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第二話 旅は道連れ



「……ん……」

「あ、気がついた」

 アリシアが目を覚ますと、そこは真っ暗な森の中だった。たき火がたいてあり、例の二人組が火にあたり暖まっている。

「ここは……?」

 起き上がって周りを見渡そうとするが、全身の傷が痛んでそれができなかった。

「あなたがいた街からかなり離れた森の中よ。それより、動くことはできる?」

「いえ、かろうじて首だけなら」

「やっぱりね。じゃあこれ飲んで。病気や怪我は全部治るはずよ」

 ティナに介護されながら、ゆっくりと紫色の液体を飲む。すると、身体中の痛みがすっかり消えて無くなってしまった。

 アリシアは驚愕した。一番痛みが酷かった脇腹に手をあてるが、そこも全く異常が無い。

「……何を飲ませたんですか? 全快する薬なんて聞いたことがありません」

 その問いにイブキが答えた。

「そりゃそうだろうよ。異世界の秘薬なんだから」

「異世界の?」

「…………いや、ただの秘薬だよ?」

「今更言い直しても無駄だと思うわよ? 悪い子じゃなさそうだし、別に話してもいいんじゃない?」

 ティナに言われて、イブキは諦めたように溜め息を吐いた。

「信じる信じないは勝手だけど、俺らは此処とは違う世界から来たんだ。その時に必要そうな物を幾つかくすねてきたんだよ。さっきの薬はその一つ」

 喋るイブキの目をじっと見つめていたアリシアだったが、

「なるほど、嘘をついている様子ではなさそうですね」

 と、信じることにしたようだ。

「ところで、王都はどうなったのですか?」

 アリシアの発言に二人は若干気まずそうに見合わせると、イブキが決心して話し始めた。

「あの街は俺が吹っ飛ばした。今はもうクレーターしか残ってない」

「そうですか……街の人々は?」

「君を助けた時にはもう全滅してたよ」

「そんな……」

 それを聞くと、アリシアの目から涙がこぼれた。イブキがそっと抱き締めて背中をさすると、アリシアは耐えきれずに大声で泣き始めた。森に嗚咽が響き渡る。

 アリシアが泣き疲れて寝てしまったのは、それからしばらくのことだった。

「ねぇ、その子どうするの?」

 アリシアを一瞥してティナが問い掛けた。

「そうだな、身内がいればそこまで送るけど。この子が俺らについていきたいって言うなら俺は別に拒まないよ」

「……意外ね、あんたのことだからてっきり慰み者にするのかと思った」

「お前は俺をなんだと思ってやがる」

「変態?」

「……」

「冗談よ。それはともかく、もう深夜だし私達も寝ましょう」

「そうだな」

「襲わないでよ?」

「誰が襲うか!!」







 翌朝、少し元気になったアリシアにこれからどうするかを尋ねたところ、ついていくらしい。本人曰く、「助けてもらった恩を返したい」だそうだ。

「それは別にいいけど、親族とかには会わなくていいのか?」

「……親族は皆あの街にいましたから」

「あー……なるほど」

 つい言葉が詰まってしまう。その何ともいえない空気を払拭するためにティナがアリシアに言った。

「暗い雰囲気になってないで、自己紹介しましょう。結局連れて行くんでしょ?」

「まあそうだけど。てわけで俺はイブキ、なんというか異世界人だ」

「ティナよ。よろしく」

「えっと、アリシア=セイレーンです。セイレーン王国の王女でした」

「王女!? へぇー、道理で服装がドレスなわけだ」

「私自身はあまり好きじゃないんですけどね」

「じゃあ新しく服を買わないとな。好み以前に正直俺らの服は目立ち過ぎるし」

 イブキは血まみれのボロ囚人服、ティナは真っ白な布を体に巻いただけ、アリシアはピンクのドレス。

 とても個性的な三人組である。

 ティナやアリシアはまだいいが、イブキは怪しさ満点で見つかったら即御用だろう。

 というわけで服を買いに行こうとしたのだが、気付いたことが一つ。

「そういえば金が無い」

「あ、私少しなら持ってますよ」

「でかしたアリシア」

 ヒモみたいね、というティナの呟きはひとまずスルー。

「アリシア、服が買える所ってある?」

「近くにちょっとした街がありますから、そこで買いましょう」

 アリシアの案内で歩くこと数時間、大きな門と左右に広がる壁が見えてきた。門は開け放たれていて、門番が出入りする人々を監視している。

「「……ちょっとした街?」」

 門が大きくてとてもちょっとした街には見えない。

「門と壁が大きいのは魔獣に襲われる危険があるからですよ。どの街もこれくらいが普通なんです」

 へぇー、とアリシアの説明に納得する二人。

 分かってはいたことだが、余りに常識知らずな二人を見て心配せざるを得ないアリシア。

「じゃあ俺はここで待ってるよ。この服装じゃ中に入れないだろうし。適当に服選んで持ってきてくれ」

「面倒くさいわねぇ、あんたも一緒に来なさいよ」

「だからさー、まともな服じゃないと入れないだろ?」

「まともな服ならあるわよ」

「どこに?」

 ティナの指差した方向には門に向かって歩く旅人の姿があった。

「「……」」

 数時間後、門の近くの茂みで下着姿の旅人と畳まれた服が発見されることになる。




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