1.プロローグ
硬い冷たい感触が背中に伝わる。
意識が少しずつ覚醒していく。
目に明かりが入り始め、瞼の上から手を覆う。
「おはよう!ギル!」
聞き馴染みのある少女の声が少年の目覚めを迎える。
「ああ、おはよう。メラ。」
少女に朝の挨拶をすると少年は仰向けの身体を起き上がらせる。明かりに慣れてきて瞼を開くと見慣れた光景が広がっていた。本で棚を埋めようとすると気が遠くなる程の本が必要になる背の高い棚。そんな背の高い棚がこの部屋にはたくさんあった。宙に浮いている棚もある。一度どのくらい棚があるのか数えたことはあったが、100を過ぎたあたりで諦めた。一番近い棚の一番下の段に数冊本が入っているが、この部屋の本棚を全て埋めることは出来ないだろう。
「さあさあ、早く起きて!『本集め』、始めるよ!」
「はいはい。分かったから急がせないで。」
寝起きで少し気怠そうにしながらも、今から始める『本集め』に心を踊らせながら伸びをする。すると初めて集めた本が目に入る。少女と初めて会った日にわけも分からず集めた本だ。少年は少し微笑みながらその日の、一ヶ月前の出来事に思いを馳せた。