惑かもしれないけれど、私の心の整理がつくまで。整理は今日中に片をつけよう。彼を巻き込まないように、ここを立ち去ろう。自分と彼の命を守る為に。
「私は平気だ。さっきは色々考えていただけ」
それまで、笑っていたい。
だって、
これが、私の最後の___
貴方と居られる時間だから
ちょっと病み気味。そして一応そろそろ終わると思う(汗)