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文章に向き合ってみる ~初めての校正体験~

作者: もののめ明

 このたび、縁あって作品が電子書籍化していただけることになりました!

 こんな幸運はもう来ないかも知れない。せっかくだから初体験の校正のことを残しておきたい……ということで、このエッセイを書いています。

 なろうには、もっと偉大な諸先輩方がおられるので、私の話なんてさほど大したことはないでしょう。また、出版社によって違う部分もあると思います。まあ、あくまでも私の体験記録なので、参考程度に軽く読んでいただけると幸いです。


 さて、まずは出版社へ提出する元となる原稿の作成からスタート。

 こういう作業も、私には初めて体験なので四苦八苦しつつもとても楽しいものでした。しかし、そこから書くと長くなるので省略します。

 ということで――提出した原稿が戻ってきてからの話。

 ドキドキしながら、Word文書をオープン!

 どんな風に校正されるのかな……?

 開いて、愕然。全ページにマーカーとコメントが付いている!

 ひええ、こ、こんなに直すの? 全部目を通すだけでも大変……。

 期限は二週間、無理な場合は延ばしてくれるとはいえ、出来るだろうか?

 まずはそんな不安がよぎりました。

 が、ゆっくり見ていくと……マーカーの大部分は、読点の位置変更や、ダブルクォーテーションの変更、漢字表記だったものを平仮名に開いたものなどです。

 ふむふむ、この部分は軽く確認するだけで良さそう。

 次に、横に付いているコメントに目を通します。

 ――おお、コメントの書き方が優しいですね。


・~だと思います

・~と思いますがいかがでしょう?

・~でよろしいでしょうか?


 ちっぽけでしょーもない作者のプライドが傷つくことのない、柔和で丁寧な指摘です。しかも、(当然でしょうが)中身がいちいち納得できる。

 あと、感想を書いてくれている箇所もあって、直す前に嬉しくなってしまいました。

 コメントの多さに慄きましたが、ものすごく大幅な書き直しをする訳でもなさそうなので、これなら大丈夫!


 では、以下、いくつか校正していただいた分を抜粋して列挙します。

 書き手の方には、参考になるものがあるかも?


・作品が転生モノだったので……

 →前世が日本かどうかの情報があった方が良い。


・ヒーローがヒロインに「大丈夫か」と声掛けするシーン。

 →何に対する「大丈夫か」か、具体的に。


・ヒロインは前世でヒーローが推しだったという設定があるので、どの部分に魅力を感じていたかを具体的に。後半に出てくるヒーローのイケボ設定も前半に入れておく。


・ヒロインが図書室へ歩いていくシーン

 →もう少し詳しく。例えば「渡り廊下を……」、「校舎を……」など。


・ヒロインがヒーローの寝ている部屋に忍び込むシーン

 →そのときの二人の動きが分かりにくい。


などなど。


 ところで少し話は逸れますが――書き手の皆さんは小説はどうやって書かれているのでしょう。

 私はいくつかの筋を立て、まずはそれに合う人物像を考えます。その人物像が話に合っていると、なんとなく物語の映像が浮かんで勝手に登場人物たちが動き始め、ストーリーが生まれます。人物像が合わない場合は、途中まで動いていても止まります。なのでもう一度、人物像を設定し直します。

 ちなみに、浮かぶのはくっきりクリアな映像ではなく、ややピントのボケた映像です。視力の悪い人間がメガネ無しで見ているような感じ。登場人物たちの顔や背景は鮮明に見えません。が、話が映像で浮かんで動いていくので、それを言葉に変換して話を作っていきます。

 主人公がどこをどう歩いて、どんなことをするか。

 頭に浮かぶ映像イメージを、ピッタリな言葉に当てはめるのが案外、難しい。

 そして部屋に数人の人物がいる場合、どこに誰がいるのか、何をしているか、私は把握しています。

 校正でコメントが付いた部分のように、登場人物たちの立ち位置や動きが分かりにくいということは……私には"見えている"ので書くのを省略したけれど、読み手には情報不足で状況が分からなかったということになりますね。

 そうか、そうか。

 この表現だけでは、足りなかったか~……とコメントをチェックしながら反省していました。

 わりと場の説明はきちんと書いているつもりだったのですが、まだまだ抜けているものですね。


 蛇足ですが、たまに映像が浮かばずに物語を書く場合もあります。

 そういうときは、筆のノリが異常に悪いです。そして、内容がもう一つ面白くない……(かといって、映像から書いたものが全て面白い訳でもないですけども)。

 不思議です。


 他に……

 こういうことを足すと面白みが増すかも?という提案もありました。とても参考になりました。


 それ以外では――表現についてのコメントがいくつか。

 編集者さんの言う通りと思って直した部分もあるけれど、こちらの表現の方が私はスッキリするんだよなぁという場合もありました。

 二つ、挙げます。


・「私は頭を絞った」

 →知恵を絞った、または、頭を回転させたの方が良いのでは?


 これに返した私のコメント。

 →「頭を絞る」=できる限り頭を働かせて考えるという意味の表現ですが、不自然でしょうか。知恵を絞る、頭を捻るより、脳みそを必死に使っている感じがして、ピッタリだと思ったのですが……。


・(ダンスをしているヒロインとヒーロー)「いつの間にか足は止まり、二人はただ見詰めあった」

 →"足をとめ"の方がお互いが惹かれあっている感じがするのですが、いかがでしょうか?


 私の回答。

 →"足を止め"だと、意識して止まった感じ。"足は止まり"だと、気付かぬうちに止まった感じ。ここでは、お互いにダンスを止めるつもりはなく、無意識に止まってしまった状態のつもりで書いています。


 結局そこは、原文ママとなりました。


 でもこれって……作者の妙なこだわり?

 実際のところ、そこまで拘らなくてもいいかな? と思うときもあります。物語全体を淀みなく読み手に届けることが大事で、細かい表現の差など、読む側はそんなに重視しないでしょう。

 分かってはいるんです。

 でもね……書いていて表現がしっくりこないと先へ進めないときもあるので、微妙な言い回しでも、作者本人にとっては「ナニか違う」と思うときがあるんですよね……。ちょっとした違いだったりするんですが。

 とはいえ「私はこの表現の場合はこう感じる」というものでも、他の人は違う感じ方をしているパターンがきっと多いことでしょう。一生懸命、細かい微妙な描写をしても、思ったように伝わらなくて力不足を感じることも多々あります。

 ……単純に、技術不足ということもあると思いますが。

 ともかくも編集さんは私の意を汲んでくれて、原文ママとなり嬉しかったです。


 そうそう、ちなみに、この表現は皆さんはどう感じますか?

 照れて「目元を赤くする」という表現です。


"目元を赤く"と書くと泣いたあとのように見えるとの指摘を頂きました。"頬を赤く"では? と。

 こちらは悩んだ末、違う表現に変更しました。

 でも私の中では、照れて頬を赤くするのと目元が赤くなるのとでは、だいぶイメージが違うんです。頬を赤くすると、誰が見ても照れているのが分かる。でも、目元が赤くなっている場合は、注意深く見た人しか気付かない感じ。

 普段、冷静で表情を変えない人に対して、私は特に使いたくなる表現です。まさに妙な作者のこだわり……!


 いやしかし、もし全員に共通イメージを抱かせる唯一の表現が世の中にあったら。


 きっと、こんなに悩まなくて済むのに。

 ああ、言葉って……本当に難しいものですね。

 まあ、だからこそ、書くのが楽しいのかも知れません。似たような内容でも、書く人によって違いが出るのですから。


 ――最終的に、校正は第三校までありました。

 そのどれもが、本当に貴重な体験で勉強になりました。自分の感覚で書いていた文書を、初めて深く見直すこととなりました。これが、今後の作品に活かせるといいんですけども。


 あ、そうだ!

 校正とは別に、表紙イラストの件のことを少し。


 事前に、ヒロイン・ヒーローの髪や瞳の色、詳しい容姿の説明などを記入したキャラクターシートを出版社へ提出します。あんまり深く考えていなかったので、シートを前にだいぶ、頭を捻る羽目になりました。

 で、それを元にイラストレーターさんが絵を描いてくれるのですが……全部イラストレーターさんに任せっぱなしになるのかと思いきや、構図案や、制服のデザイン案を見せて頂けるんですね!

 ラフ画を見て、そこから選ばせてもらえるとは……なんて作者冥利に尽きるんだ……!

 制服はデザインも素敵だし、色も好みの色ばかりで、どれがいいかとても選べません。幸せな時間を頂きました。


 さてさて、その後、続けて第二巻の作業に入り、そちらの方が大変で……編集さんに「これ以上、自分では直せません。どこをどうしたらいいかアドバイスお願いします」と丸投げしちゃうんですけど。

 まあ、長々と書くのもなんなので、ここまで。

 以上、初めての校正体験記録でした。

 また、こんな幸運に与れるといいなぁ……。

初校正体験の作品は『悪役令嬢は穏便に別れたい』、

ミーティアノベルス様より出版です

お手に取ってもらえると嬉しいです


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ミーティアノベルス様より、電子書籍化!
第1巻:2025/03/06~
第2巻:2025/04/03~
「悪役令嬢は穏便に別れたい」
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(書影をクリックすると、amazonのページが開きます)
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