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第七話 正体

やっと主人公の能力名出せました。本当は第一話か第二話くらいで出すはずだったのに……orz

あ、感想・批評お待ちしています。



「あれか……」

 ティナの指差した方向に進むとレンガ造りの大きな建物に辿り着いた。

 恐らくあの少女はここから逃げて来たのだろう。地面や草に多数の血痕が付着していて、どこから逃げて来たのかが分かった。

「ひとまず中に入るか」

 入り口に手を当てて『転移』を使用、扉を消滅させる。その瞬間、喉元に何本もの槍の穂先を突き付けられた。

「おりょ、これはまた手荒なお出迎えで」

「魔法で弟が死ぬのを見ていたからな。手荒にもなる」

「あいつ弟だったのか。悪いな、殺しちまったよ」

 現れたのは槍を持った警備兵十数人とそれを従える男だった。どうやら双子らしく、さっきの男と顔立ちが全く一緒だ。

「代わりに我々の実験台になってもらおうか」

「実験? 何の実験だ?」

「人と魔獣の遺伝子を混合させて全く新しい生命体を造る。貴様が逃がした少女は唯一の成功例なのだ」

「それにしては随分と扱いが酷いんだな。両腕が無くなってたぞ」

「あれは逃走防止用の腕輪が反応しただけだ。本当は足に付けるべきだったのだがな、足に合う大きさが無かったんだ」

「……お前いっぺん死んだほうがいいぞ」

 動こうとした瞬間、刃が首を掠めて血が軽く流れた。

「死にたくなかったら動かない方が賢明だぞ? それに妙な魔法を使うとき手を敵に向けるのは分かっているんだ」

「へぇ、よく見てるじゃん。ただのクズかと思ったよ」

「強がりおって。後でどうなるか分かっているのだろう?」

 男は完全に勝った気でいるのかニヤニヤとしながらイブキを見ていた。

「兄弟なだけあって言うこと同じなんだな。弟も死ぬ前にごちゃごちゃ言ってたよ」

「……貴様、バカにしているのか」

「さあね。あ、冥土の土産に教えてやるよ」

 突き付けられていた槍が一つ残らず消え去った。イブキ自身は全く動いていないにも関わらず。突然の事態に理解できずに狼狽える男達。そのリーダーも額から冷や汗を流し動揺していた。

「なっ、どういうことだ!?」

「別に手を向けなくても能力は発動出来るんだよ。見た目に騙され過ぎ。まあ騙すつもりは無くて、ただなんとなく気分でやってただけなんだけどね」

 あっはっは、と笑うイブキの笑顔が男達には死神の笑みに見えた。

「く、くそ!」

「逃げても無駄」

 リーダーが施設の奥へと逃げ出す。だがそれをみすみす逃すイブキではない。素早く『転移』を発動させ、リーダーの首を飛ばす。

「それじゃお前らもバイバイ」

 発動スピードが速過ぎてイブキの周囲にいた男達はろくな抵抗も出来ずに全員が絶命した。

「さて、邪魔者も消えたし実験関連の資料がないか調べるか!」

 薄暗い坑道のような道を意気揚々と歩き一つ一つ部屋に入り中を調べていく。途中何人か警備兵が異変に気付いて襲ってくるが、もれなく冥土に旅立ってもらった。

「お次の部屋は―――おっとこれは……」

 手当たり次第に探していると、中に円柱型の培養槽がいくつもある部屋に辿り着いた。近くには机もあり、その上に紙の束が散らばっている。

 手にとって目を通すとそこにはこう書かれていた。



『魔人生産による戦力増強計画概要』



「魔人だって……?」

『今我が国は深刻な戦力不足に瀕している。無理矢理徴兵しても民衆の反感を買うだけで大した効果は得られない。そこで新しい生命体を造りだして戦力増強をはかることにする。様々な実験の末、人と魔獣の遺伝子を混合させたところ、人型の生命体を造ることに成功した。これを「魔人」と呼称する。測定の結果、身体能力と魔力が一般の平均値を大きく上回った。さらに自然治癒の速度も目を見張るものがある。よって生産基盤が整い次第、魔人の生産を開始し――』

 そこまで見て、イブキは読むのを止めた。

 どうやらこの施設は生物兵器を開発する所で、あの少女はそれによって造られた魔人らしい。入り口で会った男達の一人が『唯一の成功例』と言っていたから間違いないだろう。

「こりゃあ関連施設も潰しとかないとまた同じことになるな。問題なのは『我が国』ってのがどこなのか分からない」

 骨が折れるなあ、と独りごちるイブキ。

「っと、だいたいのことは分かったし、そろそろこの施設ともおさらばしますか」

 イブキを中心に力が渦巻いていくと同時に髪の色が白く変色した。

「リミッター解除、『万象絶無(うつせみ)』」

 そう呟き、能力を発動。暗黒の能力波が爆発的なスピードで周囲に広がっていった。







「遅いですね……」

「まああいつのことだから、大丈夫だろうけどね」

 イブキがいなくなってからアリシアはずっとこんな調子だった。心配のし過ぎで倒れるんじゃないかと思うほどである。

「それにこの子もずっと目を覚ましませんし」

「重度の貧血だからね。失血死する手前だったし、もしかしたら一生寝たきりかも……」

「縁起悪いこと言わないでください」

「冗談よ。多分もうすぐ起きるんじゃないかしら」

 ティナが女の子の頭を撫でながら言った。

「なぜそう思うんです?」

「自然治癒のスピードが早すぎるのよ。さっき腕を治すとき、もうほとんど傷口が塞がってて血も止まってたわ」

「……何者なんでしょうか、この子は」

「魔人って言うらしいぞ?」

「ひゃあっ!?」

 いつの間にか帰ってきていたイブキがアリシアの疑問に答えた。

「お帰りイブキ」

「おうただいま。ってどうしたんだアリシア、そんなにビックリして」

「お、驚かさないでください! 心臓が飛び出るかと思いました……」

「ごめんごめん、そんなつもり無かったんだ。それよりティナは俺が来てたのに気付いてただろ」

「アリシアの驚く姿が見たかったの」

「お前なあ……」

「ひ、酷いですよー!」

「それはさておき、どうだったの?」

 イブキは施設での出来事を全て話した。警備兵、入り組んだ道、培養槽、魔人に関する資料――

「なるほど、魔人ね……」

「許せない話ですね、戦力増強のために命を弄ぶなんて!」

「一応潰しといたけど、同じようなのはまだあるとみた方がいい」

「じゃあ旅の途中で見つけ次第破壊ってことになるんですか?」

「そうなるな」

「でも今回みたいなことが無ければ見つけるのは難しいんじゃない?」

「そこら辺はティナの能力に頑張ってもらうしかない」

「結局あたしに頼るのね」

「こういうとき私って役立たずですよね……」

「いやいや、俺等の能力が反則なだけだから気にすんなって」

「そうよ。あたしはイブキとアリシアだったら迷わずアリシアをとるわよ」

「をい」

「……なんというか、素直に喜べません」

「ダメよそれじゃ、盛大に喜ばないと―――あ、起きた」

 三人の話し声がうるさかったのか、ティナに撫で続けられていた女の子は軽く身動ぎした後、ゆっくりと目を開けた。




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