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第32話『戦いの後に』




 フロイラパーティーは自分達を覆い身代わりになり犠牲になったボルガンダを囲み焚き火をして、不死の山頂上で夜を明かす事にした。夜のモンスターが活発になっている頃に、体力と魔力が無い状態でこの不死の山を降るのは危険であると判断した事もあるが。ボルガンダと一緒に居たいと言う気持ちも皆の中にあったからだ。


 イエミツは鍋を取り出して、焚き火にかけて。フロイラに魔法で水を入れてもらうと。筒から米を取り出して入れて。ニポン王国独特の乾燥させた魚や海藻を入れ。大豆を使った調味料を入れて煮立てていた。


 どうやら、ニポン風のリゾットを作っているみたいだった。料理が出来上がるまでに時間が有るので、コルシカは袋から携帯食のビスケットとチョコレートを取り出して皆に配った。


 イエミツはチョコレートもビスケットも初めて見たみたいで。口に入れた瞬間の甘さに驚いて食べていた。


 先程までのタナーカとの激戦が嘘のように穏やかな時間が流れフロイラパーティー達の頭上には、いつもより近くに在る星々が瞬いていた。フロイラは時々立ち上がり真っ黒なボルガンダへ回復魔法をかけていた。皆、本当は無駄だと判ってはいるが。まだ気持ちの整理が着いていなかったのだ。


 焚き火を取り囲み、メーブナは絃楽器で優しいメロディーを奏で出すと。スイはそれに合わせて優しい歌声で歌いだした。


 きっと、みんな心に傷が残って。それをみんな解ってて。何とかその傷を癒してあげたかったのだと思う。


だって自分の心も痛いのだから。



 やがてイエミツの作った料理も出来て、皆でそれを食べる事にした。そのリゾットの様な料理をニポンでは『カユ』と言い。米を柔らかく煮た魚介をベースにした暖かいスープは、疲れた身体に染み渡り。皆、ハフハフと夢中になり食べた。


 イエミツはカユを椀に注ぐと、ボルガンダの前に置き手を合わせていた。この国の風習なのだろう。


 ライアは一番疲れて居たのかカユを食べると横になり寝てしまい。コルシカはカユを食べ終わると、背伸びをしてそのまま寝転がった。すると


「ゴスッ!」


と鈍く激しい音がして。それはコルシカの顔に重く硬い物が落ちてきて。


「ぎゅむーあ!」


と、あまりに痛くてコルシカは変な声を上げながらジタバタと、もがいていた。メーブナは


「なにやってんだよ。」


と、落ちてきた物を拾うと。それは真っ黒で重くて硬い岩の様な物であった。メーブナは、何処から落ちてきたのだ?と後ろを振り向くと、そこには真っ黒に焼けたボルガンダが在る。


 メーブナは落ちてきた物を持ったまま。ボルガンダの身体を調べるとボルガンダの鱗の一部が剥がれ落ちて来たようだった。メーブナは気になり更に調べると剥がれた鱗の下には、柔らかく温かい新しい鱗が出来ていた。メーブナは慌てて


「おい!みんな!ボルガンダ生きてるぞ!」


そう叫ぶと、寝ていたライアが跳び跳ねて起きメーブナの所へ行き、剥げた鱗の部分を確認すると。確かに温かく柔らかい鱗の下に脈を感じた。


 戦いの中、一度も涙を流さなかったライアが涙を流し座り込んだ。そして、皆ボルガンダの周りに集まった。




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