第002話
畑に種をまく為に土を掘るのは楽しいが、死者を埋葬するために穴を掘るのは悲しい。
そこには発展が見えないからだ。「諦め」の感情に支配される。
生き残った者達で、先ほどの「間引き」で亡くなった人達の為に穴を掘る。鍬は地面を簡単に掘れるし、ここにはそれを持っている農民達が数十人も居る。
この力を怒りに任せて領主に振りかざしたい。
しかし、農民達が束になっても領主一人を倒すことはできない。圧倒的な戦闘力の差がある。領主には先ほど見た魔法や時折畑を荒らしに来るモンスターを一掃する剣術スキル等を習得している。
俺達とこれほどまでに違う理由の根本はただ一つ。生まれ持った身分が違うからだ。
俺達は何も所有していないのに対し、領主はこの村の土地全てを所有している身分に生まれた。俺達は生きる為に領主から種を借りて育て収穫時に利子をつけて返す。
領主は農作物をしなくても食料が手に入るから、俺達が農作業をしている時間に鍛錬をして強くなる。そうして得た力で圧政を敷く。
酷い悪循環だ。
だから、怒りを込めた鍬は地面に振りかざす。
埋葬を終えて、このままで良いのかと考えて一つの結論に至った。
「街に行こう」
身分ガチャで外れを引いて生まれるのは辛い。