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第三話 出会い

うわ、なんだこの駄文……ハンパない(・・;)



 「ありがとうございましたー」

 店員の声を背に三人は服屋を出た。

 イブキはシャツと革ズボンにロングコートを羽織り、全て黒で統一されている。ティナはブラウスにロングスカートという組み合わせで、アリシアはワイシャツとミニスカートにローブを纏っている。

「いやー、久しぶりにまともな服着たよ」

「あたしは初めてなんだけど」

「どんな生活送ってきたんですか二人とも……」

 イブキとティナによる気疲れが激しいアリシアであった。

「次は金だな。すぐに稼げてなおかつ安定した収入が得られる職業ってないか?」

「安定した収入かどうかは実力次第ですけど、一応ありますよ」

「なんてやつ?」

「『探求士』っていって、依頼された魔獣を討伐したり色んな物を採集したりするんです」

「へぇー、面白そうだな。どうやったらなれんの?」

「依頼所で登録すればすぐになれますよ。あっ、あれが依頼所です」

 アリシアが指差した先には周りより大きめな木造の建物があった。

 中に入ると様々な恰好の人々がいた。カウンターには受付があり、壁の掲示板には紙がびっしりと貼り付けられている。

「すいません、登録したいんですが」

「はい、ではこの用紙に氏名を記入して下さい」

 受け取った用紙にそれぞれ書き込み、受付に出す。

「イブキ=センジョウ様、ティナ=エンジェル様、アリシア=リンベルク様ですね。登録証を発行しますので、ここでしばらくお待ち下さい」

 受付嬢が奥に行ったところで、イブキがアリシアに小声で尋ねた。

「(リンベルクって偽名?)」

「(はい、流石に王族の姓を名乗る訳にはいきませんから)」

「(なるほどね)」

 数分後、渡された登録証を見ると、氏名といつの間に撮られていたのか顔写真と『ランク1』という表記が書かれていた。

「顔写真は先程勝手ながら撮らせていただきました。ランクというのは探求士の階級のことで、1〜10までとなっております。ランクごとに受注できる依頼が決まっており、自分のランク以下のみ、なお、『探求士規定』に掲載されている条件を満たせばランクが上がり、武器・防具購入の際に格安になるなどの特典がつきます。特典について詳しく知りたい場合は、『ランクにまつわる特典一覧』を御覧になって下さい」

 受付嬢の親切な説明で仕組みは理解したので、早速金を稼ぐか、と三人は掲示板から適当にランク1の依頼を剥がした。







 受注した依頼が薬草の採集と小型魔獣5体討伐だったため、イブキ達三人は街を出て森の中を歩いていた。

 ちなみに、剥ぎ取った旅人の服は森に行く途中で返しておいた。

「そういえばさ」

 イブキが唐突にアリシアに話し掛けた。

「アリシアってどのくらい戦えんの?」

「それ、あたしも気になってところよ」

 魔獣などに襲われて戦うこともあるかもしれない状況下で、非戦闘員がいるかいないかではだいぶ違いがある。いない場合はともかく、いる場合は非戦闘員を守るという負担が生じるからだ。

「中型魔獣レベル4くらいなら1人で倒せるだろうって周りからは言われてました」

「……ごめん、まずは魔獣についての説明プリーズ」

「やっぱりご存知ないんですね。あ、いや、責めてるわけじゃないんですよ?」

「……いいよ、別に俺なんて」

「そんな所で落ち込んでんじゃないわよ。で、説明してくれない?」

 そこら辺で落ち込んでるイブキを放っておくことにした二人だった。

「まず、魔獣は大きく分けて小型、中型、大型の三つです。それをさらに五つに分けたのがレベル1〜5なんです」

「へぇー」

「一般人はだいたい小型レベル3を倒せて、中型レベル3以上を倒せると精鋭の兵士、大型になると英雄と言っても過言ではないくらい強いです」

「なるほど、じゃあアリシアは精鋭並なのか。ならこの先も大丈夫だな」

 いつの間にか立ち直っていたイブキがうんうんと納得していた。

「今まで気になってたんですけど、お二人はどんな力があるんですか? 魔法って感じはしませんでしたけど」

 王都の消滅、生物の探知。これらをこなすには相当な魔力が必要となる。しかし実際には魔力など欠片も感じなかった。それがアリシアには不可解でしょうがなかった。

「魔法ではないよ、言うなれば固有技能ってところかな。一人一つしか持てないんだ。まあ俺は例外で二つ持ってるんだけどな」

「あたしは『探知』、イブキは『拒絶』と『転移』を司る能力を持ってるの。普段はリミッターが掛かってて本気は出せないんだけどね。魔力なんて必要ないし、詠唱だってリミッター外すときに能力名を口にすればいいだけだから、結構便利よ?」

 便利どころの話ではなかった。

 アリシアはあまりに反則的なスペックに戦慄した。

「ちなみにリミッター外すと体のどこかが変化するんだ。面白いだろ?」

「は、はあ……」

 世界でこの二人に勝てる人いないんじゃ……、と思わずにはいられなかった。

「とりあえず説明終わり。んじゃま、さっさと依頼を済ませますか」

 薬草は意外とすぐに見つかった。しかも森の奥地に群生してたので割と取り放題だった。

「薬草って売ったら金になるっけ?」

「ある程度はお金になると思います」

 それを聞いてイブキが乱獲していると、ティナの能力範囲に反応があった。ティナは辺りを警戒しながら戦闘態勢に入る。

「魔獣が来るわ、全部で9体、2時の方向」

「了解、っと」

 イブキが返事するや否や草むらから狼のような小型魔獣が飛び出してきた。

 襲い掛かってきたそれが激突する、と思いきやイブキの能力によってそのままの勢いで弾き飛ばされる。首でも折ったのか、魔獣はそのまま木に激突してピクリともしなくなった。

「雑魚っ」

「小型魔獣ですから」

「あんたじゃ効率悪いから残りはあたしとアリシアでやっとくわ」

 言うが早いか、手にした短剣数本を魔獣に投擲するティナ。同時にアリシアも無詠唱で風属性魔法『かまいたち』を発生させる。それらは狙い違わず命中し、魔獣達を一瞬で全滅させてしまった。

「これで依頼完了ね」

「……俺の出番ねぇー」

「役立たず」

「ぐはっ」

「あの、元気出してください」

「その優しさが身に染みるよ……」

「ごたごた言ってないでさっさと帰るわよ」

「ティナさん、待ってください。完了証明のために魔獣の死体の一部を持って帰るようにって依頼書に書いてありましたよ」

「あら、ちょうどいいわね。イブキ、役に立つ時がきたわよ」

「……こんな役の立ち方は嫌だ」






 結局イブキが魔獣の尻尾を切り落としそれと薬草を依頼所に出して依頼完了となった。報酬を受け取り、外に出て確認すると銅貨が四十枚あった。

「なあ、報酬の銅貨四十枚ってやっぱ少ないの?」

「少ないですね。三人が一日生活してやっとなくらいですから。ちなみに銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚ですよ」

「ふーん、じゃあもうちょっと稼ぐか。二人は適当に宿でも探しといてくれ」

「分かったわ。行きましょうアリシア」

「はい、気を付けてくださいねイブキさん」

 後でなー、と二人と別れたイブキは再度依頼所の中に入る。そこで掲示板に貼ってある依頼書を吟味していると、突然誰かに手を引っ張られた。

「君、ちょっと来い」

「は? ちょ、何事?」

「いいから」

 そのまま受付まで引っ張られていくイブキ。引っ張っている少女は受付に依頼書を出して言った。

「こいつと依頼をやりたいんだが」

「……何故に?」







「……うーん」

 キティ=ランバートは掲示板の前で唸っていた。

 視線の先には一枚の依頼書。

 それの報酬には銀貨七十枚とミスリル鋼五キロと書いてあり、ミスリル鋼は少女だけでなく誰にとっても喉から手が出るほど欲しい代物だった。だが条件に二人以上とあり、友達のいないキティにはどうすることもできない。

(くそっ、こうなったら適当に誰かを連れていくしかないか。しかしミスリル鋼を譲ってくれと言って了承してくれるかどうか……ん?)

 隣を見ると自分と同年代かそれより年下くらいの全身真っ黒な服を着た青年がいた。

 青年は掲示板を見ていてこちらが凝視しているのに気付いていない。

(こいつならちょっと脅せばいけそうだな)

 外見からそう判断したキティは青年の手をとった。

「君、ちょっと来い」

「は? ちょ、何事?」

「いいから」

 青年を無理矢理連れていき、受付に依頼書を出す。

「こいつと依頼をやりたいんだが」

「……何故に?」

「二人以上じゃないと出来ないんだ」

「ふーん、まあ俺は依頼が出来れば何でもいいよ」

「決まりだな」

 依頼が受注されたので外に出る。内容は結構離れた岩石地帯で通りかかったキャラバンを襲う中型レベル4を討伐することだ。

「いきなりで聞き忘れてたけど、名前何ていうの?」

「……――ランバートだ」

「何だって?」

「キティ=ランバートだ!!」

「大声出すなよ、びっくりするだろ。それにしても『キティ』ね」

「な、何がおかしい!?」

「いやいや、可愛い名前だなって思っただけだよ? ちなみに俺はイブキっていうんだ」

「だから嫌なんだこの名前は……笑うなイブキ!」

 真っ赤な顔で詰め寄るキティを笑顔で受け流すイブキ。

「ふんっ、まあいい。それよりも報酬のミスリル鋼は譲れよ」

「ああ、いいよ」

「……何?」

 すんなりと受け入れたことに驚いて、思わず呆然としてしまった。

「本当にいいのか?」

「代わりに銀貨くれ。俺はそれだけでいいや」

「……変な奴」

 キティのイブキに対する印象は決まったようだった。

「ところで、岩石地帯って遠いのか?」

「当たり前だろう、そんなことも知らないのか……お前初心者か?」

「さっきなったばっかりだよ。それより、岩石地帯の方角と距離を教えてくれ」

「まあいいが……確か北西三十キロだったはずだ」

「了解、ちょっと来い」

 キティの手を掴んで引き寄せるイブキ。突然のことに勢い余って抱きつくような形になってしまい、キティは頬を軽く赤らめた。

「な、何をする!」

「いいから、いいから、それじゃ出発ー」

 直後、二人の姿は一瞬で掻き消えた。




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