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十二話 奴隷、飢える


 ザザーン


 波の音がよく聞こえる。

 

「……今日もいい音だな」

「……スリープ中です」

「……今日も……なにもないな」


 島呑みを倒してから半年。

 あれから俺たちはなにもしなかった。


 いや。正確にはなにもできなかったと言うべきだろう。


 せっかく作った畑も家も破壊されたが、俺たちは諦めず再建しようとした。しかし現実は厳しかった。滅ぼされた自然はなにをしても蘇ることなく、ゆえにそれらを素材に次のステップに移ることさえ叶わなかった。

 できたことといえば、せいぜい砂地に穴を掘って雨風を凌ぐくらい。

 海水はいくらでもあるため塩と水の補給には困らなかったが、結局それ以外がないため俺たちは飢えていく一方だった。


(……それにしても、あの光はなんだったんだ?)


 ロビーナが放った光の柱。その威力はあまりに強烈で、二度と月が丸くなることはなかった。


 あの力があればなにかしたら今の窮地を打開できるかもしれなかったが、光が出たのはあれっきりで今ではすっかりポンコツに戻ってる。


 霞みに包まれたような呆けた頭で過去を振り返るが、なにもこの手に入ってくるものはない。


(もう死ぬしかないのか?)


 周囲を見渡しても、建物どころか他の陸さえ見当たらない。


(ワンチャン渡航を考えてイカダを作ってみたが、海棲の魔物に襲われて壊れてしまった)


 ろくな素材がないためロビーナの力をもってしても出来上がったのはボロボロの板切れだ。こんなんじゃどれだけ守ろうとしても守りきれず大破してしまった。


 いつかの時のように、天から救いの手が降りてくることを願って救難信号を島の中央に記してみたが、どうやら神にも見放されてしまったらしく陽光が俺に渇きを与えていくばかりだ。


 俺は諦めて地面に横になった。


 ドゥン♪ ドゥン♪ ドゥン♪


 水平線の向こうに大きな影が現れた。

 近づいてくると、陽気な音楽が聞こえる。


 俺たちゃ海の戦士♪ 誇り高き海の勇者さ♪


 碇が落ちるとともに、太鼓の音と歌声がやんだ。


「島だ。上陸しろ! 全てを奪いつくせ!」


 男は奴隷に♪ 女は犯せ♪ 魔物どもは食って珍品は売り飛ばす♪


 大きな羽根つき帽子を被った男の掛け声に合わせて、船から集団が降りてきた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 鴨がネギ背負ってではなく、子分どもが船持ってやってきた。 海賊団乗っ取り編開始。
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