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転生なんてろくでもない!!  作者: 鍋川敷歩
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死と、誓い。

次の日スープはいもむしだけをとって洞窟へと戻ろうとしていた。よほど昨日の出来事が怖かったのだろうか。俺だけで行ってくるとジェスチャーしたらなんとか伝わったようで不安そうにスープは頷いて手を振っていた。

いつものように見たことがあるキノコを探し、草で作った網の中へと入れていく。今日は森がやけに騒がしいな。なにかに怯えているようなそんな気がする。たった数日通っただけだがいつもと違うことは確かにわかる。少し奥の方へ行くと一直線に木々が倒れ、道が作られていた。昨日はこんな道はなかった。数時間でこんなことができるのか。嫌な予感がする。今日は早めに帰ろうか。キノコはまだ少ないが、まぁいいだろう。森から帰っていると洞窟の方角からドンと音がした。まさかと鼓動が早まる。もしスープにとって他のゴブリンは仲間ではないだけでなく敵だとしたら?もし昨日の夜姿が見られていたとしたら?あの道は洞窟へと一直線に続いていた。もし森に簡単に道を作るような魔物の目的がスープだったら?まずい。早く帰らなくては。ただひたすらに走る。途中キノコをいくつか落とした気がする。だがそんなことはどうでもいい。頼む無事でいてくれ。洞窟に帰ると目に飛び込んでくるのは俺より三回りほど大きい肉体のゴブリンとそれを囲むゴブリンたち、そして血だまりに横たわる変わり果てたスープの姿だった。


「グーゲ!グーゲ!」必死に名前を叫ぶ。スープはすでに息がなかった。いや仮に息があったとしてもとても助かる状態じゃなかった。四肢は折れ曲がり、体はところどころ凹んでいた。どうしてこんなことに。泣く暇もなくズシズシと大きいゴブリンが歩いてくる。俺も殺されるのか。そうか。もういいや。やっと生活に慣れてきたと思ったら突然仲間を殺された。これじゃ現実と変わらないじゃないか。結局俺はなにもできない。ここでも理不尽を味あわないといけないのか。そんなこと…間違ってる。最初は絶望したし、知らない世界でどうやって生きていこうかと不安だった。けど、それでもくそみたいなリアルよりマシだと思ったんだ。このまま終わってたまるか。ここで死んでたまるか!まだ俺はなにもしてないんだ!全力で駆け出す。逃げろ。ひたすらに遠くへ。足が擦り切れたって、息が苦しくても走るんだ。後ろから怒り狂ったゴブリンの声が聞こえる。スープ今までありがとう。見ず知らずの俺を拾ってくれて、ご飯までふるまって生き方まで教えてくれた。俺は君に何も返せなかった。ごめん。ごめん。でももう泣かないよ。泣くと視界がぼやける。俺は生きるんだ。絶対に。そしてあいつらに復讐をする。誓ってやる。


どれくらい走っただろうか。わからないがもうあたりは夜だった。もう足は動かない。その場に倒れこんだ。もうゴブリンの声は聞こえない。逃げ切ったんだ。やったよスープ。俺はまだ生きてる。拳を空に突き上げた。そしてそのまま眠ってしまった。

「おい、起きろ」久しぶりに聞き覚えのある言語に飛び起きる。のぞき込んでいたなにかとおでこがぶつかり鈍痛が走った。「いってぇ!」あれ…日本語が喋れる。「~~~~っ!!この馬鹿が!急に起き上がるやつがおるか!」しばらく転げまわった後おでこをさすりながら顔を真っ赤にした少女が近づいてくる。「このばかもんが!」なんだこいつ。子供?ここはどこなんだ。あたりをみまわすが一面の白だけが広がっている。「ふん。ここはわしが作った精神世界じゃ。お前に話があっての」なんだ、神的な存在か?「話ってなに。」「なんじゃお前驚かんのか」もう散々な目に合ってきたんだ。今更何があったって驚かない「まぁ理解が早いのはいいことじゃな。まず言わないといけないことが三つある。一つ目お主には魔王を倒してほしい。二つ目お前はわしがこの世界へ飛ばした」自慢げに少女は言う。そういえばこの世界へ来る前に似た声を聴いた気がする。「おいふざけるな。魔王だかんだか知らないが。さっさと帰せ」俺はつめよったが「なんじゃ帰りたかったのか?」そう言われて勢いを失ってしまった。帰りたくはない。未練がない問えば噓になるが、この世界の方が生きやすく感じた。俺の表情をみて察したのか少女は言う「まぁ安心せい。お前の肉体はどのみち死んでおる。戻ることは不可能じゃ。」ほっとしたのかショックなのかよくわからない感情になる。「三つ目じゃ。お前の親友はこの世界に来ておる」


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