第008話
ゴブリンを巣ごと掃討する日が来た。巣の入り口はいくつもあるため、冒険者達はいくつかに分かれてそれぞれの入り口に入ることになった。俺が行うのは、巣に突入する冒険者の荷物持ち・巣の中の状況を外に伝える・再び巣に入る時に回復アイテムを持っていく等だ。
俺が担当することになった冒険者に挨拶をしておこう。
「こんにちは、俺はカリストだ。最近冒険者になったばかりだ。戦闘では役に立たないが荷物持ち・連絡・回復アイテム使用はキッチリこなすつもりだ」
俺とそう年は変わらない平民の男女が挨拶をかえしてくれた。
「こんにちは、俺はシンジだ。そしてこっちは妹のサンディ」
「よろしく」
2人とも使い古された武器を持っており戦いには慣れているようだ。片方が荷物持ちをしている様子ではない。普段はどのようにクエストをこなしているのか聞いてみよう。
「早速の質問ですまないが、普段は荷物持ち等の雑用をする人は居ないのか。居たらその人を参考にしたい」
「残念だが居ない。基本的には2人だけでクエストを受けている。たまに他の人と協力する時もあるが、その時でも各自の荷物は自分で持っている」
もしかして荷物持ちしかできない冒険者の需要は思っていたより少ないのか。もしそうだったら生活費を稼ぐのは困難だ。今後はさらなる命の危険を冒してでも戦うべきか。
そして何より、今回の俺は役に立たないかもしれない。
「もしかして俺は意味のない仕事を受けてしまったのか」
意気消沈しているとシンジが励ましてくれた。
「雑用係は大切だ。モンスターと戦う時にアイテムを持ったままだと動きが鈍るしアイテムの損傷が増える。だから代わりに持ってくれる者がいると助かる。
しかし、俺達に荷物持ちが居ないのは報酬の問題だ。俺達のような平民出身のFランク冒険者は戦えない者を常に連れていける程の報酬が貰えるクエストを受けることはできない。雑用係が居ないことによる損害を常に感じているが、それでも新たに人を増やすより収支はマシだから仕方がなく2人でクエストを受けている」
平民出身のFランク冒険者の苦悩を知った。