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第六話 襲撃

眠い中やったからちょっと変かも……あ、元からかorz



 東へ続く道を馬車が通る。周りには鬱蒼と森が生い茂っていて、馬の蹄の音だけが響いていた。

「なあアリシア」

「何ですか?」

「ラグーンって言う古代遺跡にはあとどれくらいで着くんだ?」

 イブキが馬の手綱を握りながら荷台にいるアリシアに訊ねた。

「そうですね、この速度で行くとだいたい一ヶ月ぐらいで着くと思います」

「一ヶ月もか……」

「嫌そうね」

「御者台にいるとケツが痛いんだよ」

「我慢しなさいよ、男でしょ」

「あの、代わりましょうか?」

「おおありがとう! マジで感謝だぶっ!?」

 嬉々として交代しようとするイブキにティナがビンタをかました。

「レディにそんなのやらせんじゃないわよ」

 全く、と溜め息をつくティナ。

 左頬を真っ赤にしたイブキは意趣返しとばかりに言い返す。

「じゃあお前ならいいのか。性格がレディじゃないもんな」

 瞬間、こめかみにピキッと青筋が立った。

「……殺す」

「そんなことしたら誰が手綱を握るんだ?」

「……ふん、後で覚えてなさい……!」

 敵の雑魚役のように捨てゼリフを吐くと荷台の隅っこで拗ね始めてしまった。

「あ、アリシアありがとな。気遣ってくれて」

「い、いえ……それよりティナさんのことはいいんですか?」

「こんなのはいつものことだからな」

「クスッ、仲が良いんですね」

 イブキとティナのやりとりに微笑む。それにつられてイブキも笑った。

「まあな。それよりも、やっと笑ってくれたな」

「え?」

「いや、俺等がアリシアに会ってから一度も笑ってるとこ見たことなかったからな。内心ずっと心配だったんだ」

「そういえばそうでしたね。すいません、迷惑をかけてしまって」

「迷惑じゃないさ。仲間なんだから心配するのは当然だろ」

「はい……ありがとうございます」

 目に涙をにじませたアリシアの表情はとても眩しい笑顔だった。

「そうやってフラグを立てるのね。この色男がっ」

「立ててねぇから。てか何で捨てゼリフみたいになってんだよ」

「イブキなんか死んじゃえばいいんだわ!」

「や、意味分かんないから」

「これだからイブキはど―――何か来る」

 何かを感知して、座り込んでいたティナが急に立ち上がった。

「え? 何だって?」

「だから何か来るって言ってんの。人じゃないし魔獣でもない……来るわよ!」

「何が来るって――うおっと!?」

 イブキの腹に直撃。その勢いでそのまま後ろに倒れこんでしまう。ぶつかってきた何かを引き離そうとして手に液体の嫌な感触がした。

「何なんだよ……って血?」

「おねがい、たす……け、て」

 御者台に飛び込んできたのは、両腕が無い小さな女の子だった。







 そこから逃げることが出来たのは偶然だった。

 偶々檻に手を掛けたとき、鍵の部分がガタついていたので見つかるのを承知で前後に激しく揺らしたところ、錆付いていたため扉が外れたのだ。

 これ幸いと檻から逃げ出した。

 途中見つかってしまい何人か追い掛けてくるが、持ち前の脚力で振り払う。

 施設を出ると周りには木々しかなかった。立ち止まるわけにもいかず、適当な方向に進んでいく。

「ひぎっ!!」

 ボン! と両腕に無理矢理付けられていた腕輪が突然爆発した。

 それによって両腕とも弧を描いて地面に落ちる。

「あ、ああああぁぁぁああ!!!」

 どうやら腕輪は逃走されたときに爆発するようにセットされていたらしい。

 肩の焼けるような痛みにたまらず叫ぶ。一瞬倒れてしまいたい欲望に駆られるが、それでも走るのを止めなかった。

「ぁ……ひとのこえだ……」

 少女の常人離れした聴覚が遠くの馬車の音を捉えた。

 悪党かどうかは分からないが深手を負った状態ではそれに頼るしかない。

 必死に音の方に向かう。大量出血で意識朦朧とする中、とうとう木の間から馬車が見えた。

 最後の力を振り絞って一気に加速する。そして目前に迫ったところで飛び込んだ。

「おねがい、たす……け、て」

 意識が落ちる前に見たのは、青年の真っ黒な瞳だった。







「ヤバいな、死ぬ一歩手前だ。ティナ! 治療頼む!」

「はいはい、『リカバリー・ライト』」

 肩に手を当てるとそこから腕が生えて元通りになる。しかし未だ顔は真っ青でぐったりとしたままだ。

「これでとりあえず外傷は治ったけど、血が全然足りないわ。血液型が判らないんじゃ輸血も出来ないし、この子の自己治癒力に頑張ってもらうしかないわね」

「それにしても、この子は何から助けて欲しいのでしょうか……しかもあんな大怪我で」

「その答え、もうすぐ分かりそうよ」

 ティナが言ってから数秒後、森の中から十数人飛び出してきて馬車を包囲してきた。

「すまないがその子を渡してもらえないだろうか」

 リーダーと思わしき男が三人に話し掛ける。

「この子が何かしたのか?」

「逃げ出したのだ。それは我々の所有物、取り返すのは当たり前だろう」

「それ、ね。まるで物扱いじゃないか」

「そんなことはどうでもいい。とにかくそれを渡せ」

 少女に向かってのばしていた手をイブキが払い除けた。

「うん無理。お前らじゃこの子を幸せにはできない」

「利益のためだ。渡さないなら死んでもらう」

「どうかな。多分馬車に指一本触れられずにお前らの方が死ぬと思うぞ」

「ふん、強がっても無駄だぞ。そっちは三人しかいないだろう」

「人数で物事を見るなんて身の程が知れるな」

「ほざけ!」

 言うや否や全員が各々の武器を取り出して一気に襲い掛かってくる。

 三人を下がらせて戦闘を見られないようにした後、臨戦態勢にはいるイブキ。そして馬車に届く寸前、

「なっ!?」

「ぎゃあああぁぁ!!」

「腕が、腕がーーー!!」

 攻撃してきた男達の腕が、武器もろとも消え去った。

「ぐっ、何が起きたんだ!? 新種の防御結界か!?」

 直接が無理なら魔法で、といくら攻撃してもやはり消えてしまう。

「残念ハズレー、てわけでさようなら」

 手を向けた先にいるリーダー格の男の上半身が細切れになって消滅。ドサッ、と下半身が地面に倒れこんだ。

「う、うわああああ!?」

 目の前の惨状に残りの男達がパニックになる。

「悪いけど、誰一人逃がすわけにはいかないんだ」

 逃がして応援を呼ばれたら厄介だ。一目散に逃げ出される前に、同じ末路を辿ってもらった。

 生き残りがいないのを確認して警戒を解く。

「ああ疲れた。ティナ、周囲に不審な建物がないか調べてくれ」

「森の中にあるの? まあいいけど……あ、あった」

「どっち?」

「あっちに真っ直ぐ」

「はいよ。二人は先に行っててくれ。俺はちょっと寄り道していくわ」

「気を付けて、怪我だけはしないでくださいね」

「寄り道するだけだぞ? 心配性だなあ」

「そりゃしますよ、仲間なんですから」

「はは、確かにな。じゃ行ってくる」




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