攻略対象:瀬古透
夏休みも終盤となった今日。
携帯を片手にソファに座っていた。
う~ん、なんか忘れてるような気がする…。
何を忘れてるんだっけ?と思いながら、ふとカレンダーを見ると一気に思い出した。
あ、漫画の発売日過ぎてる。
漫画というのは私がネットで読んでいる、一般の方が投稿された、BでLなやつだ。
友情と淡い恋の気持ちで揺れるぴゅあぴゅあな漫画。絵が好み。
この世界が、というよりソウ君がBでLなゲームの主人公と知ってから早十数年。
私だっていろいろ勉強したのだ。ただ、なんか、こう、がっつりしてるのを読むのはちょっとしり込みしちゃうから淡いやつしか読めないんだけど。
最近その漫画が完結しちゃったから寂しいなぁって思ってたんだけど、書籍化されるってきいてこれはもう買うしかないなって。番外編とかもあるってあったし。
よし、今日は何の予定もないし、駅の近くにある本屋まで行こうかな。
そうと決まれば出かける準備をしないと。
ソファを下りて自分の部屋に戻る。
今着てるのは、この間真悠子と麻依ちゃんと一緒に買いに行ったひざ丈の灰色のチェックのワンピースだ。半袖の端っこ?が折り返しで白色になっている。えー、何て言えばいいんだろう。有り体に言えば名家のお嬢様がきてそうなやつ。
髪型は…と考えていると、桜色のリボンの形をしたヘアカフスが目に入った。
これ、ソウ君に誕生日プレゼントとしてもらったやつだ。確か…中二の時だっけ?
その時の私はイヤーカフスならかろうじて知ってるレベルだったから使い方とか全然わかんなくてソウ君に髪を結ってもらったんだよね。
めっちゃ上手なハーフアップにしてもらって嬉しかったなぁ。
ぱって振り向いたら顔のすぐ横にソウ君がいたのは驚きだったけど。
ソウ君がすごい速さで顔をそむけたからやっぱ顔近かったのかなぁ。
ハーフアップにし、ヘアカフスをつける。
我ながらうまくできた気がする。
日焼け止めを塗り、カバンに携帯と財布、鍵を入れて出かける準備は完了した。
お母さんに駅近くの本屋に行くことを伝えて外に出る。
電車に揺られること十五分。
ホームから出て本屋に向かい、お目当ての本を探す。
えーと、どこにあるかな。
探していくとちょうど目の前にあった。よかったよかった。
漫画と前々から気になっていた小説を持ち、レジに向かった。
レジを終え、外に出る。
「ふふ、買えてよかったぁ」
ニコニコしてしまう。
さて、これからどうしようか。後なんか買うものあったかな?
ぼーっとしながら歩いていると体に衝撃が走った。
「きゃっ……すみません、大丈夫ですか?って、あれ?瀬古君?」
「こちらこそすみません……って、里見?」
ぶつかったのはどうやら瀬古君らしい。
「わわ、瀬古君大丈夫?ぶつかっちゃってごめんね」
「いーっていーって。それより里見こそ大丈夫か?ぶつかったときふらついてただろ?」
確かにぶつかったとき私はよろめいたのに瀬古君はびくともしなかった。え、これが体幹の差?
ちょっと腹筋鍛えようかな…。
「それより里見はどうしてここに?」
「あ、私は本を買いに来たの」
これ、と言ってレジ袋を取り出す。中身は見えていないので安心。それに小説も買ってあるしね。
「瀬古君は?」
「あー、オレ?人待ちしてんの」
人待ちをしてるのか。じゃあ、もう行った方がいいかな。
私は、瀬古君にもう行くね、と言い、その場から離れようとした。
「あ、ちょっと待って!飲み物買いに行ってくれたんだけどまだかかるかもしれないから、来るまで話し相手をしてもらえない?」
「え、別にいいけど、私いたらおかしくない?」
「大丈夫大丈夫!里見も知ってる人だし!」
瀬古君の待ち人を待ちながら他愛もない話をしながら瀬古君を盗み見る。
瀬古透君。
明るい髪の毛(地毛)をしたかわいい系イケメン。
私がソウ君の攻略対象だと思っている人。明るくてスポーツが得意。
ソウ君と一番仲がいいのは瀬古君なんじゃないかな。
「瀬古君の待ち人さん来ないねぇ」
そう言った矢先、耳に聞きなれた声が飛び込んできた。
「遅くなってごめん。結構混んでた」
「奏太、ありがとな」
「あれ?ソウ君?」
あ、私の知り合いってこういうことか。
ソウ君に声をかけようとすると、飲み物を持ちながら何か言っていた。
「なんで宥香がここに?暑すぎて幻覚を見てるのか…?」
瀬古君がげらげら笑ってる。ソウ君はどうしたんだろうか。とりあえず
「私は幻覚じゃないよ?」
「いや、ごめん。ちょっと驚いただけだから」
ソウ君に近づく。熱中症とかではないよね。
近づくと、ソウ君の視点がある一点で止まる。
私のハーフアップの結び目だ。
「あ、それ…」
「これ?ソウ君がくれたやつだよ。かわいいでしょー」
ほんとかわいいよね。このヘアカフス。ソウ君のセンスの良さに脱帽だわ。
瀬古君の待ち人も来たので帰ろうとすると、呼びとめられた。どうやら駅まで送ってくれるらしい。
遠慮したら、ソウ君たちも駅の方に用があるそうで、押し切られる形で送ってもらうことになった。
駅までの数分をソウ君と瀬古君と歩く。
「送ってくれてありがとう。じゃあばいばい」
「おう!また二学期でな」
「宥香、気を付けて」
並んで歩く二人を見つめ、私はソウ君と瀬古君っていい感じだよね、と独りごちるのだった。
ちなみに買った漫画はとっても良かったです。




