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転生なんてろくでもない!!  作者: 鍋川敷歩
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ルーティーン、そして苦悩。

スープと一緒に生活を始めてから約一週間が経った。あ、スープというのはゴブリンの名前だ。呼びにくかったので最初にくれた料理の名前にしてみた。名前をつけたはいいが、洞窟に誰か知らないゴブリンがいても俺はスープじゃないとわかるだろうか。といってもスープと発音ができないので本人は分かっていないだろうが。

ゴブリンの一日は日が傾いてから始まるらしく。朝方に寝て夕方ごろに起きている。一応起きるたびに壁に石で印を書いた。必要なことかはわからないが記録は大事だ。最初は隠していたのだがバレてしまい、スープは不思議そうにそれを眺めていた。絵かなにかだと思ったのか拍手された。ちょっと恥ずかしかった。お、もうそろそろスープが起きるな。俺はいまだ前の生活リズムが抜けず、朝方に寝ても昼前には目が覚めてしまう。スープがむくりと起きて外を指さす。よし行こうか。

さて、ここで一日の流れを説明しよう。まず起きてからするのは食料探しだ。洞窟から出て森をしばらく歩くと川があり、川を下っていくと“穴場”がある。滝のそばの岩裏にあのいもむしがいるのだ。たった一週間ではあるがあの強烈な味と食感にもだいぶ慣れた。今では貴重なたんぱく源だ。しかしなかなか強い力で張り付いておりとるのに苦労していた。試行錯誤を重ね、ついに発見した。枝を虫と壁の隙間に差し込み、内側から足を払う。これで簡単にとることができた。スープはとても喜び、感心していた。生態系を破壊しないよう二人分だけをとり、今度は森に向かう。

森ではキノコを採取する。その後洞窟に帰りご飯を食べて寝る。これが一日の流れだ。しかし問題だ。スープはなにも気にせずキノコ集めをしているが、毒キノコがないとは限らない。奇跡的に俺たちは毒には当たってないようだが、不安だ。うなりながら観察するが、見分ける知識などない。食べたことがあるキノコだけを思い出ながら採るようにはしているがいつもスープより少なくなってしまうため、困った顔をされてしまう。今日は頑張ってみよう。


ある程度集めた後、集合場所に戻る。しかし、スープはいない。洞窟に先に帰ったかと思えばそこにもいない。まだキノコを探してるのだろうか。向かっていた方向をたどり、呼んでみる。「グ~ゲ~」自分の名前とはわからないだろうが、呼んでいるのはわかるだろう。しばらく探していると、ゴブリンを見つけた。なぜかわかるこいつはスープじゃない。顔つきが全く違う。今にも暴れだしそうな表情だ。よくみるとそいつは隊列の最後尾で集団で行動しているようだった。それぞれがあたりを見回している。なにかを探している?なにはともあれ気さくに挨拶できる雰囲気じゃないな。ゆっくりと茂みに身をひそめる。「グゲゲグゲ~!」とドデかい声で叫んだあと隊列は森の奥の方へと去って行った。茂みから出ると一心不乱に走るスープが来た。俺を見て一瞬おびえるような顔をしたが、俺とわかったのか安堵してへたりこむ。肩を貸して支えながら洞窟へと帰った。

スープ以外のゴブリンには会ったことがなかったが、もしかして普通ゴブリンはああなのか?とても話が通じそうではなかった。いやスープも通じないが。しかし確かに作品で見たゴブリンにしてはスープはおとなしすぎるし、生活も規則的だ。もしかしてそういう違いのせいで追い出されてしまったのだろうか?なんにせよ話は聞くことができない。言葉が通じないこともあるが、ずっとおびえた表情でしゃがみこんでいるのだ。仕方ない今日は俺が料理をふるまおうじゃないか。見た目は完全に御毒キノコだけどおいしい赤白のキノコを多めに入れてやろう。とんとんと肩をたたき、スープに差し出す。「グゲゲゲ」といって無理に笑っていた。ありがとうだろうか。言語がわからないのがこんなにもどかしいとは知らなかった。

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