【第1章1節】道中、馬車にて
かつてこの地では竜族・魔族による覇権争いが行われていた
竜族は己が誇りの為に・・・
魔族は全ての種族の破滅の為に・・・
争いは何百年も続き、
ついには人族を巻き込む争いへと発展した
不死の力を持つ魔族は強大で、
開戦から数百年、魔族の攻勢で争いは終わるかに見えた
しかし、混迷を極めた争いは一人の男の活躍により突如終わりを告げる
その男は人でありながら神々の恩恵を受け、
誰しもが成し遂げる事が出来なかった竜族との同盟が成立した
そして人族と竜族は手を結び魔族を地平の奥地に封印する事に成功した
これが後に【竜魔戦役】と呼ばれる戦いの終結となる
それから150年、
人族と竜族はかつての盟約の元、互いに不干渉ながらも平和な時代を送っていた
だが状況は一変する
地平の奥地に封印した魔族に復活の兆しが見え始め、
かつて友として戦ったはずの竜族が裏で手を引いている
長く続くかに思われた平和が再び破滅の道を歩むことになる
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「おい兄ちゃん!しかめっ面して、何読んでやがるんだ?」
隣に座っている商人のおっさんが俺の顔を覗き込む。
『あー・・・竜魔戦役の歴史書と王都からの御触書きだよ』
俺は手に持っている本と紙をそのおっさんに見せた。
「なるほどな!するってーと、兄ちゃんも王国軍への志願で王都まで行くのかい?」
おっさんは関心した素振りの顔で俺を見る。
『いやー・・・。正直、王国の正規兵ってのは性に合わなそうなんで・・・
ただ、せっかくだから冒険者にでもなって生計でも立てようかな・・・ってね』
俺は少しバツが悪そうに答えた。
「ハハハッ!!まぁそんな謙遜するな!」
おっさんは豪快に笑い始める。
「どっちにしろ、俺らの暮らしを守ってくれるのには違いない!」
そう言って、おっさんは俺の背中を強く叩いた・・・
『ッテ・・・まぁそう言ってもらえると助かると・・・』
叩かれた背中の痛みに耐えて、俺はそう答えた
「んじゃ、兄ちゃんは冒険者になる為に王国まで行くってわけだな!」
おっさんは俺の痛みなんて気にしないように再び背中を叩く。
『・・・まぁ、そんなところですかね。俺の村では冒険者になれないし』
いい加減、背中を叩くのをやめてほしい・・・
「まぁここで会ったのも何かの縁だ!
俺は王都で商人をしているドレイクってもんだ!そしてこっちは息子のザック!
何かあったら俺の店を贔屓にしてくれるとありがたいぜ!」
そういうとドレイクは息子のザックの背中を数回叩いた。
ザックは慣れているのか涼しい顔をしている。
痛くないのだろうか?
『俺の名前はロックだ。まぁ、そう言う事なら今度よらせてもらうよ』
そう、俺はドレイクに返す。
「宜しくな、ロック!!」
そういうと、三度ドレイクは俺の背中を力強く叩く・・・
はぁ、俺は王都に着くまで、あと何回背中を叩かれるんだろう・・・
きっと着くころには背骨が折れているんではなかろうか・・・