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名無しの悪魔ちゃん  作者: こめっこ
第2章 教育冒険者
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告白

 組合で依頼達成の報告をして、記念に三人でちょっとした食事会、というか打ち上げでレストランへと来ていた。

 店員さんのお勧めで料理を頼み、足りなくなったらその都度注文を繰り返した。結構な量を食べた筈なのだが私のお腹にはまだまだ余裕があった。

 お酒は極端に幼くなければ誰でも頼めるそうなのだが、二人ともまだお酒には興味がないみたいなので、私もお酒デビューはまた今度という事にして純粋に食事を楽しんでいた。

 


「っていうかお前、まだ食うのかよ……」

「ナナシさん……」


 私を憐むような目で見るんじゃない! 


 二人は私の食事量に驚きながらも今日の仕事の成果や反省点、将来の夢などを語り、大いに盛り上がった。そして注文した料理も完食し、そろそろお開きの時間となってきた。


 さて、そろそろ本題と行きますかね。


「あー、二人とも聞いて」


 この機会に二人には私の事を話そうと改めて声を掛けた。


 どういう理由か、二人は私の姿を見たにも関わらず、何も聞いて来ないのだ。何も聞いてこないのであればこのまま有耶無耶にしようとも考えたが、それもなんだか気持ちが悪くてモヤモヤした。それに、誰かに打ち明けてしまいたいという思いもあった。

 もし、それでお尋ね者になったとしても、仕方がない事だと諦めもつくだろう。


「あのね。……この前の私の――」

「あーちょっと待て」

「ルーク君、一応真面目な話なんだから最後まで――」

「だから待てって。あの時のお前の事とかなら別に話さなくていい」

「え……」

「そうですよ。ナナシさんも何か事情があるんでしょ? 私達は全然気にしませんし、どんな姿でもナナシさんはナナシさんですから」

「……それに、あの時言っただろ? お前がどんな奴でも気にしねぇって」


 まさか二人がそんな風に考えてくれていたなんて思ってもいなかった。まだ子供だと見誤っていたのかも知れない。

 だったら尚更、私も二人の気持ちに応えなければならないと私は意を決して口を開いた。


「えっとね、私悪魔なんだ。多分」

「言うのかよ!?」

「言うの!?」


 あれ? なんか思ってた反応と違う。

 いや、でもまあ正直なところこういう反応の方が話しやすくていいかも。


「あっ、多分って言うのは気付いたらあんな姿になってたからで、正確には何なのか私にも分かんないんだよね。それに色んな記憶はあるんだけど、自分の事だけは何も分かんないんだよねぇ。なんて言うか、これが記憶喪失なのかなーって?」


(おい、フラン。何か勝手に喋りだしたぞ)

(そ、そうだね……。普通は隠したままの流れだと思ったんだけど……)


「でも、悪さとかしないから大丈夫だよ?」

「お、おう……」

「う、うん……」


 私が悪魔だと告白して若干戸惑った様子を見せていたが、その後二人は釈然としない顔で私を見ている。


「お前が悪魔ねぇ……」

「うん……何か聞いた事のある話とは違うよね……」


 どういう事なのか詳しく聞いてみると、お伽話等で語られる悪魔は残虐な性格で、国をいくつも滅ぼしたりして最終的に勇者に倒されるような空想上の存在らしい。そこで語られる見た目の特徴だけなら似ていない事もないそうだが、そもそもが創作の話なので信憑性は皆無らしい。ついでに、お伽話の悪魔は普通の人間は近づくだけで死んでしまうのだそうだ。


「お前が悪魔だったら呑気に飯なんて食ってらんねえよ」

「ナナシさんは多分ですけど……悪魔じゃなくて魔人族なんじゃないかな、と思います……」

「ああ、言われてみればそうかもな」

「魔人族?」


 何でも数百年前に、人族、獣人族、エルフ、ドワーフ等を巻き込んだ大戦があったそうで、その時に争っていたのが魔人族なのだそうだ。そして、その際に魔人族側に与した種族を含めて一括りで魔族と呼ぶのだそうだ。一概には言えないそうだが、魔族はそのどれも恐ろしい容姿をしているとされている。

 ただ、魔人族の外見は基本的には人族と比べても大差は無いそうだが、大きな特徴として頭部に角が生えているらしい。おまけに彼等は強靭な肉体を持ち、特に魔法の扱いに長けているとの事だそうだ。


 確かにその話しを聞く限りでは私もその特徴に当て嵌まる。


「私達も実際に見た事がある訳ではないので違うかも知れません。詳しい訳じゃないので、単に知らない種族なだけかも知れないですし……」

「それもそうだな。それに確か、魔族達はこっからずーっと南に行った所に追いやったって聞いてるからこんなとこにいるのも変だしな」


 南に行けば魔族に会えるかも知れないか。

 一度会ってみたい気持ちもあるけど、どうしたものかな。


「すみません、あんまり力になれなくて……」

「ううん、そんな事ないよ。むしろ色んな話が聞けて助かったよ」

「まあ、お前が魔族だろうが何だろうが誰にも言わねえよ」

「うん! 私も絶対誰にも言いません」

「二人とも……」

「そんな事より明日からの特訓頼むぜ」


 そんな事……か。

 確かにあまり思いつめたところでどうにかなる話でもない。今は二人の優しさが素直に嬉しい。最悪、街を追われるかもなんて考えてたけど、思い切って話して良かった。いや、二人だからこそかな……。


「ふふ、そうだね。二人ともありがとう。ルーク君もフランちゃんに追いつける様に頑張ってね」

「言われるまでもねえよ」

「……明日からルークが……あの特訓に……フフッ……フフフ……」


 にしてもお伽話の悪魔か……。

 ふとフィーさんがお伽話で魔の森に封印された悪魔の話をしていた事を思い出した。

 どうして私が魔の森(あんなとこ)にいたのかは気になる。魔の森のお伽話が実在する話なら歴史書や史実を記した文献を調べた方が確実だろう。知ったところでどうにかなる問題でもないと思うが、文字もこの一ヶ月でほとんど読める様になったし、とりあえず図書館でも行ってみるかな?


「ねぇ、この街の図書館ってどこにあるか知ってる?」

「図書館……? 何だ図書館って?」

「えっ? ほら本とか図鑑がいっぱい置いてある所、かな?」

「どんな本を探しているんですか?」

「えーっと、歴史とかが書いてある本があれば嬉しいんだけど……」

「あぁ。そういう本は多分この街にはないと思います。領主様の館にならあるかも知れませんが……」


 領主の館って確かあの広ーい敷地の中にあるお屋敷だよね……。興味本位で近づいただけで門番の人に睨まれた事あったな。それに、多分偉い人なんだろうし面識もないのに絶対無理じゃん……。


「そういう本は貴重だと思うので……あっ、確か王都にそういう本が集められてる場所があるって話は聞いた事があります」


 言われてみれば重ねた紙に穴を開けて紐を通した物はよく見るけど、しっかり装丁された本なんて見た事なかった。もしかすると紙はそこそこ流通しているけど、印刷技術がまだ発展してないから本は全部手書きという可能性が高い。仮にそうだとしたら写本ですら貴重だろうし、一般人が気軽に読めるものでもなさそうな気もする。


「ふむふむ。なるほど王都ねぇ」

「ナナシさん王都に行くんですか?」

「ん? あーそうだね、どうせだから一度行ってみようかな?」

「っ!? 俺の特訓はどうなんだよ!?」

「そんなにすぐには行かないよ。ちゃんとルーク君の特訓が終わるまではいるから安心して」

「はぁ……そうかよ」

「頑張ろうねルークっ!」

「おう」

「……フフフ」


 だから黒いってフランちゃん……。


 王都か。成り行きで決めたけど、正直楽しみではある。

 でもその前にルーク君をしっかり鍛えないとね。

 フランちゃんは女の子だからあんまりキツくない様にしたけど、ルーク君は少し厳しくする感じがいいかな? あぁ、でも二人一緒にやるなら同じ内容にしないと不公平だね。うんうん。

 その間に旅の準備や下調べをして……あ、昇格試験も受けておきたいな。

 なんだか急に忙しくなってきた気もするけど、目的が出来たおかげで少しワクワクしてきた。何はともあれ、これでまた明日から頑張れそうだ。




 そして次の日。

 今日から早速二人に特訓をする為に組合の訓練場に集まっている。

 冒険者としての本業もあるので訓練は週五回で期間は一ヶ月とした。彼等も昨日の報酬があるのでむしろ一月程度なら問題なく生活出来るそうで毎日でもやりたいとルール君が言っていたが、休息も訓練だと言い聞かせた。

 一ヶ月も良いのかと聞かれたが、私も王都に出発するまでに準備したい事もあるし、組合の昇格試験を受けておきたいから問題はない。

 お金? もちろん無料です。私の不安解消の意味もあるし、それに訓練と言っても、何か教えるような技術もないからね。

 

 訓練内容は至って単純だ。剣の腕も勿論重要だとは思うけど、私としてはそれ以前に体力がないとお話にならないと思っている。だから二人には基礎体力をつけるトレーニングに重点を置く事にした。

 とはいえ、ただ走るだけなら私は必要無いので、二人には実戦を想定して、武器を持って私とひたすら戦ってもらう。これなら体力もついて剣の訓練にもなるし、二人の連携も良くなって、まさに一石三鳥だ!


「はぁはぁ」

「ほらほらー、そんな休んでても魔物は待ってくれないよー!」


 まだ三十分も経っていないが、既に汗だくで膝を突いて休憩しているルーク君に剣を打ち込む。


「ちょっ! まっ!? くそおおおお!」

「うんうん。その調子その調子」


 こんな感じで休む暇を与えずにひたすら剣を振らせている。

 そしてフランちゃんはと言うと……。


「でやぁあああ!」

「ほいっ、と」


 ルーク君を囮りにして背後から仕掛けてきた。


「うーん。不意打ちは悪くないけど、そんなに大声出したらバレちゃうよ? はいお返し」

「ぐっ!? ぐぅ……たあっ! はぁはぁ」


 彼女は数日特訓していたせいもあって、ルーク君よりもまだ余裕がある様に見える。と言っても本当に少しだけど。

 それから一時間程訓練を続けていると、ルーク君の手はぷるぷる震え始め、まともに剣を振れなくなっていた。


「はーい、じゃあ少し休憩だよー!」


 二人は私の休憩の言葉と同時に地面に吸い込まれるように倒れ込んだ。


「どうかな?」

「はぁはぁはぁ……どうって、はぁはぁ、お前、悪魔か、はぁはぁ」

「そうだけど? なんてね! デビルジョークだよ? じゃあ十分後に再開するからゆっくり休んでね」

「……そう言う意味じゃねぇよ。つうか、たった十分……フラン、お前こんな事毎日やってたのか……」

「うん……」

「そうか……ゔっ!? ゔぇっぷ」

「ルークっ!? 大丈……ゔっ!」


 Ohジーザス!

 まるでいつぞやの私を見ている様だ。若人よ、精進したまえ……。







少し強引に目的を植え付けてみました!だけど悪魔じゃない疑惑が生まれてタイトル詐欺の危機が……


ここまでお読み頂きありがとうございます(๑˃̵ᴗ˂̵)

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