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三二話 奴隷、暗殺者の正体を知る

コロナワクチンの副反応でぶっ倒れてました

まだ優れないところはありますが元気に頑張っていきたいです


「……」

「よっしゃ!」


 ゴロンと力無く地面に転がるクラッス。

 

 会心の一撃だった。

 これまでの戦いの中でも初めての感触。精神的にも含めてこんなにもスカッとした一撃はこれまでの人生でもなかった。

 俺は勝利を確信して、どれほどレベルが上がったのか確認しようとする。


「?」

「クラッス様ぁあああ」

「おい担架を! すぐに医者を呼べ!」

「大神官様に連絡を」

「まさかクラッス様が負けるなんて……」


 クラッスの元に駆け込む兵士たち。

 

 その間、俺はお知らせに書かれていることに疑問符を思い浮かべる。


 《クラッス・リキニウスへの攻撃に成功した》

 《レベルが132万4321上昇した》


「クラッス様。申し訳ないですが、鎧を外させていただいて」

「……触るな」

「えっ?」

「余に触るなぁあああ!」


 ズバッ


 鮮血が舞う。

 周囲にいた兵士を斬りつけたクラッスは身体を起こす。


(やっぱりまだ倒せていなかったか。認めたくないが、流石はクラッス大公)

「クラッス様……どうして……」

「誰も余に触るな……怖いのだ……かつての余のように誰かが玉座を狙って弱っている余を刺そうとしているはずだ……剣を持ったその手を見せるな……誰も近寄るんじゃない」


 ブツブツと小声で呟きながら、ふらふらと立ち上がるクラッス。

 その眼はまるで心底から敵に怯える子供のようだった。

 傷だらけの顔面から噴き出る血が、まるで涙のようにポタポタと零れていく。


「……!」


 そんなクラッスも、俺を見るやいなやたちまちに瞳の色が怒りに染まっていく。


「パルタぁぁ……」

「おやおや。随分と余裕が無くなったなクラッス。俺たちのことを嘲笑していたおまえはどこにいった?」

「……黙れ」


 ガシッ、と力強く柄を握る。

 まだやる気のようだ。


 俺だとて消耗してないわけじゃない。致命傷に近いものだってもらってる。おそらく押されてしまえばそれだけで倒れてしまうだろう。


 だがそれはクラッスも同様みたいだ。


 ジャリッ、と俺は鎖で縛った拳を握り締める。


「トラキの男はこれだから嫌いだ……いつもいつも煩わしいハエのようにプンプンと余の周囲を飛び回る……」

「だから潰したと?」

「そうだ……それのなにが悪い……弱いのが悪い……力は自分の身を守るために振るわなければならない」

「ああ。その通りだ。ほんとおまえとは怖いくらい意見が合ってしまうなクラッス」

「……」

「俺はここでおまえを倒すのは私怨でも正義による復讐でもない――()()()()()()()

「余が生きるためには元王子である貴様が邪魔だ……パルタ」


 ジャッジャッジャッジャッジャッ

 

 快音がけたましく響く中、俺たちは自分が持つ中で最強の一撃を放つ。


 武技・超阿修羅刃断(極)

 隷技・縛鉄拳


「クラッァアアアス!」

「パルタァアアアア!」


 凄まじいエネルギーが斧に一点集中している。

 しかしこれを退かせるには、臆すことなく前に出なければならない。


 同時に俺たちは飛び込んだ。


 一瞬で俺とクラッスの距離が縮む。後はもう拳と刃どちらが先に当たるか。交差した瞬間でもほとんど時間差はない。せめて先に当たった時、決して外さないよう相手を視界に収め続ける。


 ニチャア


 赤子の笑み。クラッスは根っからの悪意を表情にした。


 サクッ


(……後ろ?)


 首のあたりを針かなにかで貫かれた感触。確認する間もなく、俺の動きは鈍くなってクラッスへ届く前に拳は止まってしまった。


 スッ

 なぜかクラッスも止めた。そしてさっきまでとは大違いの満面の笑みで、俺から離れていく。


「おい。どこに行く?」

「もう決着はつきましたから。それに余としては、貴方様を殺すのはここがベストではない」

「なにを言って……まだ勝負は……」


 ガクッ

 膝が地面に落ちる。


 嘘だろ。あれだけ有り余っていた力がひとつも湧いてこない。


 俺は原因があった背後へ首を回して、正体を確認する。


「おまえは……あの時の……」


 マリィベルを襲った【暗殺者】がそこにいた。


 いつの間に……そうか……こいつには闇に忍び込む力がある……


「ずっと俺の影にいたんだな……」 

「……」

「ええ。保険として余が命じておきました。ちなみに彼女の使った技は『二重毒殺(アナフィラキショック)』。以前、使われた毒と同じ毒を使うことでその抗体を暴走させる技です。彼女とパルタ様にはかけ離れた力の差がありますが、これならばパルタ様が強ければ強いほどダメージが大きいですから」

「なんでクラッスなんかに従う……あいつは味方でさえ平気で切り捨てるぞ……」

「……」

「……なんで……なにも言わない……」

「……ッ」


 パシィ


 俺は残った力で、襲撃者の仮面を弾いた。


(……こんなノロい一撃こいつなら避けられたはず)


 その疑問は、倒れ込んだ状態で見た襲撃者の素顔によってすぐに氷解した。


「……おまえ……だったのか」

「……」

「……マリィベル」

 

 綿のようなドレスの似合う彼女は、闇に溶け込む黒い装束と刃を携えてクラッスの隣に立っていた。

今作に一切関係ありませんが短編書きました。よかったら読んでみてください

・勇者と三人のママ

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