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133:氷河期からの......



「そうか、無事に加護を貰うことが出来たのじゃな。」


応龍様の神域から戻った俺は街に残っていた皆に神域でのことを話していた。

因みにレギさんとリィリさんにも本当の神域や応龍様の事は話している。

相変わらずノータイムで許可を貰ったのだが、いちいち仲間内で秘密にしたりするのも......うっかり話してしまいそうだったしね。

まぁそういう事をぽんぽん話すなとちょっとお小言は貰ったが......。


「えぇ、まだ一度だけ魔法を試したくらいですけど......。」


「ふむ、ならばこれから練習でもするかの?」


「いえ、それはまた今度。それよりもナレアさん、応龍様から許可を貰ってきました。今度一緒に神域に向かい応龍様から加護を貰いましょう。」


「おぉ!妾も加護が貰えるのじゃな!?」


「はい、快く許可していただきました。」


「そうか!それは楽しみだ!いつ行くのじゃ!?今からかの!?」


ナレアさんのテンションが振り切っている。

徹夜明けの時のテンションに近い物があるけど、内容が内容なだけにあの時よりもついて行ける。


「すみません、ナレアさんの気持ちは分かりますが少し待ってもらえますか?応龍様が母への手紙......の様なものを用意してくれるらしいので、五日程経ってから来て欲しいと言われています。」


「むう、五日か......待ち遠しすぎるのじゃ!」


「気持ちは物凄くよく分かります。僕も魔法が使えるようになった時は早く試したくて仕方なかったですから。」


「ケイもそうであったか!やはりそうじゃよな!楽しみすぎて多分寝られないのじゃ!」


本当に楽しみなんだな......まぁ俺も最初の頃を考えたら人の事は言えないけどね......。


「よかったねぇ、ナレアちゃん。」


ナレアさんの横に座っているリィリさんがはしゃぐナレアさんを楽しそうに見ている。

レギさんは少し呆れ顔だが。


「僕も応龍様の魔法を使うのは初めてですし、折角ですから一緒に練習しましょう。」


「うむ、では加護を貰ったら早速色々やってみるのじゃ!」


テンションが上がりまくっているナレアさんは見た目相応の少女の様で非常に微笑ましいが......実際の......いや、これ以上は危険な思考だ......俺は慌てて考えを切り替える。

はしゃぐナレアさんはいつものように俺の考えに気づかずにリィリさんと話始めたので、俺はレギさんに話しかける。


「ところで、レギさん達は街で何をされていたんですか?」


「あぁ、少し手が空いたからな。ギルドで簡単な仕事を受けていた。」


やっぱり仕事を受けていたか......。


「......なるほど。何かありましたか?」


「いや、平和なもんだ。まだ地方に行った冒険者が戻ってきてないから人手不足な感じはあるがな。」


「その辺は時間がかかりそうですね......。」


「こればっかりはな。そっちは問題なかったのか?」


「えぇ、応龍様に関しては基本的に母さんからの言伝を届けただけですからね。ただ今後の事で少し問題がありまして......。」


「他の神獣の件か?」


「はい。妖猫様の居場所は応龍様も御存じなかったです。仙弧様については大まかな位置だけ教えて頂けましたが......ここより、龍王国よりも東だそうです。」


東と言った瞬間レギさんの表情がゆがむ。


「東か......難しい土地だな。」


「はい......ですので、流石にそこまで付き合ってもらうわけには......。」


レギさんが腕を組み目を瞑る。


「話でしか聞いていませんが、東の方は小国同士による戦乱の地と。そこで正確な位置も分からない場所を探すのはかなり大変だと思います。シャル達には手伝ってもらうつもりですが、レギさん達は危険ですので......。」


レギさんは何も言わない。

こちらの話が聞こえていたのか、リィリさんとナレアさんが俺の方を見ている......すこし目つきが怖い。

......あ、これ怒られるパターンだ。


「......ケイ。」


「......はい。」


レギさんが低い声で俺の名を呼ぶ。

やばい、超怖いっス。

思わず心の中にクルストさんが去来するほど......。


「お前は随分俺達を下に見ているじゃないか。」


「......そういうつもりは。」


俺が否定しようとするとレギさんが手をかざして遮ってくる。


「いや、そう見ているし言っている。東の地は俺達には危険だからついてくる必要はないと。」


「......。」


「ケイ君。言い方を変えるべきじゃないかな?」


言い方を変える......?

俺の疑問が伝わったのかリィリさんが言葉を続ける。


「ケイ君は私達について来て欲しくないのかな?」


そう言われて俺が言わなければならない言葉が分かった。

確かに俺が言うべき言葉は違う。


「すみませんでした......東の地は危険が多いと思いますが、一緒に来てくれませんか?レギさん達が一緒に来てくれたらとても心強いし、嬉しいです。」


「おう。任せろ。」


「そうそう、ケイ君。私たちは仲間なんだから!一緒に来てくれって言われれば嬉しいし、そういう風に言ってくれないと悲しいんだよ?」


「すみませんでした。」


「おう。」


「うむ、ケイは本当に酷い奴じゃな。」


「......ナレアさん?」


「なんじゃ?」


「ナレアさんも来てくれるのですか?」


「......。」


俺の言葉を聞いたナレアさんの表情がスッと無くなる。

リィリさんはため息をつき呆れたような表情に、レギさんは顔を窓の外に向けた。

......思いっきり地雷を踏みぬいた気がする。

氷よりも冷たい視線がナレアさんから放たれる。

先程までの上機嫌が嘘の様な氷点下っぷりだ......。


「えーっと......ナレアさん?」


「......。」


......何も言わないけどこちらをじっと見つめて......いや、睨んでいる。

いや、わかります。

ナレアさんの言いたい事は物凄く分かります。

とても嬉しく思っています......。

しかし......どう言ったらいいものか。


「......ナレアさん。」


「......なんじゃ。」


「......かなり危険が多いと思うのですが......東に一緒に行ってくれませんか?」


「......東の地だけか?」


憮然とした様子でナレアさんが聞き返してくる。


「出来ればその後も......一緒に旅をしませんか?僕の目的は以前話した通りですが。」


そう言った次の瞬間、ナレアさんの表情がピクリと動き氷点下だった視線が雪が積もらない程度の冷たい視線くらいになる。


「......しかしのう......妾は別にケイの仲間じゃないしのう。」


......ナレアさんのへそが超曲がっている。

リィリさんに助けを求めるが......先ほどまでの呆れ顔から非常に楽しそうな顔に変わっていた。

助力してくれそうな感じは欠片もしない。

因みにレギさんはこういう時、物凄く薄情なので最初から当てにはしない。

現に何が楽しいのか窓の外をずっと見ている。


「そんなことはないですよ。ナレアさんは仲間です。」


「じゃがのう。仲間であるレギ殿とリィリを誘っておいて、妾には、『え?くるの?』みたいな対応をしておったしのう。これはつまりそういうことじゃろ?」


......うん、それは確かに俺が全面的に悪いと思います。


「いえ......そういうつもりは一欠けらもなかったと言いますか......ごめんなさい。」


「はー傷ついたのじゃーもて遊ばれたのじゃー悪い男に騙されたのじゃー。」


よよよと目元に手を当てながら崩れ落ち、隣にいるリィリさんに泣きつく様子を見せるナレアさん。

......まぁ最初よりかなり機嫌が良くなったようだ。

しかしここで投げやりな対応は出来ない、真摯にするべきだ。

下手な事を言えばまた氷河期に逆戻りだろう。


「ナレアさん。傷つけてしまって申し訳ありません。僕はナレアさんの事を信頼していますし、大事な仲間と思っています。」


ナレアさんは泣き真似を止めてリィリさんの胸に顔を埋めながらこちらの話を聞いている......気がする。


「危険な地域には行ってほしくないという気持ちはありますが、それよりも一緒にいたいという気持ちが勝っています。」


「......。」


「だから、ナレアさんさえ良ければこれからも一緒にいてくれませんか?」


ナレアさんの表情は見えないが、リィリさんが優し気な笑顔でこちらを見ながらナレアさんの頭を撫でている。

......何か非常に恥ずかしいことを言ったような気がしてきた。

ナレアさんがゆっくりと顔を上げて振り返る。

その頬が薄く赤くなっているような......。


「愛の告白じゃな?」





信頼と心配のどちらに天秤が傾くかって所ですね。

しかし心配は侮りともとれますからね、ケイが怒られるのも仕方ないでしょう。

とりあえず本日ナレアの機嫌の上がり下がりがかつてない勢いでしていますね、最終的には......


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