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狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~  作者: 一片
2章 ダンジョン
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57:銀髪の女の子なのじゃ



「な、何故じゃ!?確かに紐をつけて簡単にはスられたり落としたりしないようにしていたのじゃ!」


そう言いながら財布を探しているのだろう、ばたばたと服のあちこち叩いている女の子が一人。

見た感じリィリさんよりも少し年若......というか幼い感じ?


「お嬢ちゃん、金がないならこれは渡せねぇぜ?」


手に持った串焼肉を女の子の前でゆっくりと振る屋台のおじさん。


「ちょ、ちょっとまってくれ!あるぞ!絶対あるはずなんじゃ!」


若干涙目になりながら財布を探している女の子だが、財布は見つからないようだ。

ここで代わりにお金を払ってあげたりするとゲームだったらイベントが進んだりするんだろうけど......これは......。


「とりあえず他の客もいるし、そこをどいてくれねぇか?」


「じゃ、じゃがぁ......。」


もはや涙は零れ落ちんばかりになっているが、屋台のおじさんは絆されない。

少し幼さは感じるが白......いや、綺麗な銀髪の可愛らしい女の子の涙が全く効いていない。

親父さんの鋼の意志を感じるな......っとそれよりも。


「えっと、横からすみません。その首の所に紐があるみたいですけど?背中の方に財布が回っていませんか?」


「お?......おぉ!?」


俺に指摘された女の子は喉元に手を当てるとそこに紐を見つけたらしく勢いよく引っ張った。

すると襟首からぽこんと革袋が飛び出す。


「あ......あった、あったのじゃ!主人!財布があったのじゃ!」


「よかったな嬢ちゃん、これは冷えちまったからこっちの焼きたてをやるよ。今度からは気を付けろよ。」


財布があったことに歓喜する女の子と焼きたてを渡す屋台のおじさん。

お客相手にはサービスがいいな......。

まぁ肉が冷えちゃうくらい付き合ってあげたんだから人も良さそうだけど......。


「横から口を出してすみませんでした、それでは失礼します。財布あってよかったですね。」


「おぉ!そなたも助かったのじゃ!何ぞ礼でも......。」


「いえいえ、お礼を頂くようなことはしていませんよ。」


「ふむ......慎み深いやつじゃのぅ。遠慮することないんじゃぞ?」


「あはは、紐の位置を指摘しただけですので、お構いなく。」


「しかしのぅ、助かったのは事実じゃから......。」


中々食いついてくる、何かお礼してもらった方がこの子も喜ぶかな?


「とりあえず、そこどいてくれるか?お嬢ちゃん達、他にも客がいるからよぅ。」


店のおじさんに指摘されて、俺と女の子は慌てて謝るとその場を後にした。




「いやぁ、慌てるといかんのぅ。皆に迷惑をかけてしまったわい。」


俺達は屋台の前から人通りの少ない脇道に移動していた。


「すみません、僕もうかつでした。後であのお店で買い物ついでに謝っておきます。」


「お主は礼儀正しいというか腰が低いのぅ。店の主人もそこまで気にしておらんと思うぞ?」


「いえ、これは自分の為にやっているようなものですから。お店の人の覚えを良くしておけばサービスしてもらえるかもしれませんしね。」


「打算的というか偽悪的というか......どちらかというとしっかりと謝っておくべきだ、と顔に書いてあるようだがのぅ。まぁ自分の為というのは嘘ではない様じゃが......。」


面白い物でも見るように女の子はこちらをまじまじと見てくる。


「まぁ得をしたいという事であれば、妾の礼を受け取ってくれんかのう?お主風に言うなら妾も何か得をするかもしれんじゃろ?」


にやにやといたずらを思いついた子供の様な笑みを浮かべて礼をしたいと告げてくる女の子。

まぁ頑なに断っても仕方がないのでお言葉に甘えさせてもらうとしよう。


「分かりました。折角なので宜しくお願いします。」


「うむ、任されよう。っとすまぬ、自己紹介がまだじゃったな。妾はナレアじゃ。」


「こちらこそ、すみません。僕はケイです。」


ナレアさんは右手を差し出してくる。

そういえばこの世界に来て握手をするのは初めてだな......いや、日本でも挨拶に握手したことはないか......。

ナレアさんの手を握り握手をする。

思いのほか力強かったが魔力を使えるこの世界の人なら普通なのかな?


「うむ、よろしくたのむぞ。ではどうするかのう。実は妾、この街に来たのは今日が初めてでのう。」


「そうなんですか?それは奇遇ですね。実は僕も今日来たばかりなんですよ。」


「おぉ、そうであったのか。しかし......となると困ったのう。この辺りに詳しくない二人ではな......。」


「そうですね......でしたらこの辺の屋台を巡るというのはどうですか?元々この辺の屋台を見学に来たので。」


「ほう?屋台巡りか。」


「えぇ、お祭りに備えての屋台なので普段は見られない珍しい物もあるかもしれないので。」


「そうじゃな、見て回ることに異論はないぞ。妾もここまで賑やかな街並みは久しぶりに見たのじゃ。浮かれて財布を無くしてしまったがのぅ。」


「あはは、まぁ慌てると視界は狭くなりますからね。仕方ないですよ。それじゃぁ行きましょうか。」


「うむ。礼はちゃんとするが、それはそれとして楽しもうではないか!」




屋台通りに戻った俺たちはナレアさんのおごりで焼き鳥を食べながら屋台を見て回っていた。


「ふぅむ、思っていたより珍しい屋台は無さそうじゃのぅ。」


「そうですね、串ものが多いのは食べ歩きしやすいようにでしょうけど......珍しいものはないみたいですね。祭りの本番だとまた違うのかもしれないですけど。」


今の所定番の焼き串か饅頭の様なものに酒類といったところか。

甘味とかはやっぱりないようだ。

何かそういった感じのもの売り出せたら結構いい稼ぎになりそうだけど......。

日本で一人暮らしするようになってそこそこ自炊はしてきたつもりだったけど......スーパーがないと殆ど何も作れないことにこっちに来てから気付いたよ......。


「そういえば祭りがあるとさっき言っておったのぅ。定例の祭りか何かかの?」


「いえ、定例の祭りじゃなくて臨時というか......近くのダンジョンが攻略されたので、そのお祝いですね。」


「ほう、ダンジョンが攻略されたのか。ふむ、攻略隊が組まれるとは聞いておらなんだが......。」


「攻略隊、ですか......もしかしてナレアさんは冒険者なのですか?」


「おぉ、そうじゃよ。まぁ趣味のようなものだがのぅ。」


普通ダンジョンを攻略する時は大規模な攻略隊が組まれることが多いらしい。

そういう場合は近隣のギルドも協力して攻略の為の冒険者を募るのだという。


「趣味ですか?」


「妾はあまり依頼を受けたりはせぬからのぅ。ダンジョンにはちょろちょろ行くがの、興味があるのは遺跡じゃな。」


手に持っていた焼き鳥にかぶりつきながらナレアさんが答えてくれる。

遺跡か......レギさんから聞いた話では......昔の建物の事だ......。

しまった......デリータさんに聞こうと思って忘れていたな。


「遺跡ですか......少しだけ聞いたことはありますが、詳しくないんですよね。」


「それはもったいないのぅ。あそこは知らないことだらけでとても楽しい所じゃぞ?」


「興味はあるんですけどね......ちょっとまだ勉強が足りていませんね。」


「なるほどのぅ、しかし遺跡に興味があるということはお主も冒険者じゃったのか?」


「はい、まだ冒険者になってから半年も経っていませんが。」


「まだまだ新人じゃな、下級冒険者になったくらいかの?」


「えぇ、その通りです。」


「ほほ、既に探索済みの遺跡であっても面白い発見があるかもしれんからのぅ、機会があったら行ってみるとよいのじゃ。」


「はい、近いうちに行ってみます。」


「うむ、冒険者じゃからな。冒険を楽しまんといかんぞ?」


そう言ってエリアさんは焼き鳥の最後の一口を頬張ると笑顔を見せる。


「さて、お礼も済んだことだし今日はこの辺にしておくのじゃ。」


「御馳走になりました。ありがとうございます。」


「礼を言うのはこちらじゃよ、とても助かった。折角じゃから祭りが終わるまではこの街におるでの、機会があったらまた会おうぞ。」


「えぇ、また今度。次は僕に御馳走させてください。」


「ほほ!礼に礼をされておっては永遠に終わらんではないか!それともナンパしておるのかの?」


嬉しそうに、だが悪戯っぽく笑いながらナレアさんが問いかけてくる。


「あー、すみません。そういうつもりではなかったんですが、でもまた会えたら嬉しいです。」


「ほほ!嬉しいのぅ。では次の機会を楽しみにしておくのじゃ、それまで息災での!」


そう言ってナレアさんは人込みの向こうへ消えていった。

最初の印象は見た目通りの女の子って感じだったが話してみると見た目に似合わず落ち着いた女の子......落ち着いた感じの女性だった。

面白い人だ、縁があればまた会ってみたいな。



お祭りの屋台って面白いですよね。

子供の頃は小さなお祭りでも結構はしゃいだものです

今となっては人込みが辛いとかいってあまりいかないんですけどね......。


それはそうと、のじゃ出てきました。

賛否が分かれるところかもしれませんが、私は好きです。

あ、ナリアはロリッ娘ってほどじゃないですよ。



いつも誤字報告していただきありがとうございます。

気を付けているつもりではあるのですが、お恥ずかしい限りです。

読んでいる最中に誤字があったりすると急激に現実に引き戻される気がして切ないので

誤字をなくせるように注意していきたいと思います。

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