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ゲームのことを思い出したい

 目が覚めたら知らない天井、ではなく。一昨日にみた天井でした。


体に力を入れてみる。


うん。動く。痛みもありません。えーと、とりあえずどうなったんだっけ?よし、いろいろと思い出してみよう。

 まずは、と思い出そうとすると、部屋の、いや病室か。のドアがカラカラと音をたてながら開く。

目があったのはお母さんだった。私と目が合うや否や、いきなり抱きしめてきた。

ぎゅーっと効果音が付きそうなぐらいに抱きしめられる。 


 お、おう…… けっこう痛いんだが。


そのままされるがままになっていたらお母さんと不意に目があう。

目があったお母さんの目は、真っ赤に腫れていた。


「宥香っっっ!また、倒れて…!今度は目が覚めないんじゃないかって……!先生は原因不明だっていうから、ずっとずっと心配で……!」

でも、と言いながらお母さんは、抱き着いていた腕を緩めて、私の頬に手を添えた。

まるで壊れ物を扱うように慎重に。

「宥香が目を覚ましてくれて、本当に、よかった……!」


お母さん…… 確かに、まだ三歳の子が、期間を空けずに二回も倒れるなんてけっこう異常だもん。 


「ごめんなさい。でもしんぱいしてくれてありがとう。わたしは、もうげんきだよ」

「そう言って、昨日倒れたじゃない!」

「そ、それは……」


倒れた理由ってのは、多分っていうか、ほぼっていうか、いろいろなことを思い出したからなんだよね。

また記憶を思い出すかもしれないし、思い出さないかもしれないから倒れないっていう保証はどこにもない。

三歳児の体には負担が大きいのかな。

 …ん?ちょっと待てよ。記憶というか前世っぽいものを思い出して倒れるのってさ、だいたい脳がキャパオーバーするからっていう理由なはず。……根拠とか知らない!漫画の知識だもん!誰も聞いてないからいーの!

話が横道に逸れてしまった。てことは、だよ?私の考えてること通りならば、成長すれば記憶を思い出しても倒れないんじゃね?

それだったらさ子どものころに思い出さなきゃいいんじゃね?え、私もしかして、頭良かったりする?


よし、それなら今から思い出したことを整理しようではないか!今ならなんかできる気がする。

気合を入れて整理しようとすると、病室のドアがカラカラと開いて、看護師さんがやってきた。

あ、今から検査ですか?……左様ですか。

お母さんがナースコールをいれていたらしい。


整理するのは検査が終わってからにしましょう。



検査が終わって。

どうやらまた検査入院になるそうです。そりゃあ、異常はなんにもなかったんですから。

検査が終わって病室のベッドに寝かされる。お母さんは飲み物を買いに行きました。

よし、今度こそ整理しようではないか!

と気合を入れた途端になるノックの音。


なんなんだ!整理しようとしたときに限って人が来やがって!呪われてんのかよ。

半ばやけになってはーい、どうぞ!と答える。……まぁ、舌足らずだからそんな風には聞こえないんだけど。

「ゆかちゃんっっっ!」

と叫びながら突進してくるのは、まさかの奏太君?あ、違ったソウ君だった。



ベッドに座る儚い少女とその少女の手を握る天使のような顔の男の子。




……はい。私たちのことです。少し盛りました。ごめんなさい。


あれから突進してきたソウ君は、私のそばを離れなかった。

上目遣いで目?てか、瞳をうるうるさせて私の手をずっと握っていた。かわいい。


「うちの奏太がごめんなさい。どうしても宥香ちゃんに会いたいっていって聞かなくって……」

「あら、そんなの気にしなくていいのよ。宥香も検査が終わって退屈していると思うし」


少し離れたところでお母さんたちがほのぼのとしゃべっている。

…いいなぁ。私もあっちに混ざりたーい。

そろそろ、握られている手が痛いんだよなぁ。ソウ君離してくれないかな。


「そうくん、てをはなしてくれないかなぁ。」

「やだ!はなしたらゆかちゃんまたたおれちゃうもん!」


あー、そっか。昨日倒れたのってソウ君が手を離したのと同時だったもんね。

 トラウマになってなければいいんだけど。


「ねぇねぇそうくん。またたおれちゃってごめんね?つぎはたぶん、たおれないとおもうんだけど…」

「ゆかちゃんがたおれてもこんどは、ぼくがたすけるからね!だからあんしんしていいんだよ!」


えっと、それは安心していいものなの?なんかここは深く考えたらダメな気がする。


それはそうとソウ君の主人公感すごいわ。

……あ、この子主人公だったわ。BでLなゲームの。


題名、知らない

どんな内容か、知らない

どんな人が出てくるか、知らない



情報量少なすぎね?かろうじて主人公の名前と簡単なストーリーしか知らない。

 違うわ。ストーリーともいえない簡単なあらすじじゃん。アレ。

あー、私のかわいい幼なじみがだんしょ、いやダメだ。そういう風な道に走るのかぁ。

……でも、人の好みって人それぞれっていうし。ほら、このご時世”同性婚”っていう言葉もあるらしいし。

こっちの世界にこんな言葉があるのかは知らんけど。でもそういうゲームなんだから普通にありそうだよね。


よし!ソウ君が幸せならどんな道を選んでも必ず応援しようではないか!

そうと決まれば!と、私は未だに私の手を握っているソウ君と目を合わせる。


「そうくん。わたし、そうくんがどんなみちをえらんでもおうえんするからね!」

そう言って、と自分からソウ君の手を握り満面の笑みで

「わたしは、そうくんのみかただからね!」

と言った。

ふ~、いい仕事したぜ。


一人悦に入っていた私は、ソウ君が顔を赤くしていることも、この言葉によって自分の首を絞めることもなにも気づいていなかった。

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