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名無しの悪魔ちゃん  作者: こめっこ
第2章 教育冒険者
31/35

前途多難

あの人物達との再会(*'ω'*)

 私がCランクに昇格して三週間が経った。


「どりゃあああ! はっ! せりゃあ!」

「よっ、ほい、ていっ」

「ぐほっ!」


 そして二人の強化訓練も今日が最後の日となった。


「ナナシールド!」

「む!?」

「……でやぁあああ!」

「おお!? 今のは惜しかったね、けど、ほい!」

「くっ! こ、この……きゃあっ!」


 最初の一週間こそ毎回ボロ雑巾のようになっていた二人だが、今ではすっかり……あ、いや相変わらずボロ雑巾のようになっている……。


 だけど今ではルーク君も身体強化を使いこなし、一日中模擬戦をしても耐えられる程には体力もついていた。当然バテてはいるが、脱力というか無駄な力みが無くなり、行動が最適化された感じだ。そのお陰で一撃の速さも重さもかなり上がっている。

 同様にフランちゃんも成長して、更に彼女は魔力操作のコツを掴んだようで、身体強化の効率や強化値が上がった様だ。おまけに簡単なものだが魔法まで使える様になり、そして先日()()()()()()が使えるようになっていた。私のものより密度は薄いが、再現度は高い。先程はこれを目眩しに使ったりと彼女自身の応用力も高くて驚いている。


 何はともあれ二人ともゴメスティーヌさんの攻撃を()()()()()()()なら十分可能な実力はあると思う。

 一月前と比べれば二人とも強くなった。単純に体力だけじゃなく、継戦能力も技術も向上したと思う。


「よし。この辺にしとこうか」

「はぁはぁ。はい、ありがとう、ございました」

「はぁはぁ。もう、終わり、かよ」


 フラフラなのに強がっちゃって。

 まぁでも無事に終わって良かったよ。




 既に二人には伝えてあるが、私は明日この街を出て王都へと向かう。

 どれくらい会えなくなるのか分からないので、特訓修了の記念と称してまた三人で食事にきている。


「つーか、結局一回もナナシに当てられなかったな……」

「ふふ、私に勝とうなんて十年早いよ」

「十年でも勝てる気しないです……」

「でも二人とも見違える程強くなったから自信持っていいと思うよ? まあ調子に乗らない程度にね」

「はい!」

「ああ、上には上がいるってのは嫌って程分かったからな……」


 とは言え、今ならゴブリン百匹ぐらいなら二人で簡単に対処できる実力はあると思う。多分。


「明日からナナシさんに会えなくなるのは寂しいですけど、気を付けて行ってきて下さい」

「一応気を付けて行けよ。別に心配してないけどな」

「相変わらず一言余計だよ全く……ふふ。でも、ありがとう」


 二人に会えなくなるのは寂しいけど、生きていればまた会える。初めはどうなるかと思ったけれど、こうした関係が築けた事に感謝でいっぱいだ。


 楽しい時間は本当にあっという間に過ぎて行った。


「ナナシさん、本当に何から何までありがとうございました。気を付けて行ってきて下さい」

「うん、フランちゃんも身体に気を付けてね。大変だろうけど、しっかりとルーク君の手綱を握って頑張ってね」

「はいっ!」

「次に会う時は絶対一本取ってやるからな!」

「じゃあ、私も腕を磨いて楽しみに待ってるよ。あーそれと、あんまりフランちゃんを困らせちゃダメだよ」

「うっ……わーってるよ」


 何だかお節介おばさんみたいになっちゃったね。

 まぁでもこれだけ釘を刺しておけば大丈夫かな、フランちゃんもいるしね。

 さてさて、それじゃあ帰りますかね。


 別れの挨拶を済ませ、私は二人に背を向けて歩き始めた。


「ナナシ!」「ナナシさん!」


 ん?


「「ありがとうございました!」」


 ……もう……そんなのズルいよ……




♢ ♢ ♢




 翌朝。まだ日が昇るよりも早く目が覚めた。

 既に必要な物も揃えて、昨晩に準備も済ませていたので、少し早いが直ぐに出発する事にした。


「短い間でしたが、お世話になりました」

「いえいえ、ナナシさんだったら大歓迎ですよ。またアベリアに来た時は是非うちに来て下さいね!」

「はい、絶対にまた来ますね!」




 冒険者組合には昨日のうちに街を出る事は伝えているので、宿を出て向かった先は街の南門だ。

 実はそこで待ち合わせをしている。

 王都に行くにあたって、途中の街までだが護衛依頼が一枠空いていたので受けてみたのだ。


 ファングボアを狩りまくったせいで、正直お金には困っていないけど、折角Cランクになったので冒険者らしい依頼を受ける事にした。

 よくよく考えてみると、私はこれまで冒険者らしい依頼を受けておらず、このままでは本当に猪専門の狩人に成りかねないと危惧したのが一番の理由だ。


 もう猪女なんて呼ばせないんだから!



 南門へ到着すると、既にそれらしい行商の荷馬車が三台集まっていた。

 そこで積荷の確認をしていた男性に声を掛けてみる。


「あの、すみません」

「ん? なんですか?」

「護衛依頼を受けた冒険者なんですけど、ミランダ商会さんですか?」

「ええ、そうですが……」


 どうやら間違えてはいないようだ。

 だけど、男性は訝しげな顔で私をジロジロと見ている。


「えーと、受注書と冒険者証を伺っても?」


 おっと、そうだった。

 依頼を受けた時にもらった受注書と冒険者証を見せるように言われてたんだった。


「自己紹介が遅れました。Cランク冒険者のナナシと言います」

「ああ、そうで……い、今なんと?」

「ん? えっと、Cランク冒険者のナナシです?」

「……あなたがあのナナシ……さん……ですか……?」


 あのって何よ……。

 どうせロクでもない噂話でも聞いたんだろうけどさ! 私以外にこんなヘンテコな名前の冒険者が居ないなら私がそのナナシですよ!


「ええ、まあ……」

「……お、お、お噂はかねがね聞いておりましたが、何分こうしてお会いするのは初めてでして……ど、どうか失礼をお許し下さい!」

「はぁ……?」


 何で謝ってんのこの人?


「何でも気に食わない格上の冒険者数十人を再起不能にまで追いやったり、連日連夜ファングボアを担いで持ち帰ってはその血を啜り狂乱の宴を開いたり、最近ですと目障りな冒険者は子供だろうが容赦なく滅多打ちにして若い目を摘んでいらっしゃるとかお聞きして存じます!」


 チヨットマテ。

 何だその物騒な人物は……さすがに話盛りすぎでしょうよ……。

 大体なによ狂乱の宴って……どうしたらそんな奇跡の変化球になるのよ……。


「…………」

「はうあっ!? い、いえ、けけけ決してそう言う意味ではなく! そ、そ、そそそその私共もナナシ様に護衛して頂けると心強いという意味でありまして」

「いや、それは――」

「は、はひ! 私共はもちろんナナシ様のご指示に従いますので先程のご無礼は何卒! 何卒平にご容赦下さい!」


 ……あーうん、もういいや。




 とりあえず挨拶は済ませたので出発の時間まで大人しく待機する事にした。

 私以外にも、あと二組の冒険者パーティが参加すると依頼を受けた際に聞いていた。確かBランクの四人組とCランクの三人組だったと思う。

 ちなみにさっきの男性がこの隊商の責任者で、名前はコビヤーハさん。二十七歳だそうだが、ぶっちゃけもうどうでもいい。

 彼曰く、Bランクのパーティは何度か護衛依頼を受けてもらった実績があるので彼等は指名したのだそうだ。顔見知りだと安心するのだとかなんとか。

 これも別に私から聞いた訳ではないが、さっきから私の左後ろで手揉みをしながら一人で勝手に喋っているのだ。


 そんなのいいから早く積荷の確認しなさいよ!



 そうこうしていると四人組の冒険者の一団が近づいて来た。


「おっす! わりぃ遅くなったか?」

「嗚呼! おはようございますロックさん! それに皆さんも! コビヤーハは一日千秋の思いでお待ちしておりました!」

「お、おう……?」


 なにが「嗚呼!」よ、全く……。

 コビヤーハさんは彼等が来るなり私から逃げるように彼等の元へと駆け寄った。……ッチ。


 まぁ冗談は置いといて私も挨拶をしよう。


「おはようございます。今回の依頼を受けたナナシと言います。護衛依頼は初めてですので、皆さんよろしくお願いします」

「おーよろしくな! 俺は『フィーバーズ』のリーダーでロックだ。んで一応Bランク冒険者だ。アンタの事は知ってるから別にそんなに畏まらなくてもいいぜ?」

「マ、マズいですよロックさん! 彼女はあの、ヒェッ!?」


 まだ言うかコビヤーハよ?


「あー? 何がマズいんだ? 俺らも噂聞いて訓練してんの観に行ったけどマジでつえーし、その辺のよく分からん面子で行くよりも寧ろ今回の依頼は安心していいと思うぜ?」

「いえですからっ……え? ……訓練?」


 混乱しているコビヤーハに、ロックさん達が私の事を説明し出した。

 彼等は私の噂話をほぼ正確に把握していて、事実のみをコビヤーハに伝えた。

 そして私はコビヤーハに敬称をつける事をやめた。



「――いやはや、申し訳ありません。私もまさかこんなにお美しいお嬢さんが? とは思っていたんですよ! あっははは」

「…………」


 殴りたい、その笑顔。

 いやダメだ、落ち着け私。こんなのでも一応は依頼主だぞ。気をしっかり保つんだ!


 ふぅ……。命拾いしたなコビヤーハ!



 『フィーバーズ』の面々と簡単に自己紹介をしていると、もう一組のパーティも到着したようだ。


「『タイラント』だ。遅くなったか?」

「いえいえ、まだ予定の時間より少し早いぐらいですよ。私が依頼主のコビヤーハと申します。どうぞよろしくお願いします」


 そう言って現れたのは見覚えのある三人組だった。


 名前は確か……海老が入った酸っぱ辛くて独特の香草が入ってる料理みたいな……そうだ、トムとヤムとクーンだ!

 冒険者登録の時に絡んできたので返り討ちにしたモブABCだ。


 ていうか…………え?


 何? この三人も依頼受けてたの?


 は? マジで? ムリだし。何これムリムリ。


 絶対また絡んでくる流れじゃん?


 ホントそういうのいいから? え? いやいや絶対ムリだって。


 いやいやいやいや。マジムリだって!


「…………」

「…………」


 あっ、ほら目が合ったし。絶対気付いたじゃん。

 いやめっちゃ見てるし。こっち見るなし。


「あ、あ……」


 ほらほら来たよ。どうすんのさ?


「「「姐さん!!」」」


 …………………………はぁ?


 いやもう意味不明なんだけど!

 ホントにどうした!? そんなキャラじゃなかったよね? あーアレか、人違いか!?


「俺達ナナシの姐さんに負けて気付いたんだ。このまま腐ってたら死んだアイツに顔向け出来ねえって」

「ああ。それにあそこまで綺麗にやられちまったお陰で何だか逆にすっきりしやしたぜ!」

「最近はほぼ毎日姐さんの練習風景を隠れて見てたんですぜ。後生ですから俺にも姐さんのキツい一撃を……ハァハァ……」


 ツッコミ所が多すぎて何から手を付けたらいいのか分かんないんだけど……。

 負けて改心したって事……?

 それにしたってチョロ過ぎじゃない? 普通こういう人達って闇討ちとかしてくるタイプじゃないの?

 何か裏でもあるんじゃないかって勘繰るのは私だけか!?

 本当に真面目になったんならいいんだけど、そう簡単に信用出来る訳ないよね。


 そして相変わらず三人目のヤムかクーンどっちか忘れたけど、コイツだけ違う方向いってるんだけど大丈夫なのか……何か気持ち悪いし……。



 あまり関わると面倒臭そうなので、三人組には「よろしく」とだけ返事を返して、私は『フィーバーズ』を盾に旅の日程やお互いの役割を決める話し合いを聞く事にした。


 そうして話し合いは問題なく終わったが、何だか釈然としないまま私はアベリアの街を発つ事となった。







これで二章は終わりになります。

気が付けば目標にしていた10万字を達成していました。これもひとえに皆さんのお陰ですm(_ _)m

これからもよろしくお願いします(๑˃̵ᴗ˂̵)

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