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婚約破棄の結末と真相  作者: 東 万里央
アデライードサイド
25/28

真相(7)

 結局ジェラールが私の身代わりを引き受け、私は治療に専念することになった。


 その夜、私は苦い薬を飲み下しながら、「負けない」と自分自身に誓った。


「……負けるもんか」


 膝に掛けたキルトを握り締めながら、窓の外に見える月をきっと見あげる。


――病気なんかに負けるもんか。絶対に未来を諦めるもんか。


 だって私が諦めてしまったら、ジェラールが報われない。ジェラールに合わせる顔がない。


 それが、私の世界に対するはじめての抵抗だった。


 この時私はまだ気づいていなかった。フィリップ様のためにではなく、ジェラールのために頑張ろう――そう考えている自分がいることに。




 学園は全寮制になっていたから、ジェラールは週末に許可を得て、シャルトル邸に戻ってくるようになった。私はジェラールの来てくれる、週末が何よりの楽しみになった。


 ジェラールは私に一週間分の勉強や、学園で得た交友関係を教えてくれた。


 ここで驚いたのはジェラールは頭が良くて、上位の成績をキープしていたことだ。きっともともと頭がよかったんだろう。ついて行くのが大変だったけれども、もう諦めないと決めていたから頑張った。


 ジェラールが必ず話してくれる、クラスメートや友達の話も楽しかった。ジェラールはやっぱり皆に好かれて、すっかり頼られているみたいだった。


「それでさあ、今じゃあいつらもすっかり反省して、婚約者を大事にしているって。それはよかったんだけど、最近じゃ恋のキューピッドとか、別れたカップルの修復とか、そんなことばっかり頼まれるようになって、俺は何でも屋じゃねーっつーの」


 私はそんなジェラールの話に笑いながら、心のどこかで嫉妬している自分を感じていた。


――ジェラールの友だちもクラスメートも、私の知らないジェラールの顔を知っているんだ。


 きっと男の子にも女の子にも、ジェラールを好きな子だっているだろう。


 ずきんと胸が痛んだ。その瞬間、私は自覚してしまったのだ。


「ん? アディ、どうしたんだ?」


 慌てて笑顔を作る。けれども、胸の痛みはまだ続いていた。


「ううん、なんでもない。それからどうしたの?」


 ああ、そうだったんだ。私はジェラールが好きだったんだ。いつからかわからないくらい、ごく自然に好きになっていた。

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