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婚約破棄の結末と真相  作者: 東 万里央
?????サイド
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現在(4)

 四年も女の服ばかりだったからか、トラウザースもシャツもまだ着慣れない。けれども今更戻れないだろうなと思う。あれから一年近くであっという間に背が伸びて、手も、足も、肩幅もぐんぐん伸びたからだ。ドレスなんか着ればオカマになるだろう。


 成長を抑える薬を止めただけで、簡単に後れを取り戻せるとは思わなかった。ところが、男に戻って三ヵ月後が過ぎたころ、ある夜身体が軋むみたいに痛くなって、それを一晩中耐えていると、翌朝には三cmも背が伸びていたのだ。それを十一カ月に何度か繰り返し、一八〇㎝まで後一センチだ。


 アディは毎日俺を見上げながら、「やっぱり男の子だなあ」と感心している。閣下……父は日々男らしくなる俺を、毎日目を細めて見ていた。


 昨日はこんなことを言われた。


「結婚式が楽しみだ」


――そう、俺とアディは現在婚約している。


 アディと俺は思いを確かめ合ったあと、父に離れ離れになりたくはないと、二人で結婚を申し込みに行ったのだ。アディが婚約を破棄されたその日の話だ。おまけに俺は没落子爵家の息子でしかない。果たして許されるのかと不安だったが、父はなんと「そうなると思った」とあっさり許してくれた。


「そうなると思った」とはどう言うことだ、なぜ俺達にもわからなかったことがわかったのかと、アディと揃って父に詰め寄ったのだが、父は「大人と子供との差だよ」と嗤うばかりだった。きっと父には一生敵わない気がする。


 父からすれば俺はシャルトルの遠縁。貴族の嫡男でありながらも、没落しており実家を継ぐ必要がない――まさしく格好の女婿になるのだそうだ。なんの問題もないと太鼓判まで押された。


 さすがに王家との婚約を破棄し、すぐに結婚というのも、世間の目が気になるところだ。俺たちは噂も収まる一年後に、式を挙げることになっていた。


 俺とアディは「双子のようにそっくり」から、日々男と女に別れている自分たちの変化を、毎日身長や手の大きさを比べ合って楽しんでいた。変わって行く自分たちの身体が、ありのままでいられることが嬉しかった。


 そんな日々を過ごして結婚式も間近になった一ヵ月前、思い掛けないやつがシャルトル邸に押しかけて来た。


 なんと、アディの元婚約者のフィリップだった。

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