7話 ラブ探偵悠也
吉田は困惑していた。
横濱は、今なんと言ったか。
遭難と言ったのか。何故、何故、何故。
目覚める前の記憶を辿る。
帰宅している途中、吉田の記憶はそこで止まっている。遭難する可能性は皆無。ありえない、起こりえない、ありうる訳が無い。
「____________夢か」
吉田の思考は停止した。
目を閉じようとする吉田を遮るように、大きな欠伸が聞こえた。
目をやると、橋本が目覚めていた。
「不細工な目覚めだな…。可愛い方の橋本を見習って」
大門は呆れた口調で悪態をついた。
横濱は、橋本と橋本の欠伸で起きた中屋敷に、遭難していることを説明した。
「つまり、どゆことだってばよ、早く帰ってゲームしてぇんだけど」
山田は状況を飲み込めていないようだ。無理もない、IQが3なのだから。IQ3でも可愛ければ許せたのに、気持ちの悪さが相まって憎悪すら覚えてしまうかもしれない。
しかし、状況を上手く飲み込めていないのは山田以外にもいた。
吉田、鈴木も、ここまでの経緯を何一つ覚えていない。
横濱、大門、中屋敷、橋本によると、林間学校の森林散策中に遭難してしまったそうだ。
吉田の記憶に拠れば、林間学校は来週の木曜日からだった。つまり、一週間分の記憶が無い事になる。
遭難したショックで軽い記憶喪失でもしたのだろうか、三人の人間が。同時に。そんなことがあるのだろうか。しかし、四人の証言は一致している。矛盾点も無かった。それに、過ぎたことは仕方ない、受け入れるしか無いようだ。
「林間学校中の遭難でしょ?なら、焦って動かなくても良さそうだね。誰か気づいて探してくれるでしょ」
吉田悠也は安堵した。
木々が生い茂る自然の中、七人は持っていたゴキブリポーカーで遊び始めた。
吉田の手札
ゴキブリ×1
カエル×4
ネズミ×2
吉田の場
ゴキブリ×4
カエル×2
ネズミ×3
コウモリ×4
有り体に言うと、吉田は負けそうだった。
吉田のターンからだった、地獄が始まったのは。