表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄の結末と真相  作者: 東 万里央
アデライードサイド
26/28

真相(8)

 私は生まれて初めて抱く感情に戸惑った。私はフィリップ様が好きだったはずなのだ。かっこよくて、優しくて、絵に描いたような王子様――。


 けれども、ジェラールは兄弟同然なのに。私にそっくりな男の子なのに。こんなの変だと振り払おうとしても、ジェラールの顔が浮かんでしまう。


 なぜこんな気持ちになったのかと、自問自答を繰り返す日々になった。そして、ある日理解してしまう。フィリップ様への思いは恋ではなく甘えだった。


 ゲームの中のフィリップ様は、「諦めるな」などとは言わずに、ただ私を甘やかしてくれる。「そのままの君を愛している」と囁いてくれる。――そんなお砂糖みたいな存在だった。食べ続けているうちに、歯も身体も悪くする甘い毒だ。


 やっと気付いたそのころには、病気もすっかり良くなって、私は起き上れるまでになっていた。


 私は、ジェラールに私のすべてを打ち明けたいと思った。今週末にまたジェラールは屋敷に戻って来る。その時に絶対に逃げずに前世を告白して、「好きです」と伝えようと決めた。


 週末に戻って来たジェラールは、初めて出会った頃のジェラールだった。金髪に戻して男の子の服装をしていたんだから驚いた。私は「ああ、そうか」と悟るものがあった。


――断罪イベントがあったんだ。


 もう私を装う必要がなくなったからだろう。


「フィリップ様から婚約を破棄されたんでしょう?」


 私がきっとそうだろうと思って尋ねると、ジェラールは目を丸くして驚いていた。


「どうして……」


「……」


 私は勇気を振り絞ってジェラールに頼んだ。


「ねえ、ジェラール、聞いてくれる?」


 私は一時間をかけてすべて語ったあとで、「私ってバカだなあ」とぽろりと涙を流した。これが前世の「私」が流す最後の涙だと決める。


 私は「私」に語り掛けた。


 ねえ、「私」、もういいんだよ。あなたも一生懸命だったんだよね。頑張ったよね。だから、もう眠っていいんだよ……。


 私は「私」が私の中に徐々に溶けて、やがてゆっくりと一つになるのを感じた。


 私はこれからアデライードとして生きて行こう。今度こそ後悔のない、諦めない人生を送るために。


「アディ?」


「……」


 私は首を傾げるジェラールに目を向けた。その紫色の瞳を真っ直ぐに見つめる。


「ジェラール、私、あなたが好き」


 迷いなんてなかった。


「世界で一番好き。あなただけが好き」


 ジェラールは目を見開いて私を凝視している。けれどもやがて頬をポリポリと搔くと、「ああ、カッコ悪ぃな」と顔を真っ赤にした。


「……先に言われちまった」


 「絶対に俺のほうが先に好きになったのに」――そう言って大きく溜め息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ