表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

七夕に願いを

1000文字以下の恋愛モノです。

7月7日


それは、彦星と織姫が、一年に一度だけ逢うことを許された日。


丁度、その七夕の日に、日本へ帰国した私は、遠距離恋愛中の淳一(じゅんいち)と久し振りに出逢うべく、少し早い夏休みを貰って、元々住んでいた町へやって来たのだ。


「ここも、変わって無いなぁ」

田舎の風景を、感慨深い面持ちで見回して居ると


「当たり前だバカ! お前が越してった春休みから、半年も経たないのに、そんなに変わってたまるかよ」

そう、ぶっきらぼうな声がする。


間違いない、淳一だ。


「ただいま。ねえ、少し背が伸びた?」


「竹の子じゃねーんだ。そう簡単に伸びるわけねーだろ」

そう言って、私の荷物を持ってくれた。


暑さで陽炎の立つ田舎道を、淳一の後をついて歩きながら

「そう言えばさ、今日七夕じゃない? 稲荷神社で、お祭り遣ってるでしょ。一緒にいこ」


「他に行く奴いねーの?」


「綾子には、連絡したんだけど、用事があるんだって」


「何だよ、しゃーねーな。じゃあ、7時に境内で落ち合おうぜ」

そう約束し、祖父母が住んでいる家の前で別れた。


何よ! 淳一ったら! 久し振りに逢ったのに、綺麗になったぐらい言えないの!? 浴衣姿で行って言わせてやる。


その後、お婆ちゃんに、浴衣を着せて貰って、お祭りに出掛けたは良いが、慣れない草履のお陰で捻挫してしまったのだ。


「私って、ドジだなぁ」


「まったくだ」

淳一にまで、言われてしまった。


ほら、背中に背負ってやるからと、屈んでいる彼の背中へ身を預ける。


「ねえ、重くない?」

恐る恐る尋ねると


「いや、お前は細過ぎんだよ。もっと食え」

ふっくらしてる方が好みだし、と消えそうな声で言った。


淳一は境内の裏手に回ると、そろそろかなと呟くと同時に、前方で花火が上がり始めた。


誰もいない、二人きりの特等席で、花火を見る。


来年もまた来れるだろうか?


本当は、海外なんか行きたくない。ずっと淳一の隣に居たい。


一年に一度しか逢えない、彦星と織姫の気持ちが良く分かる。


「お前……何泣いてるんだよ?」


「だって、もう淳一と、離れ離れに成るのは嫌だよ」

ポロポロと、溢れだした涙は止められない。


淳一は、そんな私を抱き締めて

「来年も再来年も、ずーと一緒にここで花火を見よう。約束だ」

そう言った唇で、私の唇を塞がれた。


二人は、花火が上がる七夕の夜空の下で、約束を交わす。


きっと願いは成就するだろう。


だって、今宵は七夕なのだから。



お読みくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ