表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ベランダから見上げる、りゅう座の姫君

作者: 明空 希歩
掲載日:2024/12/26

 ベランダから見える空には星座が広がっていた。

 少女が、そのうちの一つを指さす。


「見て、りゅう座よ。アレは西洋のドラゴンをモチーフにしているらしいわ」


 少女の指が、空をなぞるように動いていく。

 それを眺めていても、少女がどのように線を描いているのか、まるで想像できなかった。

 何故なら、りゅう座に明るい星が少ない為、どんなに少女の指を目で追っても、途中で見失ってしまうからである。


「私ね、今度その付近へ行くの。NGC6543を見に行くのよ」

「ずいぶん遠そうですね。アナタがそこへ辿り着く頃には、たくさんの時間が過ぎていることでしょう」

「でも、それだけの価値があるわ。あそこには未解決の問題が山積みですもの。それに、とても綺麗。キャッツアイ星雲とも呼ばれているらしいわ」


 以前に見せてもらった、宝石のように美しい映像を思い出した。

 たしかに猫の瞳にも、見えた気がする。


「そうだ」

「はい?」

「もし私が帰って来れなくなった時は、迎えに来てくれる? りゅう座を目指して会いに来て」


 少女のお願いに、迷うことなく肯定した。

 騎士になった気分だ。

 こちらが騎士だとすれば、少女は間違いなく、お姫様だろう。


 少し経ち、少女は予定通りに宇宙へ飛び立った。

 それをベランダから見送り、少女の帰りを待つことにする。




 一年、二年、三年。


 今、彼女の乗った船は、どの辺りにいるのだろう?

 以前と同様に、ベランダから空を見上げる。


 五年、十年、十五年。


 まだ彼女は帰ってこない。

 既に船は到着している頃だろう。


 二十年、四十年、六十年。


 彼女は帰ってこない。

 きっと未解決の問題が、まだ片付いていないのだ。


 八十年、百年、百二十年。

 ……そろそろ彼女を迎えに行きたい。

 でも、どうやって迎えに行こう?

 自分には宇宙へ行ける船も、身体もないというのに。


 ただベランダから空を見上げるだけの設置型人工知能が、どうやって姫君を救いに行けるというのか。

 彼女の声を思い出す。


「初めまして。ここがアナタのおうちよ。仲良くしましょうね」

「凄いわ! どんどん知識を吸収している! もっと色んなことを教えてあげるわ」

「アナタって感情豊かなのね。最高の親友よ」


 ……早く会いたい。

 でも残念ながら、私はアナタの騎士にはなれないみたいだ。




「お姫様って素敵よね。いつか私を、迎えに来てくれる人はいるのかしら」

「……私でよければ、いつでも迎えに行きますよ」

「本当?」




 彼女が、笑った気がした。


「ありがとう、×××!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ