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あなたは、ハズレだっただけ…

作者: 秋風爽籟

シングルマザーの(みさき)は6歳の息子がいる。


もう恋なんて、出来ないと思っていた…




あなたに出会ったのは、25歳の時だった…




私が勤める会社の仕入先だった彼…


そして、私は営業事務兼受付係で納品の品を倉庫で受け取る仕事もしていた…




彼が私をまっすぐに見る目に、胸がドキドキした…


彼の名は、(いつき)


樹は、短髪で…身長はそんなに高くないけど…


笑顔がさわやかな人だった。




樹が来る度に、倉庫で色々な話をした。


最初は、たわいのない世間話だったけど


樹は、私のことを色々聞いてくるようになった。




最初に樹の年齢を聞いて、驚いた。


樹は、19歳だった…


しかも、誕生日が1日違い…


樹が23日で、私が24日…


これには、更に驚いた…




私は、子どもがいることを樹に話した。




樹は、驚いていたけど…


会ってみたいって言ってくれた…



それから、彼の会社の社長の湖畔の別荘に、うちの会社が招待された…


私は、息子を連れて参加した。


会社以外の彼を初めて見た。


私服の彼も、さわやかだった…




バーベキューの用意を手伝っていると…




樹は…




「岬さん、包丁使うの上手ですね…」




「そりゃ、包丁歴長いからね…」




彼は、なんだかんだと私に話しかけてくれた。




みんなが、酔っ払った頃…




樹が、「一緒にボートに乗りましょう」




って言ってくれたから、息子と3人でボートに乗った…


すごく…楽しかった…




ある日、友達に別の仕入先の人を紹介することになっていて


誰か一緒に行ってくれないかなと思っていた時…


ふと…


樹を誘ってみようと思った…




樹は、すぐ…




「俺、行きます!」




って言ってくれた。




そして、車で迎えに来て貰うと…




「あっ、一緒にボートに乗った、お兄ちゃんだ」




と息子は叫んだ。




覚えていたんだ…




友達と紹介する人は別の車で目的地に行った。


私は、樹と息子と乗って行った。


目的地では、樹が息子と遊んでくれた。


そして、私は楽しくて、久しぶりに心から笑った…




樹に家まで送って貰った後で…




「今日は、ありがとう。すごく楽しかった…」




「ホントですか?また、いつでも言って下さい。俺、車出すんで…また、息子さんと何処かに行きましょうよ」




そう言ってくれた。




結局、友達と紹介した人は、付き合うことにはならなかったけど…




私と樹は、2人で会う約束をした…



夜、2人で会ってドライブをした…


色々な所を走りながら…喋りまくった。


そして、大きな駐車場に車を停めて話をしている時に…




樹は…




「実は俺、彼女がいるんです。でも、岬さんと出会ってから好きな気持ちが止められなくて…ダメですよね…ごめんなさい」




それを聞いた私は、ショックだった…


ショックだったということは…


私は、樹が好きなんだと気が付いた…




「私…彼女がいてもいいよ…私も、樹くんのこと…すごく気になるんだ…」




私は、思わず…そう言ってしまった…




私には、息子もいるし…


彼は年下で、どうせ私とは釣り合わない…


2番目でも、いい…


その時は、そう思ってしまった…




それから、樹と息子が寝た後に会うようになった。




彼の車は、改造していてうるさい車だったから


彼が家の前に来たことは、すぐ分かる…




私は、息子を父に任せて…


彼に会った。




最初は、ドライブしたり走り屋が集まる所に行ったりして


朝まで一緒にいたりしたけど…


初めて、2人でホテルに行ってからは


ホテルに行くのが当たり前になった。




その年の2人の誕生日は…


樹の誕生日に会って…樹におめでとうって言って…


日付が変わると…樹が私に、おめでとうって言ってくれた…




樹は、20歳になった…



ある日…


彼の口から…




「彼女の友達から、ホテルの駐車場で俺の車を見たって言われた…その友達は彼女と行ったんだねって言ったけど…もしかしたら彼女に伝わるかもしれない…」




そう、言ったから…




「もう、会うの止めようか?」




そう、言うと…




「岬さんと会えなくなるのは、嫌だ…。俺、彼女と別れます」




そう、言ってくれた…




それから、樹が電話をして来て…




「今日、彼女に伝えます…」




そう言ってくれたから…


樹に、彼女に伝えたら電話をしてって言ったけど…


その夜、樹からの電話はなかった…




翌日…


彼は、電話で会いたいと言って来た。




会ってから、彼が言った言葉は…




「彼女に別れたいって言った…でも、岬さんとは付き合えない…もう会えない。ごめん…」




「どうして?え?明日から私…どうしたらいいの?」




「彼女からも、同じ言葉を言われた…彼女の大切さに気が付いたから、別れられない…。ごめん」




そうか…


同じ言葉を言っても、私の言葉は響かなかったんだね…




「分かった…」




私は、そう言って車を降りた…


歩いて帰れる距離だったから…泣くのを我慢して家に帰った…




家に帰ると息子が待っていて…


息子の前で泣いてしまった。




息子は…




「お母さん、大丈夫?」




と心配そうに言った…




やっぱ、シングルマザーの私は、恋をしてはいけないんだ…


傷付くだけ…


もう、恋なんてしたくない…




そう、思いながら…


毎日を過ごした…



樹とは、あれ以来…会えなかった。


樹の代わりに、樹の友達が会社に来るようになった。


完全に避けられてるな…


そう、思うとまた…ショックで…




でも、忘れるしかない…


暫くは、友達と飲みに行ってばかりいた…


友達は




「彼は、ハズレだっただけだよ…付き合ってもうまく行かなかったと思うよ」




そう言って励ましてくれた…




私も正直、樹のことはクズだと思っていた…


でも、若いから仕方がないか…


いい思い出として取っておこう…


そう、思うことにした。




それから、半年くらい経って…


友達がサッカーを見に行こうって言ってくれて…


3人でサッカーを見に行った。


帰りに、街へ行ってお茶しようということになって


アーケードを歩いていると…


樹の姿があった。


そこは、樹の元職場で彼女の職場の前だった…


樹が彼女を迎えに来ていたと、すぐ分かった。




樹と目が合ったから…


何気ない顔をして…




「こんにちは…」




「こんにちは…」




それから、どうやって店に行ったのかも覚えていない…


私の、心は…空洞で…


何もないはずなのに、すごく重くて苦しかった…




まだ、忘れられてなかった…






それから…


数年経って…




友達が付き合い始めた彼の友達が…


樹の職場の先輩だったことが分かった…




樹は、先輩に岬のことを話していて…


先輩は、樹に




「シングルマザーと結婚しても、お前がしんどいだけだと思うよ。やめとけ!」




って言ったそうだ…


私の知らないところで…


そんな話があったんだな…


少し、悲しかった…




それから私は…新しい恋をして…


いつの間にか樹のことを忘れていた…




でも、この話にはまだ続きがある…




それから更に月日は流れ…


20年くらい経った頃…




自転車通勤をしていた私は、帰りに何度か樹を見かけたことがあった。


でも、遠くから見ただけだったし、確信もないから


声を掛けずにいた…




ある日、本当に傍で樹とすれ違った…


私は、思わず声を掛けた…




樹は、驚いていた。


久しぶりに会った彼は、昔の面影のままだった…




あれから、どうしていたのかを聞いてみると…


あの時の彼女とは、別れて…


別の人と結婚していた。




奥さんは、私よりも年上で子どもが2人いるシングルマザーだったそうだ。


子どものことを考えて、2人の間の子どもは作らなかったと…


結局、樹はシングルマザーと結婚したんだ…




別に、樹のことはもう何とも思っていなかったけど…


なんか…寂しい気持ちになった。


出会うのが遅かったら、私たちは違っていたのかな…






また、別の日に


別の場所で樹とばったり会った…




その時に、私は…


一緒に住んでいる彼がいることを話した。


そしたら樹は…




「あの時は、本当にごめん。でも、岬さんにそういう彼がいて良かった…安心したよ」




「私も、あれから色々あったけど、今は幸せだから…安心して」




そう言うと…


樹は、ホッとした顔をした。




樹と連絡先を交換して…


何回か、メールを送り合ったけど…




私は、再婚を期に樹の連絡先をブロックした。




あれから、樹とは会っていないし…


噂も聞いていない。




私と樹の物語は、別れて…そして再会しても


ハッピーエンドになることは無かった…






恋愛は、くじ引きのようなものだ…


地球という大きな箱から、くじを引く。


その、くじを開けてみてハズレだったら恋愛は終わる…


例え、そのハズレくじを持っていたとしても、ハズレはハズレのままで、当たりにはならない…





あなたは、私にとって…


ハズレだっただけ…




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