真相(2)
男爵と平民との間に生まれたヒロインが、持ち前の頭脳と努力で宮廷で活躍し、ヒーローの王太子や攻略対象と愛を育んでいく……プリンセスロードはそんなストーリーだった。
私はこのゲームに夢中になった。中でも王太子フィリップは、何をおいてもヒロインを庇ってくれて、本気でフィリップに恋をした。こんな人が私にも現れればと思った。何度そのハッピーエンドのルートを、時間をかけてクリアしたのかわからない。
あのころにはフィリップの婚約者の、アデライードの悲しみなんて考えなかった。意地悪をする悪役令嬢なんて、早く消えてしまえばいいのにと、そんなことすら考えていた。それほど自分を愛してくれる存在に、私は飢えに飢えていたのだ。
そして、きっとこのことを告白すれば、ジェラールは悲しむに違いない。けれども私は認めなければならない。攻略対象の中でもジェラールが一番苦手だった。なぜって一番自分に似ていたキャラだったからだ。
親は頼りにならないどころか、自分から搾取しようとする。そんな環境を呪って、それでも希望を捨て切れずに、ある日ふと現れたヒロインにすがる――「ゲームの中の」ジェラールは私そのものだった。
ジェラールルートは一回プレイをして、グッドエンドのシナリオを知ると、辛くてそれっきりになっていた。けれどもフィリップは相変わらず大好きで、休みのたびにフィリップルートをくり返していた。
けれども、ろくに食事もとらずにゲーム三昧な日々――そんな不健康な生活が続くはずがない。私は二十八歳の冬のある日、寒気を覚えて室内で倒れた。
暑くて汗をかくほどなのに寒い。骨がぎしぎしして全身が痛い――そんな状況は初めてで、でも、どうしたらいいのかわからなかった。
携帯はすぐそばにあったけれども、誰かに助けを呼ぶなんて思いつきもしなかった。誰かが自分を助けてくれるだなんて、考えたこともなかったから。
「誰か、助けて……」
――それが前世の私の最後の言葉だった。




