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一つの動機

 どうも、作者です。


世界観はビジュアライズの1話


もう一つの作品と連動して描くので更新微妙かも





 私、沢有希根は齢3歳にして将来を嘱望された。

 両親から家庭教師を付けられた2歳から半年たった時には既に周りの大人たちからも天才と褒めそやされた。


 Arisaグループの令嬢、マーヤ・ヨハンソンとも幼い頃から交遊を結び、現在でも家族ぐるみで会うことは多い。


 そんな私の高校生活までの人生は、エスカレーター式というような、常に最高水準と言われる学校で最高位であり続けるほどに輝かしいものであった。


 高校卒業後、話はややこしくなる。両親2人が同じ時期に亡くなったのだ。


 親戚や親しい友人ら、(マーヤの家族も出席した)は同時になくなるなんてことを珍しがっていたが、もちろんそんなことは顔には、噯にも出さずに、式は粛々と行われた。


 

 

 エスカレーターで上がるはずの大学も、企業も、両親が死んで、暗いマンホールの穴に落っこちたような日々を送っていた私には関係なかった。


 そんなある日、私を見かねたのか、マーヤがマンションの一室にやってきた。


 このマンションは私の大学進学祝いとして送ってくれた、両親からの最後の贈り物だった。


 彼女も何度かやってきたことはあったが、今回は慰めに来たのでは無いようだ。


 ドアスコープから覗いた彼女の表情は、生きる気力というか、やる気に満ち満ちていたもので、あのときの私に欠けていたものだった。


 その表情を、扉の中からずっと見ていたい気持ちもあるが、ドアノブに手をかける。



 ドアを開けると、彼女は大袈裟に、鞄を胸の前に持っていく。


「ユキネ、あなたの両親についてなんだけど、何かおかしいと思わない?」


 それは3ヶ月前のこと、あの式場にいた誰もが顔に出さないだけで、そう思っただろう。


 だが、私の中で両親が死んだことは変わりなく、それは不可変であることも理解していた。


 でも、その言葉を聞いた瞬間、私は両親との思い出を遡り、楽しい思い出や辛い思い出がしんしんと降り積もるかのように、胸に溜まっていった。




 胸に溜まっていく思いの重さが彼女の言葉の重さに乗っかるように、魅入ってしまう。


 そして私は、自分の中のパンドラの箱を、そっと、少しずつ開けていったのだ。






 「続けて」


 そう作業員に命令するかのように指示を出す。彼女はそれに嫌な顔一つせず、


「一緒になんで貴方の両親が死んだのか調べないってことよ。式にいた誰もが思っていたことだと思うし、何よりうちの両親がそう言って聞かないのよ。」



 彼女の両親と私の父は同じ街で育った幼馴染みで、確か6歳になる頃には一緒にいたのだっけ。


「確かに何かありそうだけど、そんなこと言ったら、他の人だってそうかもしれないし、何が関係してるのかさえわかってないじゃ無い。

 私を慰めようとするのは嬉しいけど、今は両親のことを持ち出さないで!」


 強く当たってしまったが、彼女はまだやる気に満ち溢れている。何か隠していることでもあるのだろうか。


「まずはこれを見て」


 鞄から取り出した書類に書かれたそれは、両親の死因についてだ。私も何度も確認した死亡書と同じものがここにあった。

 その書類の先の方に書かれている死因はどれも推定ばかりで、そのうちのいくつかが確定している項目風に書かれてある。


「こんなの何回も読んだわよ!あたしだって、パパとママがあんなあっさり死んじゃって、理由くらい探すわよ!」


「そんなことわかってるわよ。それよりこの書類って推定ばっかりで、おかしいと思わない?

 そんでこれがうちが調べた結果」


 そこに書かれていたのは、死因 不明 と項目が変わっているだけの書類だった。


「これの何が問題なのよ!」


「これね、全部確定していない事項ばかり書かれていたでしょ。」


「何が言いたいのよ、と勿体ぶって。」


「つまり、調べた結果何も分かんなかったってこと。だからこの報告書はおかしいって言ってんの!」


「そんなの調べた人の勝手じゃない!」


「違うわよ!貴方インターネットで警視庁の死亡鑑定方法で調べて見なさいよ!」


 

 耳の後ろ側にある回線機に触れると目の前に画面が映る。


 その瞬間警視庁のホームページに飛んだ。画面をスライドしていくと、該当ページが表示される。

 (これって、、、マーヤの言っていることがあってるってこと?)


「あんたの言ってることはわかったわ。でも、あんたの両親でもわかんなかったことをどうやって調べるのよ。」


 我が意を得たりと、マーヤが


「AIベースを使うのよ!」


「っえ?AIベース?」


 AIベースとは東、西、北を繋ぐ海中のパイプライン上のタンク。そのパイプラインを断ち切るのは実質不可能と言われている。


 そのタンクを手に入れれば、データ化された世界中の情報を手に入れることができるという。ただし、それにアクセスするためにはいくつかのキーが必要だと噂されている。


「全く現実的じゃないじゃない。あんな有名なところ狙っても無駄よ。」


 これがマーヤの持っていた自信の理由なのだろうか、その先があるのか。


 不意に鞄からマイクロチップを取り出した。


「これは?」


「一つ目のキーよ。」


 何を言ってるんだ、そんな簡単に手に入るんだったら誰もが簡単にアクセスできるじゃないか。


「なによ。嘘ついてるって思ってる顔ね。でもね、これは本物よ。既に一部のアクセスには使えたわ。」


「本当に!?」


 馬鹿らしいとも思っても、一度生まれた興味は今の私にとって、必要なものだったのか、手が自然とそれに伸びる。


 

 チップに触れると先とは違うような、赤く変色した文字が書かれた画面が表示された。


 (これは、何重にもキーが隠れてるし、こんな暗号みたいなの見たことない。)


 その文字群は十進法で作られているのであろう、マーヤの視線を無視してスライドさせていく。


 最後までスライドしたが、一つ、非常におかしなことに気づいた。


(0がひとつもない?)


 通常、プログラムは十一進法で作成されており、読み解くにも認識するにも、専用のアプリを使ったり、使用されている記号をどうにかして既存の記号に落とし込まなくてはならない。


 しかし、このプログラムは私の知っている義号に落とし込んでも、0がひとつも使われていない。果たして、単なる偶然なのだろうか、それともこれは他の暗号が隠されているのだろうか。


 そこで、これまで横で私の動作を見ていたマーヤがにやけていた。



「ねぇ、これどうなってんの?」


「0がひとつもないでしょ〜

やっぱおかしいと思うよね〜。でもそれ九進法だよ。」


「九進法?何言ってんのよ。」


 プログラムにおける九進法は前例がない。というかありえない。情報量の変換効率が二進法、六十進法よりも低い。


「何でそう思ったのよ。」


「これね、うちのコネでAI使ったんだけど、どうやっても十進法じゃ、第二ステージに行けなかったのよ。それで、」


「まって、第二ステージって何?」


「ああ、それねー、」


 マーヤがいうには九進法のコードを解いた先にはまた何進法かわからないコードが待っていたらしい。


 AIで現在も解析しているらしいが、常にどこかしらのネットワークを経由しているらしく、まずそのネットを切らないといけないらしい。


 普通ならそのようなことも楽にできるが、世界中のAI集積所から常時回線が繋がっているらしく、それを断ち切るのは不可能だとか。



「じゃあどうすんのよ、これ。」


「そのための貴方じゃない。貴方にはここに入ってもらうわ。」


 そう言って出されたのは一枚の写真だった。そこは誰もが知っているだろうAI基盤作成会社、Sari makersだ。



「ここの初期プログラムをとってきて欲しいのよ。」


「何で私なのよ。貴方がいけは?」



「私はほら、うちの会社の関係で有名じゃない?」


 それはそうだけど、それは私も同じだ。


「貴方は写真公表されてないでしょ。」


 それもそうだ。でも、そんなことしなくてもそのまま買い付ければいいじゃないか。そう言うと、


「そう易々と変えると思ってるの?買えたとしてもどっかの政府に目つけられるに決まってるわ。」


「まあそうね。でも私の方がそれリスク高くない。」


「そこはなんとかなるでしょ、ユキネ」


 段々関係ない会話になっていったので、彼女が帰ったのは深夜になってしまった。


「深夜大丈夫なの?止まっていってもいいのよ。」


「いいの〜?そんなこと言ったらずっとここで暮しちゃうわよ。」


「馬鹿なこと言わないで。まあいいんだったらいいけど。」


「そんで、さっきの話のこと考えといてねぇ〜」


「はいはい」


 帰り際、そんなことを言って扉を閉めて行った。



 (はぁ。これからどうしよっかな)




 

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