第21話『ブラウンドラゴン』
「この世界にね。Lv.100のブラウンドラゴンは居ないの。」
「えっ?ブラウンドラゴンは結構居るのに。」
「ちゃんと説明するね。召喚師はね召喚師の資格を取る時に誓約を与えられるの。その中に『四獣、最高位に育てる事為らず』って言葉が有って。その四獣は『時の祈り子』『麒麟』『パンドラ』そしてボルガンダちゃん『ブラウンドラゴン』なのよ。ブラウンドラゴンを最高位、Lv.100に育ててはいけないのは。Lv.100になったブラウンドラゴンの特殊能力はこの世界を全て破壊してしまうから。なの。」
私はフロイラの話が現実離れし過ぎていて。実感が湧かずに、どう言って良いのか解らなかった。フロイラはそんな私に感付いて
「まだ理解出来ないみたいね。」
私はフロイラのその言葉に激しく頷いた。フロイラはそんな私に
「じゃあ、もう少し解りやすく説明するね。ブラウンドラゴンは地竜と呼ばれ、土の力で戦うわよね?」
私はまた頷いた。
「大地の力を最大限に使う特殊能力は『大地の支配者』って能力なんだけど。それはこの星の動きを止めてしまうの。その衝撃に耐えられる生物はこの世に存在しないの。みんな死んじゃうの。だから、Lv.100のブラウンドラゴンが誕生する前に。この世の全ての生物はブラウンドラゴンを殺すの。魔王も勇者も、王も民衆も、獣もエルフも。全てが敵になるの。みんな死にたく無いし、大切な人を殺されたくないから。」
私は少し黙った後でフロイラに応えた
「そうですか。全てがですね...。」
人はどんなに今が恵まれなくても、未来に夢を見る事が出来れば、それは希望の光となり頑張る事が出来る。社畜だってそうだ。どんなに報われない労働環境と賃金であれ、将来に出世と昇給が見えれば頑張る事が出来る。
しかし、自分の未来が否定された時に。人の目に映るのは暗く光の届かない闇でしかない。それは、始めのうちは平気であったとしても。人は次第にその闇に、視界を呑まれ、考えを呑まれ、心を呑まれ。抜け出せなくなってしまう。
「ボルガンダちゃんはわたしが守る!って言ったでしょ!Lv.100のボルガンダちゃんの背中に乗って今みたいに空を飛ぶのが私の夢なの!」
突然、怒鳴ったフロイラの言葉は私の心に掛かりかけた真っ黒な幕をぶち抜いた。
「Lv.が90を超えたブラウンドラゴンはね。鱗がミーナダイヤモンドって、この世で一番硬くて、この世で一番美しい物質になるの。レッドドラゴンがルビードラゴンって呼ばれる様に、ブラウンドラゴンはダイヤモンドドラゴンって呼ばれるのよ!想像しただけでドキドキするでしょ?」
フロイラは今までと打って変わって、凄く楽しそうに私にそう話し掛けた。そして続けて
「夕陽の中をダイヤモンドドラゴンになったボルガンダちゃんの背中に乗って空を飛ぶと、ミーナダイアモンドになったボルガンダちゃんの鱗がポロポロっとたまに落ちるの。それが夕陽に当たってキラキラと光る姿を想像してよ。幸せだわ~。」
その言葉に私は励まされて、雲を突き抜け思いっきり早く空を飛んだ。フロイラはそれを叫び声を挙げて喜んだ。




