はじめてのごえいいらい
三章スタートしますっm(_ _)m
王都へ向かう事を決意した私は、王都へ向かう途中にあるイジュの街までの護衛依頼を受けた。
依頼内容は三台の荷馬車と商品、及び依頼主を含めた御者三人を無事に目的地まで護衛する事だ。
それを私を含めた八人の冒険者で護衛しながら進んでいる。
「初めての護衛依頼はどう?」
「んー。意外と平和というか、何事もないんだなと」
「そんなもんよ。出る時は出るし、出ない時は出ない。それにイジュまで七日はかかるんだから嫌でも何かあると思うわよ」
今は『フィーバーズ』の紅一点でもあるメリッサさんと私で最後尾を歩いている。
ここで簡単に『フィーバーズ』のメンバーを説明すると、リーダーのロックさんを筆頭に男性三人、女性一人という構成になっている。
正直、男性の中に女性一人で大丈夫なのかと心配したが、ロックさんとメリッサさんは兄妹なのだそうだ。
それにあとの二人はヒューイさんとジャックさんと言うのだが、この二人も兄弟でロック兄妹とは小さい頃からの幼馴染なので問題は無いそうだ。
「それにしてもホントに面白いわね」
「何がですか?」
「何ってあの三人よ。姐さん姐さんって、アナタに付きっきりだったじゃない。あー思い出すだけで笑えてきちゃうわ。あはははは!」
「笑い事じゃないですよ……」
そう、笑い事ではないのだ。
『タイラント』の三人組は事あるごとに「姐さん喉渇いていやせんか?」とか「姐さん肩をお揉みしやすぜ」とか護衛中にも関わらず近寄ってくるもんだから、鬱陶しくてしょうがない。
彼等が更生? したのは喜ばしい事ではあるのだが、違った意味で面倒になってしまった。彼等も良かれと思ってやっている様なので、私も頭ごなしに無碍にも出来ないのが現状だ。
「大体どう見てもあの人達の方が歳上なのに、なんで私が姐さんなんですか!」
「あら、いいじゃない。格好いいわよ? それにアナタなら姐さんって言われても何だかしっくりくるわよ?」
「もーやめて下さいよ」
「えーいいじゃない? 私なんかどこ行っても兄貴の妹扱いだから羨ましいけどね。私も一度でいいから姐さんって呼ばれてみたいわねえ」
お姉さんならまだ分かるが、そんなどこぞの仁侠妻のような呼び名に憧れる趣味は私には無い。
それにあの三人組の顔からして、どこかの組織の娘か何かと本気で誤解されかねないではないか。
そんな取り留めの無い話をしていると馬車が止まった。
「皆さん、今日はこの辺で野宿にしましょう」
ここは街道から少し外れた短い下草の生えている開けた場所だ。近くには小川が流れていて、いくつか焚火の跡と思われる石で囲まれた物がある。
どうやら今日はここで野営をするようだ。
まだ太陽も出ていて少し早い気もするが、暗くなっては手遅れなので明るいうちに野営の準備をするのは基本なのだそうだ。そして、早目に休んで早朝に出発するとの事で早速設営を始めた。
その間、コビヤーハ達商人は馬に水を飲ませに行くようだ。
野営の準備と言ってもそう大層な事は無く、自分が寝床にする場所の小石をどかして簡単に整地して、皆で薪となる枯れ枝集めをする程度だった。
普通は退かした小石を集めて焚火を囲う竈門を作ったりもするそうだが、ここは既に大きめの石で囲われた焚火跡があるので、それをそのまま利用する。
「ファイア」
「おー」
組み上げた薪にコビヤーハが魔法で火を付けた。
まさかコビヤーハが魔法を使えた事に驚いていると、「攻撃に利用できる程に出力のある魔法こそ使えませんが、着火する程度の基礎魔法なら二人に一人は使えますよ?」と、コビヤーハに説明口調で言われて何だか小馬鹿にされた気分になった。
こういう細かい常識は街に一月程度いたくらいじゃ分からないんだよね……。
そして、いよいよ食事の準備が整った。
今日のメニューは干し肉とクズ野菜の塩スープ。
以上である。
これ……だけ……?
こういった小規模な隊商でも、ほとんどの場合は食事だけは依頼主が提供する契約になっている事が多いようだ。
ただし、内容はこの通り何とも切ないメニューになっている。
まぁ……食べられるだけマシか……。我儘は良くないしね、郷に入りては何とやらとも言うし……。
別に食べなくても死なないし……。
「いやー、こうして姐さんと同じ依頼受けるなんて運命ですよ! あ、姐さんスープお代わりどうぞ!」
「う、うん。……ありがと」
「へへっ! 姐さん肩お揉みしやすぜ」
「それはいい」
「姐さん、後でココにキツいの一発お願いしやす!」
「…………」
「……ぶふっ」
「バカお前笑うなって……ぶはっ!」
「あはははは!」
「ぶはははは!」
うざーーーーー!?
なんなのホントに!? ていうか笑ってないでどうにかしてよう! あんたら悪魔だよ!
ほら、コビヤーハがまた変な目で見てるし!
「あーやっぱ面白いわー。でも、そろそろ助けてやるとしますかね。ほらほらアンタ達あっち行きなさい。しっしっ」
「あんだよ、俺らの――」
「はぁ?」
「う……お、おう……」
と思ったら助けてくれたー! やっぱり女神様やったんやー!
食事も終わり、皆がひと息ついてしばらくした頃、ロックさんが話を切り出した。
「あー、それじゃ見張りの順番決めるか」
「そうね」
「それでは皆さん、後はお願いします」
「ああ、任せてくれ」
当然だが、夜だからと言って皆でぐっすり眠る訳にはいかない。魔物は夜の方が活性が高いものが多いし、盗賊等に襲撃される恐れもあるからだ。
これは勿論護衛を受けた冒険者の仕事なので、その順番を決める話し合いだ。
「これが二時間だから、これが全部落ちたら交代だ」
そう言って彼が見せたのは砂時計だ。どうやら二時間刻みらしい。
「んで、そうだな。見張りは二人ずつで、お互いのパーティから一人ずつでいいだろ?」
「問題ねえ」
「あっはい」
これはお互いの身を守る為に必要な事で、どちらか一つのパーティに任せてしまうと、相手がよからぬ事を考えていた時に、最悪何も対処出来ないまま殺されてしまう恐れがある。
稀ではあるが、そんな盗賊紛いの行いをする者もいるようで、これはその為の予防策でもある。
それと、一人だと居眠りした時に誰も気付かないからね。
つまり私のようにパーティを組んでいない冒険者は結構なリスクを伴うのだ。だから基本的にはパーティを組む冒険者が殆どだ。
「じゃ、こっちはこっちで順番決めるから、そっちも自由に決めてくれ」
「ああ、分かった」
「分かりました」
よーし、じゃあ……って、何で私もコイツらの仲間みたいな扱いになってるんですか!?
「姐さんの分も俺等がやりますんで、姐さんはゆっくり休んで下さい」
「姐さんはゆっくり寝てくだせえ」
「あっ! その前に約束のキツいヤツを一発お願いしやすぜ。へへっ!」
何よ約束の一発って……いつ私がそんなもの約束したんだ……ていうか死にたいの?
やるよ? やっちゃうよ? 死んでも責任取らないからね?
…………いや、ダメだ。
コイツが喜ぶだけだ、やっぱり止めておこう。
「私もやるよ」
「そんなっ! 姐さんに不寝番なんてさせられませんよ! 俺達を信用して下さいよ」
「別にあなた達を信用してないとかじゃないよ」
「じゃあ――」
「これは私が受けた依頼だからだよ。これから七日間あるんだよ? 私だけやらないなんて私が許さない」
「そりゃあ……」
「それに、あなた達の方が疲れてるように見えるよ。大方、最近まで怠けてたせいでかなり体力落ちてるんじゃない?」
「う……」
「はぁ……これで決まりだね。順番は私が三番目やるから後は好きにして下さい」
私の口撃に図星を突かれ、ついに彼等も大人しくなった。……何か久しぶりに言い負かせた気がする。
ちなみに三番目にした理由は、寝入るにしても起きるにしても、一番中途半端な時間だから皆嫌がると聞いていたからだ。
実質、私に睡眠は不要なので何の問題も無い。
こうして順番も決まり、各々お互いの不寝番のパートナー? の確認をする。
「俺とナナシが三番か、よろしくな」
「はい、こちらこそ」
どうやらロックさんが私と同じ三番目のようだ。
皆手短に確認だけして早々に休んだので、私もそれに倣って休む事にしたが、時間が早い事もあって全然眠くない。
とりあえず形だけでも、と薄手の毛布に包まって横になってみた。
「…………眠れないなぁ……」
「そう言えば、こんなちゃんとした野宿とか初めてだなぁ……」
「というか私……わざわざ寝なくても…………スヤァ……」
おやすみなさい☆
ここまでお読み頂きありがとうございます(๑˃̵ᴗ˂̵)




