表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生なんてろくでもない!!  作者: 鍋川敷歩
1/4

転落、そして転生。

俺は今できる限り足を速く動かしただひたすらに逃げている。涙と汗がただ止まらない。あれ、どうしてこんなことになってんだっけ。


上京して大手企業に就職し、上司に媚を売りながら与えられた仕事精一杯こなしていた。受付にいたかわいい彼女もできた。人生の幸せ絶頂だった。だったんだ。本当に。ある日から嘘のように体がだるくなり感情の起伏がなくなった。そこからはトントン拍子だ。取引先で大きなミスをして首が飛び、その次の日に「つまらなくなっちゃった」と彼女に振られ、唯一の親友はそのまた次の日に事故で亡くなってしまった。これが飲まずにやっていられるかと浴びるように酒を飲んだ。酒が回り景色もぼやけていたところに声が聞こえた。

「おまえ、勇者にならないか」

なんだこの声。まるで頭に直接話しかけられているみたいな。ついに幻覚まで見えたのか。

「その通りじゃ。ええから答えんか。こっちも忙しいのじゃ」

ずいぶん生意気な幻覚だな。こっちはそれどころじゃないんだ。ただでさえ不幸に不幸が重なりまくってジェンガみたいになってんだ。勇者ぁ?俺の心はもう倒壊寸前なんだよ。

「やかましいのぉ。もうお前でええわい。わしはくたくたなんじゃ。どうせじきにお前は死ぬ。」

は?なんだよ…そ、れ…。

思考が追いつく前に視界がシャットダウンする。


なんだ…やけに寒いな…。重い瞼を開け、鈍い頭痛を感じながらゆっくりと体を起こす。あたりを見回すと薄暗い森の中だった。おいおい、酔いすぎてこんなところまで来ちゃったのか。流石に飲みすぎたよなぁ。…近くにこんなところあったっけ?

グゲゲッ!疑問に答えるかのように生き物の声がする。しかしその鳴き声はまったくもって聞き覚えがなかった。

驚きにより少しずつ頭がはっきりしてくる。まずいな。どこなんだここ。確実に東京ではない。見渡す限り人工物は見えないし、ましてや野生動物なんてほとんど生息していないはずだ。猫や犬の鳴き声ではなかったしな…。ぐるぐると考えているうちにさっき聞こえた鳴き声が近づいてくる。やはり聞いたことがない動物の鳴き声だと再認識した。とりあえず隠れよう。近くにあった茂みに隠れた。足音はどんどん近づいてくる。暗くてよく見えないな。やがて目の前まで来てようやく姿が確認できた。これは…なんだ?いや見たことがある。名前は…ゴブリン。その姿は最近アニメで見たゴブリンと呼ばれている魔物そのものだった。


なんだこれ。どうなってる。異世界?まさか。あれはフィクションだ。じゃあ夢か?そうだ夢だ。ずいぶんリアルな夢だな。早く覚めないかな。頬をつねる。いたい…痛い!!強めにつかんだつもりではあったが爪がしっかりと頬に刺さっていた。いつのまにこんなに爪が伸びたんだ。とっさに自分の手を見る。緑色の手に三角に尖った濁った茶色の爪がそこにあった。「グゲェ!!」思わず大声を上げる。え…今の俺の声?まじでどうなってるんだ。病気?!確かに最近食生活はひどいものだったし、あまり眠れない日が続いていた。そうか…俺はもう死ぬのか…そういえば昨日お前は死ぬみたいなこと言われた気がするな。薄ら笑いを浮かべながらやり残したことを探していると突然現実逃避から引き戻された。

グゲッグゲゲ!茂みをかきわけ目の前で嬉しそうに笑うゴブリンがいた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ