6話 その幻想は最初から殺されていた
体の表面が皮膚が、暖かさに包まれる。
朗らかな光が、吉田悠也の瞼を開かせる。
春の日差しが眩しくも、優しく、吉田を照らしていた。
「ここは_____」
吉田悠也は思い出す。ここに至るまでの経緯を____。
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強風により電車通学の生徒に合わせた早期下校になった。早く家に帰れると知った周りの生徒達は、喜びに満ち溢れているのが見て取れた。
勉強は学生の本分。しかし、周りは勉強を毛嫌う者ばかり。吉田は呆れ返っていた。
吉田は____。
誰よりも先に帰っていた。
高鳴る胸を抑えながら帰宅する彼の足取りは軽く、Y字路に差し掛かる_______。
彼の記憶はそこで止まっていた。
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立ち上がり、辺りを見回す。
正面には断崖絶壁。それ以外は木々が生い茂る森。一度、奥に足を踏み入れてしまえば迷ってしまう。アウトドアの知識、経験の無い吉田でも、理解するのに時間はかからなかった。
思考に耽っていると、茂みから人が現れた。
「目が覚めたのか、やっさん」
泥か何かで少し汚れた格好の鈴木、山田、大門、横濱が立っていた。
「あー、重かった」
担いでいた何かを大門と、横濱が地面に降ろした。橋本と中屋敷だった。
吉田悠也は思考を巡らせたが、この状況の答えが出ない。情報が少なすぎる。
自分も同じように鈴木達に運ばれてきたのだろうか、だとしたら何故、「__ん」森の中に自分は眠っていたのか何「__っさん」故自分は何故何故何故何故__。
「やっさん!!」
耳元で起きた急な爆音。瞬間、原因である男の背後に回り、拘束する。__イメージは完璧だった。
「イメージするのは最強の自分___」
尻もちをつきながら、吉田は呟いた。
「ったく、さっきの話、絶対聞いてなかったでしょ。もう一度話すのも面倒だから簡単に言うよ」
横濱が気怠そうにぼやく。
「いやいや、聞いてた聞いてた。うんうん、で、なんだっけ」
呼吸をするように、それが当たり前なんだと、そう言わんばかりに、堂々と嘘をついた。しかし、周りの者は何も気にしている様子はなかった。どうやら、分かってくれたようだ。単純な奴らで助かった。
横濱が口を開く
「遭難した」
人物紹介
内容は、吉田悠也の独断と偏見
吉田 悠也
本作の主人公 人畜無害の人間 一日に一度だけ未来を視ることが出来る。
鈴木 聖
吉田のクラスメイト 吉田とは休日にゲーセンで一日中遊ぶような仲
何をしても平均的な男 常識人
山田 雅
吉田のクラスメイト 言動全てが周りの人間に戦慄を与える男
ホモなのか、ゲイなのか、人間なのか、謎が多いようで少ない
大門 駿河
吉田のクラスメイト 基本的に下ネタしか話さない
"うんこ"だけで心の底から笑うことのできる低俗な人間
横濱 樹
吉田のクラスメイト
温厚な性格をしているが、気に入らないものには毒を吐く。
橋本 浩太
吉田のクラスメイト アイドル沼に頭からダイブして帰ることが出来なくなった男
金のためなら大体のことは何でもやるクズ
中屋敷 雄輔
吉田のクラスメイト 頭はいいが、どこかに違和感を感じる男
宇宙人と噂されている そして、シャンプーが髪に合っていない