【第1章2節】王都到着
俺は未だ、王都を目指して馬車の中にいる。
馬車の中で知り合った商人のドレイク、その息子のザックとこの2日間一緒だ。
このドレイクという商人・・・
まぁよく喋る。商人とはこういうものなのだろうか?
寝ている数時間以外はほとんど豪快に話している・・・
「いいか!ロック!!冒険者なってものはいつ死ぬか分からない職業だ!
だからこそ、ちゃんと所帯を持って帰る場所を作らないといけねぇんだ!!」
ドレイクよ・・・その話はもう2回目だ・・・
「俺が母ちゃんと結婚した時なんてのは、言うも涙、聞くも涙の大ロマンスよ!!
まぁ恥ずかしくて人に聞かせる話でもないがな!!ガハハハッ!!」
そういって、俺の背中を何回も叩く。
いい加減、背骨が軋んでいる・・・
この豪快なドレイクの奥さん・・・
きっと魔物と同じくらいの耐久力があるのだろう。恐らく・・・
「まぁコイツもこんなにおとなしそうにしているが、
しっかりと隣町の娘といい感じになっているからな!!流石、商人の息子だ!!
ちゃっかりしてやがる!!」
そういうとザックの背中を俺と同じ要領で何回も叩く。
「やめてくれよ、父さん!彼女とはそんなんじゃないって!」
ザックよ・・・
背中の痛みと彼女にばらされた悲しみ事、心中を察する・・・
「だからな、ロック!俺が言いたいのは、嫁さがしも商売も冒険も同じってことだ!」
うん!どういう事だ!!
「要は、気合と根性と、そして気合いだ!!!」
おい!!商売関係ない!!
完全に戦士向けの肉体言語だ!!
『ハハッ・・・要は俺次第だから、頑張れって事ですね・・・』
完全に愛想笑いになってしまった。
ザックも苦笑いの俺を見て同じ顔をしている。
「良くわかっているじゃないか!!ガハハハッ!!!」
本当に豪快なおっさんだ・・・
まぁ、悪い人ではないし今度店にも顔を出してみよう。
「おっ!!ちょうどいい感じで目的地の王都についたみてぇだ!!」
そういうとドレイクは馬車から身を乗り出して指をさした。
『これが・・・王都・・・なんてデカい城なんだ!!』
はぁ・・・
やっと着いた・・・
何とか背骨が折れる事なく王都に着いてよかった・・・
『くぅー!!はぁー!!』
2日ぶりに人のいる場所の大地に足をつけて、
背を伸ばし空気を大きく吸って吐いた。
「じゃあここいらで俺らは店に戻るとするぜ。
ロック!2日間だったが楽しかったぜ。今度店に顔を出せよ!!」
そういうとドレイクは手を差し出した。
『こちらこそありがとう。おかげで楽しかったよ。』
俺はドレイクと固く握手をした・・・事を今少し後悔している。
握力がすごいのか、だいぶ手が痛い・・・
『ってて・・ザックもありがとうな!彼女さんと仲良くやれよ!』
俺は少しニヤつきながらザックに挨拶をした。
「もう・・・やめて下さいよ!!ロックさんもお元気で!!」
ザックとも固い握手を交わした。
ドレイクと比較しても意味がないが、ザックも割と握力があり少し痛い・・・
商人もやはり鍛えているのだろうか?
俺も精進しないとな・・・
そうして俺はドレイク親子と別れ一人になった。
『さてっと・・・んじゃ、冒険者ギルドを目指しますか!』
道中、いろいろあったがやっと王都に着いたので、
その足で冒険者ギルドを目指して歩き始めた。