人工魔剣
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結局、昨晩は一睡もせずに徹夜で作業を続けて、朝方に本来の目的だった剣身の強化が成功した。
まず、私は剣身の強化の為にシールドの魔法を創った。
その名も『ナナシールド』だ。我ながら絶妙なネーミングセンスではないだろうか。
これはベールの様な薄い膜状の魔法になっていて、対象に貼り付けたり、囲んだりする事も可能だ。大きさや形状も自由に変えられて、カスタマイズ性も申し分のない仕様となっている。
一つ問題があるとすれば、強度を高める為に凝縮した魔力を使っているせいか、色が真っ黒なので何やら不穏な魔法に見える事だが、ただの防御魔法だ。
試しに殴ってみたが、薄っぺらなのにも関わらず、とても質量のある金属でも殴ったような感触だった。
本気で殴れば壊せそうではあるが、私の拳に耐える時点で耐久性は十分だと判断した。
次に、実際に武器に付与をしようとしたが、肝心の魔法付与の方法が分からずに泣いた。
ダメ元でナナシールドを剣に貼ってみたが、やはり時間経過で徐々に魔力が散っていき、またしても振り出しに戻った。
それからも色々と試してはみたが、どうにも上手くいかなかった。
しかし、原点に返り、少し視点を変えて考えてみた。
今までは漠然と剣に魔力を送っていたが、剣の表面ではなく剣を構成する組織の一つ一つを意識して魔力を染み込ませる様に流してみた。
剣の構成物なんて知らないからあくまでもイメージだけど。
そのまま全体に馴染ませて、しばらく様子を見ていると、確かに魔力は散っているが、それは極僅かで、それと同等かそれ以上に剣身から魔力が滲み出ていた。
これは剣を構成する細かな組織が魔力を帯びる事で何らかの反応を起こし、込めた魔力が自己増殖を繰り返しているように見えた。
更に霧散していく魔力も一部取り込む事で魔力が尽きる事がなくなったのではないかと推測してみた。
……ぶっちゃけよく分からんとです。
だが、成功した証拠に尽きる事なく魔力が剣を覆っている。
更に少し時間を置いて剣を確認すると、剣身にあった錆が消えて、新品の様な輝きを放っていた。
流石に剣身の欠けはそのままだが、剣の腹を叩いても簡単に折れそうな気配は無かったので合格だ。
折れなきゃいいんだよ?
ナナシールドの付与は出来なかったが、当初考えていた剣身の強化には成功したので、悪くない成果だろう。
――はぁ、炎の剣とか作りたかったけど、一度付与の方法を調べてからだね。
「おはようございます! 何を作りたかったんですか?」
「うぇ!? ううん、何でもないよー! おはようフランちゃん。ルーク君もおはよう」
「ああ」
考え事をしていたらいつの間にか声に出ていた様だ。
別に隠す事でも無いけど、独り言を聞かれて何だか恥ずかしくてつい誤魔化してしまった……。
「よーし、皆んな揃ったね。今日からいよいよゴブリン討伐だからね。頑張って行こー! おー!」
「お、おー」
「ほら、ルーク君も! おー!」
「んだよ、ガキじゃねぇ――」
カッ!
「ッ!? ……お、おーぅ」
「素直でよろしい」
ルーク君の扱い方が分かってきた気がする。
いや、これダメなやり方じゃん……。
「さっきも言ったけど、今日はゴブリン退治だから昨日までと比べて危険性がずっと高くなります。他の魔物が出る可能性も――」
「分かってるよ。注意しろ、だろどうせ」
「むぅ……まあ、そうなんだけど……」
「もー、ルーク! ちゃんとナナシさんの話し聞きなさいよ!」
フランちゃんはいい子だねぇ。お姉ちゃん涙が出そうだよ。
よし、そんなフランちゃんにはサービスだ!
「フランちゃん、少しその槍を借りてもいいかな?」
「槍ですか……? いいですけど、どうぞ」
「ありがとう。ちょっと待っててね」
短槍を受け取り、少し観察をした。
ふむふむ。穂先の金属だけじゃなくて柄も強化した方がいいかな。
あー、これ穂先と柄の金属の素材が違うっぽいな……同時には難しいか。
穂先に手を添え、昨日の感覚を思い出しながら慎重に魔力を込めていく。
「「ッ!?」」
不思議なもので、魔力が入る限界が何となく分かる。見た目には変わらないが、魔力が一杯になるとパンパンに膨れた感覚がある。
そのギリギリまで魔力を込め続け、五分程度その状態を保つと、剣に魔力が定着して勝手に魔力を生成し始めた。
そして、持ち手の柄も同様の手順で強化した。
何とか上手くいった様で、槍全体から魔力を発しているのが分かった。
大成功!
「うん、いい感じだね。はいフランちゃん!」
「え……あ、はい……あ、あの、さっきのって……えっ……槍が、魔力を持ってる……」
「うん、そうだよ。少し魔力を込めたから前より頑丈になったはずだよ」
「「魔剣……!?」」
「魔剣? あーそうだね。魔力は持ってるからそう言えなくもないのかな? あ、でもそれ槍だから魔槍なんじゃない?」
魔剣って言ったら普通は炎が出たり、特殊な効果がある奴じゃないのかね? これ頑丈なだけだよ……。
「それはそうですけど……って、そうじゃなくて! こんなの……私達お金持ってないです……」
「お金? ……あぁ。私の気持ちだからいいよ。気にしないで」
「でも……」
「もらっとけよフラン。どの道ソイツがなきゃ狩りにいけねえだろ」
「……そうだけど」
フランちゃんだけ武器持ってるから、素直に喜べない感じなのかな?
思えば二人でお金を出し合ってフランちゃんの槍を買ったんだっけ。
フッ、その点私に抜かりはない!
私は剣帯から鞘ごと剣を外し、それをルーク君の目の前に差し出した。
「……なんだよ?」
「はい、受け取って」
「はぁ? いらねえよ!」
「えっ……なんで!?」
「いらねえもんはいらねえって!」
もー! どうして素直に受け取ってくれないのよ!
別に意地張るとこじゃ無いと思うんだけど。
「じゃあさ……もし、大事な人が危ない時、君はそのナイフ一本で守る自身があるの?」
「…………」
「いつ、どこで、どんな災難に見舞われるかなんて分からないんだよ。そんな状況でも同じ事が言える? 冒険者として生きていくのなら、利用出来るものは利用したらいいじゃない。体裁よりも損得で判断しなさいよ。……大事な人がいるなら尚更だよ」
うぅ、折角作ったのにルーク君が強情だったから私も少しムキになったじゃん……。
「…………剣は受け取る。借りはいつか返す」
「うん、それでいい」
「ルゥ゛グゥ゛ゥ゛ー」
「お前っ、バカッ抱きつくな!」
ふぁっ!? 一瞬魔物かと思ったら、フランちゃんか……。
ていうか何で泣いてるの……!?
いやまさか剣を渡すだけでこんな事になるなんて思わなかったけど、結果オーライという事でいいのかな?
少し過保護過ぎる気もするけど、不安材料はなるべく減らしたい。
それにしてもフランちゃんは泣き顔も可愛いなー、鼻水まで垂らしちゃって。ふふ。
そして、やって参りましたゴブリンの森。
今日はここに来るまで長かったなあ。
私のお手製魔剣(?)を受け取ったルーク君も暫くはしおらしかったけど、道中に剣を抜いた途端に「ここここれ魔剣じゃねーか!」とか「マジかよ!?」などと供述しており、大変興奮している様子だった。
喜んで貰えてなによりだ、私も徹夜した甲斐があったよ。
でもそれ、頑丈なだけなんだぜ?
森へ入る前に再度作戦を確認して、先頭にルーク君、真ん中にフランちゃん、そして私が後方をカバーする形で決まった。
私は基本的に指示するだけで極力手を出さない。
森の中を進む事約十五分、彼らにとって初めてのゴブリンと遭遇した。
「ルーク君そっち行ったよ!」
「おう!」
「フランちゃんは全体を見ながらルーク君の援護ね! なるべくルーク君が一対一で戦える状況を作ってあげて」
「わ、わかりました!」
彼等は今、三匹のゴブリンと対峙している。
フランちゃんが槍のリーチを活かして二匹のゴブリンを牽制している。
その間にルーク君が一匹のゴブリンに対して向かい合っている。
「でやああああ!」
距離を一気に詰めて、ルーク君が果敢に斬りかかった。
すると、ゴブリンがその斬撃を防ごうと掲げた棍棒ごと首を斬り落とした。
おー、やるねぇ! ……んぅ……? ……あれ?
……よく考えたらおかしいな。
いくらゴブリンとはいえ、ルーク君の力であんなに綺麗に切れるとは思えないのだ。
考えられるのは魔剣(笑)しかないけど……。
もしかして、耐久性だけじゃなくて切れ味も増していたって事、かな……?
あっ、だから二人ともあんなに驚いてたのか!?
いや、武器が強力なのは悪くないんだけど、そのせいでルーク君が自分の実力と履き違えさえしなければ問題はないだろう。
「フランちゃんは牽制だけじゃなくて隙があったら倒してもいいからね!」
「はい!」
うん、悪くないね。
基本に忠実に槍の間合いを保って付かず離れず、二対一でも冷静に対処出来ている。
そこへ、一匹を仕留めたルーク君が応援に入り、ゴブリンの隙を突いて危なげなく二匹目も倒した。
それと同時に、残り一匹をフランちゃんが斬り払ってゴブリンを仕留めた。
槍も凄い斬れ味だな……。
あーうん。まあいいや。
初めての本格的な戦闘にしては文句のない結果だと言えるだろう。
ネーミングセンス()
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