第34話『昇り行く朝日』
ボルガンダの懐の中で寝ているフロイラパーティー。ライアはボルガンダの前足を枕にもう寝ていた。(ふふっ腕枕。)と幸せそうな顔で寝息を立てている。その隣でゲツはスイに向い
「ねえ様、温かくて気持ちいいでしょ?」
と尋ねると、スイは目を瞑ってゲツに
「目さえ閉じていれば、まあ悪くないわね。」
と言い。そのスイの隣にはイエミツが、その隣にフロイラ、コルシカ、メーブナの順番で横に並んで寝ていた。
あの凄惨で嫌悪感の走るタナーカとの戦いの後にも関わらず、脱皮したボルガンダの温かさと柔らかさでフロイラパーティーは心地好い気持ちで。何か良い夢でも見ているのか、皆幸せそうな表情で眠りに着いていた。
――――やがて夜は明け、空はうっすらと明るみを帯びてきた
目を覚ますと、私は猫になっていた。小さい子猫たちがわらわらと集まって来て、私のお腹の辺りに押し合い圧し合いで我先にと私のオッパイを取り合うではないか。そうか、私はタナーカの魔法攻撃を受けて死んで。猫に生まれ変わったのか。子猫とは可愛いらしいものだ。
いや、ちょっと待て!生まれ変るなら普通、私は子猫の方だろ。何で母猫になっているんだ。これは夢に違いない。ほら、お腹の辺りがムズムズするし。って
「私は母猫!?」
そう声を上げながら目を覚ますと。私の懐の中に、フロイラパーティーが寝ている。状況がよく解らない。私は死んだのか?いや、皆が居るし生きてるよね?えっ?もしかして皆も死んだのか?と、色々考えていると
「何だよ『母猫』って。確かに今の状況は母猫みたいだけど。」
私の声で起きたコルシカが笑いながら言った。私は何だか寝言を聞かれて恥ずかしかったが、今の状況が何なのか知りたくてコルシカに尋ねようとしたら。コルシカの方が私に話し掛けた。
「僕たちは勝ったよ。君の勇気と優しさと、ライアさんの戦士の誇りで。誰も死ぬ事無く、あの大賢者タナーカに勝ったんだ。それじゃ、おやすみ。」
「えっ?寝直すの!?」
私は安堵感からか、思わずコルシカに突っ込みを入れた。その声で、皆が目を覚ましたが。気持ちよさげで、また目を閉じようとしていた。私はとりあえず平和なんだと理解した。
そんな私の目の前には、まるで輝きを詰め込んだ宝石の様に朝日が昇り始めて美しく光を放っていた。
「みなさん。そのままで良いので目だけ開けてください。」
私が皆にそう言うと、最初は薄目を開けたが。そこから朝日の光が入り込んで、目をパチクリとさせると。一人、また一人と立ち上がり。この美しい朝日へと歩み寄った。ライアも立ち上がろうとしたが。立ち上がれずに
「昨日のダメージが残り立ち上がれない。すまないが、ボルガンダ手を貸してくれないか?私もあの朝日を浴びたい。」
私はライアのその頼みを承諾して、前足でライアの身体を起こしてあげた。すると、ライアは優しく頬笑み
「ありがとうな。」
そう言うと朝日の方へとヨロヨロと歩いた。そして、それを見たイエミツは懐から宝玉を取り出すと。宝玉は激しく輝き出して、不死の山一面を照し始めた。




