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7話 王女様と神器

 夕方トト村に着くと、何やら騒がしかった。どうやら結構大きな商隊か何かが到着して、今日はこの村に泊まるらしい。

 ……特に俺自身は用は無い。無視してサッサと家に帰って、ご飯を食べてお風呂に入ろう。温泉楽しみだ。

 家に帰ると家の前に、物凄い豪華な馬車が止まっていた。……商隊の馬車にしては豪華過ぎる、貴族かな? 何の用だ?

 警戒しながら近づいて行くと、村長が気がついて手を振ってきた。どうやら村長が、ここまで案内して来たらしい。……余計な事を。

「良かった! 帰ってきたか」

「村長? 何ですか? 何か有りましたか?」

「実は王族の方が、旅の途中に寄られてな。今日はこの村に泊まられる」

「はあ? 宿屋に行かれたら良いのでは?」

「グレッグの宿屋では、全員は泊まりきれないからな。そんな時は、部屋に余裕と有る村の者が宿屋の真似事をするんだ」

「へ~そんな習慣が有ったんですね」

「そこで、お前さんの家にも何人か泊めてくれんか?」

「……わかりました。ただ、田舎出身の駆け出し冒険者なので、失礼が有ると困ります。あまり身分の高くない男性を何人かでお願いします」

「わかった、わかった」

 村長が騎士の様な人と、話していると豪華な馬車からドレスを着た美少女が降りてきた。

「〈あら、お久しぶりね? 元気だった?〉」

 俺に話しかけてるのか? 周りの人が慌てて居る。しかし、美少女は気にもとめずこちらに歩いて来る。

「〈私のこと忘れたの? 佐藤さんよね? 今なにしてるの?〉」

 やべ! 本当に知り合いか! こ、ここは正直に謝ろう。

「〈ご、ごめんなさい! 佐藤です! ……あの、ど忘れしてしまって……どちら様でしたか?〉」

 素直に謝ったら、周りの人がお化けでも見たような顔をしている。

「〈……本当に佐藤さんなの? ごめんなさい、初対面よ〉」

「〈は? どういう事?〉」

「〈佐藤さん、今何を話しているの?〉」

「〈何って、知り合い……〉」

「〈何語で?〉」

「〈何語? ……あっ!〉」

「〈はじめまして、同郷さん。第三王女のマリアよ。よろしくね?〉」

 ありがちな引っかけに、かかってしまったらしい。



 家の中に入り、改めて落ち着いて話をする事にした。村長は自分の家に帰って、色々準備をするらしい。

「もう一度自己紹介からね。この国の第三王女マリアよ」

「Fランク冒険者のタカです」

 取り巻きの方も名乗ってくれた、騎士団長はもちろん侍女等も貴族らしい。

「それで、家に泊まる方なのですが……」

「それよりも、重要な話が有るわよね?」

 ですよね。ごまかせない様だ。

「今ここに居るのは、信頼出来る人間だけだから、正直に話してもらえるかしら? 言葉使いも気にしなくて良いわ」

「わかったよ」

「あなたは転移者? 転生者?」

「そう言うくくりなら、転移者だ」

「何をしに来たの?」

「特に何かをしに来た訳ではない。俺自身はここで、のんびり暮らすつもりだ」

「本当に?」

「ああ、英雄願望もない。今はこんな身体だが、本当はもっと年上なんだ。日本で休みなしで何年も働いて来て、突然この世界に飛ばされて来た。俺を飛ばした存在は、自由にして良いと言っていた。だから、ここでのんびり暮らそうと思っている」

「嘘はなさそうね。信じましょう」

「ありがとう」

「私は転生者と言う奴よ。日本で死んでこの世界で、生まれ変わったの。王家の祖先に勇者と言う転移者が居て、王家の血筋に極まれに転生者が生まれるのよ」

「なるほど、そんな事が……」

「王家は転生者・転移者の保護もしているわ。あなたはどうしたい?」

「ほっといてくれて、構わない。先ほどう言った通り、ここでのんびり暮らすつもりだ」

「わかったわ。……とりあえず、今日は私がここに泊まります」

「駄目だろ」

「何でよ!」

「男の一人暮らしの家にお泊まりとか、駄目に決まって居るだろ。他の方に聞いてみなよ」

「あっ……ひ、一人で泊まるとは言ってません! 

みんなでよ!」

「大人しく村長の家に行って下さい」

「イヤよ」

「あのタカ様、私達からもお願いします。こちらの家はまだ新しく綺麗なうえ、設備も良いようです。先ほど見た村長の家より、王女様をお泊めするのにふさわしいかと。もちろん私共もご一緒しますので、間違いや悪い噂が立たない様に配慮しますので大丈夫です」

 侍女の中で、一番身分の高い女性が王女様を援護してきた。騎士団長を見ても、頷いている。大丈夫なのか?

「では、俺が他に泊まりますから、自由に使って下さい」

「そこまでして頂かなくても、大丈夫ですよ」

「気にしないで下さい。いえ、ぜひそうさせて下さい」

「そこまで仰られるのでしたら、お言葉に甘えさせて頂きます」

「決まりね。誰か村長に伝えて来て」

「ハッ!」

 王女様の言葉に、騎士の一人が走って行く。

「家の中を案内して頂けるかしら?」

 走って行く騎士の後ろ姿を眺めて、本当に王族なんだなと場違いな感想が頭をよぎる。今はサッサと家の中を案内して、他に行こう。

「では、こちらから」

 まず一階の書斎からかな?

「こちらが書斎になります」

「……机と椅子しか無いわね」

「まだ、来たばかりなので何も無いです。ここにベッドを二つ出すので、男性の騎士の方はお二人ここで休んで下さい」

 アイテムボックスから、ベッドを二つ出して設置した。

「アイテムボックスか。なかなかの容量のようだな」

 騎士団長が変な所で感心している。

「こちらが客室になります。騎士団長様は、ここでお休み下さい」

「わかった」

 続いて二階に案内する。

「ここと隣は空き部屋です。ベッドを二つずつ出して置きますので、侍女の方や女性騎士の方がお使い下さい」

「もう二つずつ入りませんか? 女性の騎士と侍女は八名居るのですが……」

「う~ん、二段ベッドでも良いですか?」

「大丈夫です。有るのですか?」

 俺は二段ベッドを二つずつ、両方の部屋に出した。ちょっと部屋が狭く感じる。

「こちらが、俺の部屋です。寝具を新しい物に交換しますので、王女様がこちらでお休み下さい」

「調度品は一切無いけど、なかなか良い部屋ね」

「男の若い冒険者に、無理言わないで下さい」

「ここに、ベッドを一つお願いします。私もここに寝ます」

「わかりました」

 アイテムボックスから、ベッドを一つ出し部屋の隅に設置した。しかし王女様は一人部屋では無いのか、正直意外だった。

「警護の関係で、旅先では王女様は一人に出来ないの」

「なるほど……あれ? 俺、口に出してました?」

「口には出してませんが、顔に出てました」

 ……侍女恐るべし。……でも逆に言えば、美人で胸大きくスタイルの良い上、良く気がつくと言う事か……。いかん! こんな考え読まれたら……。

 侍女の確か、ファーナさんの顔を見るとこちらを見て微笑んでいた。

「あらあら、もしかして……」

「あ!! あれは!!」

 ファーナさんが、獲物を見つけた猫の様な表情で何かを言い掛けたとき、窓の外を見た王女様が叫び声をあげた。

 何事かと、全員が緊張したとき王女様が振り返る。……物凄い笑顔で。

「さすが日本人! 良くやった!」

「は?」

 呆気に取られるが、王女様は一人急ぎ足で部屋を出て一階に降りて行く。

 慌てて追いかけると、お風呂場の扉を開けていた。

「湯浴みをします。準備を」

「かしこまりました」

 侍女達が、準備の為に早足で離れていく。……王女様は温泉を見つけたらしい。くっ! 一番風呂取られたか。まあ、いいや。御飯支度でもするか。

「お風呂が有ったのですね」

 ファーナさんがすぐ横に来ていた。

「ええ、今朝完成したばかりです。食事の準備をしてますので、ゆっくりどうぞ」

「ありがとうございます」

「ご飯は何でも良いですか?」

「お手伝いします」

「何でも良いので有れば、手伝いはいりません。何か凄いの出せと言われると、手伝って欲しいです」

「何が出て来るのでしょうか?」

「いや、男の一人暮らしの料理ですよ? 期待しないで下さい」

「では、お任せします。楽しみにしてますね」

「……話し聞いてました? 期待しないで下さいね?」

 しかし、自分から言っといて何だが、毒味とか調理の監視とかしなくて良いのかな?

「毒とかは魔道具で、感知出来ますよ?」

「……ありがとうございます。でも恥ずかしいので心を読まないで頂けますか?」

「恥ずかしいから……ですか?」

「ええ、女性に対しての不埒な妄想とか読まれたら困ります」

「男性はそう言うの好きですよね。皆様されてますから、気になさらなくても……」

「グフゥ! ……みんなを代表してごめんなさい」

「クスクスッ……タカ様、面白い方ですね」

「様は必要無いです」

「マリア王女様が、驚く物をお願いします。では、私も失礼します」

「……去り際にハードル上げるの止めて欲しい」

 俺は御飯支度をして、近くにいた、侍女に食べ方を伝えてから、迷宮の家に転移して寝た。



「温泉気持ちいい~」

 王女は温泉を満喫していた。

「まさかここで湯浴み出来るとは、思いませんでしたね」

「肌がツルツルになるわ。良い泉質ね」

「本当ですね……どうなさるおつもりですか?」

「……彼はノホホンとしていて、使えそうに無いわね。黒髪だからって、適当に話しかけたら本当に転移者だったとは思わなかったわ」

「そうですね。突然マリア様と同じニホンゴ?で話した時は驚きました」

「一応、予感みたいな物は有ったのよ? この建物も、この辺の建築様式と違うし。……求められれば保護するつもりだけど、ここでのんびり暮らしたい様だし、放置で良いのではないかしら?」

「かしこまりました。優しそうな素直な方ですね。あの方も何か凄いスキルを、お持ちなのでしょうか?」

「どうかしら? 全ての転移者・転生者がスキルを持って居る訳ではないしね。有ったとしても、生産系のスキルかしら? ……あっ、でもアイテムボックスはかなり大容量みたいね」

「そうでしたね。そろそろ上がりませんか?」

「そうね、食事にしましょうか」

「彼が用意してくれてます」

「えー! 焼いたお肉だけとかイヤよ?」

「その時は私達が、他に何か用意します」

「頼むわね?」

 王女が上がり、リビングに来ると騎士と侍女が揉めていた。

「あなた達、何を騒いで居るの?」

「し、失礼しました」

「申し訳ございません」

「何が有ったの? 説明なさい」

「夕食なのですが……」

「この豚の餌みたいな物を我々に食えと!」

「ですが、あの冒険者様が一生懸命用意された物です」

「落ち着きなさい。その冒険者はどこへ?」

「叩き切ってやる!」

「私は落ち着きなさい、と言いました」

「しかし!」

「おい! 連れていけ!」 

 興奮した騎士を騎士団長が、他の騎士に命じて外に連れ出した。

「それで、この家の冒険者はどこへ行ったの?」

「他の場所で寝るからと、出て行かれました」

「ああ、仕方ないわね。そう言う話しだったし。………豚の餌?はどこに有るの?」

「あちらにご用意して有ります」

 王女がテーブルを見ると、大きな鍋と潰れたパンの様な物、穀物を茹でたものが白と黄色の二種類、茶色い肉を加工したものと、サラダとチーズが用意してあった。

「これは茶色のシチューですか? 焦がしたにしても、ずいぶん茶色ですし……」

「こ、これは……」

 王女は慌てて駆け寄り、一口スプーンで食べる。

「王女様! ……確認は?」

 ファーナが、別の侍女に尋ねる。

「済んでおります。有害物質は感知されませでした」

 ファーナが、話して居る間も王女は皿に穀物と鍋の中の物を泣きながら食べていた。しばらくして落ち着いた王女が少し顔を赤くして、説明する。

「ごめんなさい、恥ずかしい所を見せたわね。これは、カレーと言う異世界の故郷の料理よ。もう食べられないと思っていたわ」

「勇者様の世界の料理ですか!」

「ええ、美味しいわよ食べてご覧なさい。このご飯かサフランライスかナンにこのカレーをつけて食べるの。こっちのチーズとカツはお好みで、トッピングね」

「旨い!」

「美味しい!」

「色々なハーブ?が入っているのかしら?」

「取りあえず、次に豚の餌と言ったらグーで殴るからね?」

「………」

「王女様」

「なにかしら?」

 侍女がコップに、黒色の液体と茶色の液体を入れて持って来た。

「本当は湯浴み後にお出しするように、冒険者様に言付かっていたのですが……」

「さっきので、出しそびれたのね。良いわよ」

「申し訳ございません」

「これは……コーラとコーヒー牛乳? どうやって作ったのかしら? 私はフルーツ牛乳派なんだけど、まあ良いわ。……何かおやつ置いて行かなかった?」

「はい、お預かりしております。良くおわかりになりましたね?」

「何となくね」

「えーと、ポテチとチョコとクッキーとおっしゃってました」

「わかったわ。そのおやつと飲み物を部屋に運んで置いて」

「かしこまりました」

 翌朝、王女が起きると朝食の準備が整っていた。ブッフェスタイルでご飯やパン、玉子焼きにサラダ、スープと味噌汁など様々な料理が所狭しと並んでいた。

「おはよう、冒険者は?」

「おはようございます。……朝早く戻られて、朝食の準備をされた後、出かけられた様です」

「……面倒ごとを警戒して、逃げたわね?」

「どうされますか?」

「………そうね………」




 夕方、依頼を終えてトト村に戻るとまだ豪華な馬車が止まっていた。

「あれ? どうなってんだ?」

 とっくに出発したと思った、王女様達がまだ居る。家を覗くと、王女様がリビングでくつろいでいた。

「やっと帰って来たわね」

「なぜ?」

「あなたを待ってたのよ」

「どうして?」

「一緒にトロアの街に行くわよ」

「え? イヤですよ?」

「駄目よ。これはあなたの為よ」

「………」

「あなたが転移者で有ること、王家に保護され繋がりが有ることを貴族達に伝え、余計なチョッカイを防ぐ事が目的よ」

「王女様……ありがとうございます、そこまで考えてくれたのですね」

「感謝してね。………そして、醤油、味噌、カレー粉を王家に献上して」

「おい!」

「仕方ないじゃない! 久しぶりに食べた、前の世界の味は美味しかったのよ!」

「だからって、それは無いだろう」

「ここに住もうかと思ったわ」

「あ、ごめんなさい。すぐ献上するので、それは止めて下さい」

「ちょっと! こんな美人が一緒に住むかもって、言ってるのになによ! ……まあ、他の人にも止められたわ」

「でしょうね」

「とにかく、明日はトロアの街に一緒に行くわよ」

「………わかりました」

 ちなみに晩ご飯は、焼きそばとお好み焼きを作らされた。そして、ソースの献上も約束させられた。




 翌朝、朝食を食べて準備を整え、村の外に集合した。

「あなた、歩いて行くの?」

「はい、何か問題でも?」

「全員騎兵と馬車なのよ? ついてこれるの?」

「ええ、大丈夫です」

「……変ね?」

「何がですか?」

「家に馬小屋も有ったのに、馬を持って無いの?」

「作るだけ、作ってみたんです。事実馬は居なかったでしょう?」

「そうね……ファーナ、どう思う?」

「嘘では有りませんが、本当の事を素直に話して居る訳では無さそうです」

「やっぱりね。ほら、出しなさい」

 完璧にバレてるね。ファーナさんを見ると、王女様の後ろで小さく謝ってる。……よし、可愛いから許そう!

「冒険者は余り、手の内をさらす物では無いのですが……」

「いいから、出しなさい」

「ハイ、ハイ」

 俺が渋々アイテムボックスから、シルバーを出した。辺りから……特に騎士達からどよめきが起こる。

「馬型ゴーレムのシルバーです」

「また凄いのを出したわね。ブロンズゴーレム? しかも、スレイプニル?」

「姫様……あの足をご覧下さい」

 騎士団長が少し顔色を悪くしながら、王女様に話しかける。

「あれは……魔道具? 全部の足についてるわね。あの魔道具はたしか……」

「偽装かと」

「そうだったわね。何を偽っているのかしら?」

「マリア様、ここを見て下さい」

 ファーナさんが、少し興奮した様にシルバーの背中を指差した。

「この形状、きっと馬車をひけるに違いありません。凄いですよ」

「……出してもらえるかしら?」

「王女様、冒険者は……」

「出してもらえるかしら?」

「ハイ、ハイ」

 俺はオプションの馬車を出して、シルバーに装着した。

「ブロンズの馬車?」

「小さいですね、一人乗りでしょうか?」

「あの魔道具は何を隠しているのかしら?」

「王女様、なぜそこまでしなければならないのですか?」

「あの私も見たいです。お願い出来ませんか?」

 ファーナさんが、俺の腕を抱えて可愛くお願いしてくる。何かが、俺の腕を優しく包んだ。

「…………仕方ないですね。シルバー、解除してくれ」

「かしこまりました」

「しゃべった?!」

 シルバーが銀色の輝きを取り戻した。

「これは、銀か?」

「この輝きはミスリルね?」

「そうですね。シルバーはミスリルゴーレムになります」

「バカな! これほどのミスリルなど、有ってたまるか!」

 騎士の一人が、突然怒り出し文句をつけてきた。

「信じてくれとは言いませんよ?」

「我らを騙す積もりか!」

「騙すも何も、見せろと言ったのは王女様ですよ?」

「冒険者風情が、調子に乗りおって!」

「落ち着きなさい!」

「しかし!」

 王女様が騎士を諫めるが、騎士は興奮し聞く耳を持たない。騎士団長が他の騎士に命じて、どこかに連れて行った。

「……やはり、これが貴族か」

「ごめんなさい。でも誤解なさらないて下さい。あの様な貴族も確かに居るのですが、この国では極少数で、他の貴族は素晴らしい方ばかりです」

「そうですか?」

 俺が疑問で首を傾げて居るところへ、騎士団長がやって来た。

「タカさんだったな? あの、ゴーレムはどうするつもりだ?」

「どうするとは?」

「あれは王家に献上した方が、良いのではないか?」

「……見せろと言って、良いものだとわかると、今度は献上しろと?」

「いやいや、違うんだ。良いものと言うより良すぎる物だろう。ミスリルの剣一本でも、上級貴族の家宝になる位なのに、馬丸々なんて大国が一つ買えてしまう。そんな物を所持していても、良いことよりトラブルの方が多いだろう? それなら、手放してしまった方が良いと思うんだが?」

「出来ませんね。シルバーは既に俺の仲間です。売れません」

「……ちょっとタイミングが悪かったか。また、後でな」

「ちょっと、なによこれ!」

 王女様が馬車の中を覗いて、叫んでいる。結局、王女様はシルバーの引く馬車にしばらく乗り、トロアの街が近づいたら、自分の馬車に乗る事になった。道中あの怒っていた騎士が、近寄ってきてシルバーと馬車を売れ、寄越せと五月蠅かった。無視したが。

 騒がしくても馬車は順調に進み、トロアの街が見えてきた。王女様は自分の馬車に戻って居て、俺は馬車をしまいシルバーに乗った。先触れを出してある、との事で街道にある門の所には出迎えの者が大勢来ていた。

 しかし、少し騒がしい、何か有ったようだ。近寄るに連れ、言い争う声が聞こえて来た。

「間もなく第三王女様がいらっしゃる」

「だから、何回も同じ事言わせるな! ゴブリンが森からあふれて、ここに向かってんだよ! 門を閉めて迎撃の準備をしないと! 街を危険に晒す気か?!」

 どうやら街に、ゴブリンが近づいて来ているらしい。それで、冒険者と街の門番が揉めているようだ。そこに、冒険者ギルドの応援と領主の私兵とが合流し、混乱している。さらにこの王女様の一団が到着。大混乱となった。

「時間かかりそうだなぁ……騎士団長様、ゴブリンが来るそうですから、一応王女様を中心に密集防御体制を取っておいては?」

「仕方ない。全員集まれ! 防御陣を組め!」

 俺の意見を取り入れ、すぐに騎士団長が動いた。流石に王族を守る騎士団達だ、素早く体制を整える。そこへ、ゴブリン達が姿を見せた。まだ距離が有るが、どこからか街道に出たらしく、道を走って来る。

「ゴブリンが来たぞ!!」

 その数は、数百匹は居るかと思われた。ここでやっと、人間達が動きだす。冒険者達は攻撃の為に前に出て、領主の私兵は市民と門を守る。遅れて市民等の非戦闘員が、街中に逃げようとしていた。

「タカ?」

 馬車の中の王女様が小窓から顔を出し、話しかけて来た? 名前呼ばれたの初めてかな?

「ここにいます。何ですか?」

「貴方も冒険者なら、ゴブリンぐらいとなら戦えるのよね?」

「はい。ゴブリンなら倒した事、有りますよ」

「では貴方が戦って居るところ見てみたいの、行って来てくれるかしら?」

「わかりました。そのかわり、もし他の冒険者から獲物をとられたと揉めたら、助けて下さいね?」

「いいから、早く行きなさい」

 王女様に急かされ、馬車を離れてシルバーに乗ったまま冒険者達の前に出る。ゴブリンはもう少しでここまで来るだろう。

「おい! 一人で前に出ると危ないぞ!」

「タカさん! 流石に数が多すぎます! 下がってみんなと一緒に戦って下さい!」

「あれ? ギルドマスターとソフィアさん? 居たんですね。王女様のお出迎えですか?」

「違います! ゴブリンの迎撃です!」

「そうでしたか、数が多くて面倒ですね。雷系の魔法で、数を減らしますから残ったのは早い者勝ち出良いですか?」

「え? ええ、それはいいけど……」

「ピカピカしますから、目に気を付けて下さい」

「全員! 閃光に気を付けろ! うち漏らしたゴブリンを迎撃する! 魔法使える者はタイミングを合わせろ!」

 数名の魔法使いが、慌てて詠唱を始める。

「では行きます。サンダーレイン!」

 視界を埋め尽くさんばかりのゴブリン達だったが、それ以上の雷の雨が降り注ぎ全てのゴブリン達を飲み込んだ。閃光と轟音が辺りを支配し、凪払う。

 雷の雨が収まった時、生きていたゴブリンは上位種と思われる、大柄な個体が三匹のみ。

「三匹残ったか、行くぞ! シルバー!」

 かけ声に反応し、シルバーが弾丸の様に飛び出した。ゴブリンの死体を飛び越え、生き残ったゴブリンに迫る。少し手前でジャンプして、ひざを突くゴブリン上に着地、踏み潰す。その隣のゴブリンが立ち上がろうとするが、それより早くシルバーが頭を後ろ足で蹴り砕いた。

 残った最後のゴブリンを、俺が馬上から虎鉄で切り捨てた。もう、生きているゴブリンは居ない。

 そして唖然として、俺を見つめる人達。

「あれ? 早い者勝ちっていいましたよね?」




 あの後大変だった。全員が騒ぎ出し、一種のお祭り騒ぎになった。どうやら使った魔法が悪かったらしい。宮廷魔導師や賢者と呼ばれる、大魔法使いが頑張って頑張って、何とかストーム系の魔法を使うのが限界。レイン系の魔法は、伝説やお伽話にしか出てこない非常識な魔法の扱いに成っていた。

 あまりの五月蝿さと面倒臭さに、そろそろ物理的に黙らせようかと思い始めた時、王女様が一喝し場をおさめてくれた。

 関係無い連中を帰し、ゴブリンを片づけた。その上で、関係各所のお偉いさんが領主の館に集まった。……俺は帰ろうとしたが、捕まって連れてこられた。ここにいるのは、領主と領主私兵団長、王女様と騎士団長とファーナさん、ギルドマスターとソフィアさん、そして俺だ。

 可愛いメイドさんが、お茶を置いて部屋を出るとまずは俺から話す。

「では……そろそろ俺帰りますね?」

「駄目に決まってるでしょう? 何言ってるの。……ゴードン辺境伯は、この冒険者を知っていて?」

「いえ、知りません。マリア王女様が連れてこられたのでは?」

「違うわ。私はあの村………」

「トト村です」

「そう、トト村で見つけたの。この辺で活動していたはずよ。そうよね? ギルドマスター」

「そうなりますな」

「ギルドは、もちろんこの冒険者を知っているわね?」

「はい、冒険者ギルドの新人になります」

「では、あのバカみたいな戦闘力も把握してたの?」

「強い事は把握してます。しかし、冒険者の性質上能力の全ては分かりかねます」

「なるほど、それもそうね。では、転移者……と言うのも把握していた?」

「本人に確認したわけではありませんでしたが、恐らくそうであろうと想定はしてました」

「え?! ソフィアさん、いつから?」

「登録したときですよ、タカさん」

「最初から?! 何で?!」

「貴族並みの高い教養を持って居るにもかかわらず、この世界の常識を持っていない。それは転移者の特徴です。その上、理解出来ない程の能力。隠したい様子でしたので、聞きはしませんでしたが、転移者だと思っました」

「クッ! なんてこった……俺の苦労は無駄だったのか」

「残念だったわね。それで、ギルドは何故王家に報告しなかったの? 王家が転移者や転生者を保護しているのは知っているはずよね?」

「知っては居ますが、報告の義務はギルドにありません。それに、保護は本人が困って居る場合や望んだ場合に適用される物であり、本人が望んでいない時はその意志が尊重されると聞いております」

「それは……」

「本人が困っていれば、王家への報告及び保護の申請や当人への保護の勧めも致します。しかしタカさんの場合、能力的にもお金にも困っていませんでした。その上この地域で、自分のペースで冒険者をしながら暮らす事を望んでいました。保護が必要とは思えません」

「むう……」

 王女様がソフィアさんに、追いつめられて居る。それを見かねて、領主がソフィアさんに声をかけた。

「副ギルドマスター、話はわかるがマリア王女様に対し失礼でないかね?」

「ええ?! ソフィアさんって副ギルドマスター何ですか?!」

「はい、そうですよ?」

「し、知らなかった……」

「話が進まないから、少し黙ってくれる? 私に対する失礼とかは、気にしなくていいわ。常識さえ守ってくれればね。それに元々、ギルドは独立組織だし」

「ありがとうございます」

「まあ、冒険者ギルドの言い分はわかったわ。それでも、はいそうですかと、無視するには大きすぎる力よね?」

「しかし……」

「ギルドも全ては把握してないのでしょう?」

「それは、そうです」

「では、そこから始めましょう。と言う訳で、ステータスを見せなさい」

「何が、と言う訳で、だよ。何故俺がそんな事をしなければならない」

「ちょっとぐらい、良いじゃない。減るものじゃあるまいし、あなたの力を確認しておきたいのよ」

「確認すれば後悔するだろう。俺の力はお前等の想像のはるか上だ。それでも力が見たいのなら、物理的に見せようか?」

「お待ち下さい、タカ様。その様な事を言っている訳では無いのです。我々は安心したいのです」

「ファーナさん。俺には何を言っているのか、わかりませんよ? あなた方は、強い冒険者や騎士に何故強いのか、その種を聞いて歩くのですか? 冒険者や騎士がそれを、話すのですか? あなた方のそれは、ただ己の好奇心を満たそうと、他人の秘密を暴いている様にしか見えない」

「………ごめんなさい……」

「いや、許しませんよ? しかし、最大の秘密はバレてしまいました。どうしても、と言うのであれば教えましょう」

「ほ、本当ですか?」

「はい。ただし、他の人に少しでも伝えたり、話たりすればこの国を殺します」

「国を殺すだと?」

「ああ、国を滅ぼし人が残るんじゃない。この国の全ての人を殺す」

「馬鹿な! そんなこと出来る訳がない!」

「ほぅ? 試してみるか?」

「貴様!」

「抑えろ。……何故その様な事を言うのかね?」

 怒りを見せる私兵団長、たしなめて領主の辺境伯様が問うてきた。

「おかしいと思いませんか?」

「なにをかね?」

「ステータスを根掘り葉掘り、聞いてくる事がです。辺境伯様は村人のステータスを、聞きますか?」

「いや、聞かないな」

「そうですよね? でも、敵対している軍のステータスなら知りたいと思いますよね?」

「それは……そうだな。ステータスがわかれば、対策も取りやすくなる。上手く弱点を攻めれば、格上の相手でも倒せるだろう」

「ステータスを知りたがる、と言う事は敵対行動と変わらないと思いませんか?」

 辺境伯様は考え込んで、黙ってしまった。

「しかし、味方のステータスも聞く時はある! 俺は部下のステータスも、ある程度把握している! でないと、仕事を任せられん!」

「ふざけるなよ? 俺はお前の部下ではない。お前は応援に来た、他の人間にステータスを聞くのか? 例えば、この街の危機に駆けつけたそこの騎士団長に、何が出来るかわからないから、ステータスを見せろと言うのか?」

「…………」

 出来ないのだろう、今度は私兵団長が黙り込む。しかし、すぐに横に居た冒険者ギルドマスターに助けを求めた。

「ギルドマスターからも言って頂けませんか?」

「儂から、何を言えと?」

「こいつは冒険者ギルドの人間でしょう?」

「ふむ……兵団長は何か勘違いしとらんか?」

「勘違い?」

「冒険者ギルドは冒険者の為の組織だ。何故、権力をひけらかして無理を言う、王族貴族の味方をせねばならん?」

「我々がいつそんな事をしましたか?!」

「先程からずーっとしとるだろう。冒険者は基本自己責任だから、本人が話す分には何も言わん。しかし、正直面白くないな。冒険者はスキルやステータスを聞くのはご法度だ。辺境伯様が言った通り、弱点を晒す事に繋がるからな。大体、世間一般でもマナー違反だろう。犯罪者の尋問ならまだしも、街の防衛に貢献した恩人にする事とは思えん」

「そ、それは……」

「そもそも、誰か感謝を述べたか? 儂は見とらんぞ? 冒険者や平民は、王族貴族を助けて当たり前か? 命令を聞いて当たり前か? ハッキリ言って、この国には失望した」

「…………」

 今度こそ、私兵団長が黙り込む。誰も何も言えないかと思ったが、王女様が口を開いた。

「それでも私は知りたいと思うわ。さっきはごめんなさい。自分でも気がつかないうちに、傲慢に成っていたみたい。改めて、頼みます。ステータスをどうか見せてくれないかしら?」

「……約束は守ってもらう。それでも良いのか?」

「私は大丈夫よ。……覚悟のない者はここから出なさい。何かあれば、この国が滅ぶわよ」

「兵団長、君は出ていなさい。その方がいい」

「辺境伯様……了解しました」

「ソフィアも外で待って居てくれ。儂が見届けよう」

「わかりました」

「ファーナも出ててくれる?」

「はい、王女様」

「カイル騎士団長はどうする?」

「私は残らせて頂きます。王女様の護衛は外せませんので」

「まあ、いいわ」

 三人が出て行った。ドアが閉まると同時に、結界を張って覗き見を防止する。

「これは結界か? これほどの物を無詠唱とは………」

「さて、皆さん覚悟は良いですか? 世の中には知らなければ良かった、と思う事が有るのですよ?」 全員が頷くのを待って、俺はステータスを出して全員に開示した。普段は本人にしか見えないがやろうと思えば、見せる事もできた。


タカ 十五歳 異世界人 男 LV902

職業:無職 状態:普通

HP:99999/99999 MP:99999/99999

力:9999 体力:9999 知力:9999 魔力:9999 敏捷:9999

所持スキル:アイテムボックス 鑑定LVMAX 異世界言語 魔導錬金術LVMAX 体術LVMAX 刀術LVMAX 全属性魔法LVMAX 取得経験値増加LVMAX 詠唱短縮LVMAX テイミングLVMAX 隠身LVMAX 気配感知LVMAX 詠唱破棄LVMAX 盾術LVMAX 魔力精密操作LVMAX 見切りLVMAX MP高速回復LVMAX 罠感知LVMAX 罠解除LVMAX 縮地LVMAX 先読みLVMAX 並列思考LVMAX 魔闘法LVMAX 気闘法LVMAX 暗視LVMAX 無詠唱LVMAX 多重並列詠唱LVMAX 状態異常耐性LVMAX 状態異常無効LVMAX 格闘術LVMAX 剣術LVMAX 槍術LVMAX 斧術LVMAX 双剣術LVMAX  

ステータスポイント:901 スキルポイント:874

従魔:ポチ(シルバースライム) シルバー(ミスリルゴーレム)

加護:戦神の加護(戦神のブーツ) 闘神の加護(闘神の篭手) 魔法神の加護(魔法神の冠) 剣神の加護(剣神の剣) 武神の加護(武神の鎧) 光神闇神の加護(光神闇神の双盾) 炎神の加護(炎神の剣) 雷神の加護(雷神の剣) 竜神の加護(竜神のマント)



 全員の視線が、俺のステータスに釘付けになった。まあ、俺のステータスは少し変かも知れない。驚くのは無理もない。

「あ~どこから、突っ込めば良いのか分からん」

「これは本当のステータスか?」

「こんな物わざわざ偽らん。順番に説明するから、聞いてくれ」

 俺はこの世界に来てから、迷宮を攻略しこの街にたどり着くまでを簡単に説明した。

「ダンジョン踏破者か……しかも、百層とは恐れ入った」

「このスキルレベルのMAXとは? スキルレベルの最高は5では?」

「スキルレベルの最高は10だ。10になるとMAXと表示される。これは色々、武器術を取得して確認したから、間違い無い」

「まだまだ、上が有るのか」

「そんな事より!」

 今まで驚いたまま固まっていた王女様が、突然声を張り上げた。

「この加護って、何か分かって居るの?」

「加護は神の名の付いた、特定の道具を手に入れると付与されるらしいな」

「それって神器って事よね?」

「そうかもな」

「……どれか見せてもらえるかしら?」

「良いだろう。……カグツチ」

 俺が名を呼ぶと、炎を纏った神剣が現れる。後から分かった事だが、各神器は所有者の意志に反応して形やサイズを変えれる様だ。

「触るなよ? 神をも殺す神炎だ。人間なんて、触れただけで消し飛ぶぞ?」

「判ってるわよ。……もう良いわ」

 王女様の疲れた感じの言葉を受け、カグツチを体内にしまう。

「正に、レベルが違うわね。まさかここまで酷いどは思わなかったわ。本当はね、あなたがいくら凄いとしても私の神器の力が有れば、何とかなると思っていたの」

「神器ですか?」

「ええ、私の神器は女神の水瓶。水を操り、魔物を寄せ付けない聖水を生み出すの。でも、武器では無いのよね。魔物や普通の人相手なら、数百と居ても負けないわ。しかし純粋に武器の神器と比べると、宿っている力の量が桁違いだわ。水と炎の相性的な有利など、問題にならないぐらい力の差が有るわね。勝てる気がしない」

「残念でしたね」

「本当に残念だわ。上手く行けば、あなたを私の配下に出来るかと思ったのに」

「悪いが俺は自由に生きる」

「でしょうね。後は………お婿さんにもらう位かしら?」

「悪いが俺は自由に生きる」

「ちょっと! こんな美少女と結婚出来るのよ?! 迷わず否定とか、おかしいでしょう!」

「確かに美少女だけど、自分で言うなよ。王女様と身元不明の冒険者が結婚とか有り得ないだろ」

「建国の祖となった、勇者は転移者よ? 転移者でそれだけの力を持った、あなたなら有り得ると思うけど?」

「いや~無いな」

「では、うちの娘と結婚するかね?」

「いや、辺境伯様の娘とかあまり変わらないでしょう。王族貴族のご令嬢なんて、冒険者と結婚するのは現実問題無理ですね」

「そんな事は無いと思うが?」

「俺の結婚の話はいらないです。他に特に無ければ、もう帰りますが良いですか?」

「ああ、部屋を用意するから、泊まって行くといい」

「辺境伯様、お気持ちだけ頂いておきます。今日は、王女様が泊まられるのでしょう? 身元不明の不審者は、居ない方が良いかと」

「……そうか、分かった。また、会おう」

「失礼します」

 俺は結界を解除して部屋を出ると、自分の家に帰った。


「……何といいますか、鏡の様な人ですな」

 辺境伯がポツリと呟いた。

「鏡ですか?」

「ああ、敵意を向けられれば攻撃し、優しくされれば優しくする。それをより顕著にした印象だ」

「なるほど、言われて見れば」

「しかし、それだけに気をつけねば。彼の言葉に嘘は無いだろう。また、本当にこの国を滅ぼすぐらいの力は有りそうだ」

「それは間違い無いわね。あの神剣の一振りで、この街は跡形もなく消し飛ぶわ」

「対応を間違えると、と言う事ですね」

「そうね。幸い彼自身は、どちらかと言うとお人好しの部類だと思われるわ。こちらが変な事さえしなければ、無害じゃないかしら?」

「そうですね」

「あ、お人好し過ぎて、悪い女とかに騙されたりしないかしら?」

「……………」

 全員が顔色悪く押し黙った。




 翌朝、朝食を済ませ教会にお供え物をしてから、家の片付けをした。結構な人数が泊まったからね。いらなくなった、ベットや寝具を綺麗にしてから、アイテムボックスにしまっていく。風呂やトイレも清掃して、使わない物は片付けた。

 家の掃除が終わった後、森に行きゴブリン狩りをする事に。昨日あれだけ倒したにも関わらず、いつもと同じぐらいのゴブリンが居る。……こいつら、本当に害虫並みの繁殖力か? ゴブリン一匹で、卵何百個も産むとか言わないだろうな?

 ちょっとバカな事を考えながら、ゴブリンを狩り続け、途中昼ご飯を挟んで更に狩って行った。

 夕方前に切り上げて、トロアの街の冒険者ギルドに来た。いつもの様にソフィアさんに報告と買い取りをお願いする。……それにしても、今日はいつも以上に騒がしい。何だろう? しかも、俺を睨んでる奴も居るな……。ぶん殴ってやろうか? ……と考えた瞬間、全員目線をそらした。本当に、何なんだろう?

「あのタカさん、ジロジロ見られてイライラするのは分かりますが、先程から殺気が漏れてます。そろそろ、受付嬢が気絶するので止めて頂けませんか?」

「ん? それは失礼」

 少しイラッとしただけで、殺気を漏らしたつもりは無かったが、気配を抑えると周りはあからさまにホッとした感じになった。

「タカさん、ギルドマスターがお呼びです。今お時間は大丈夫ですか?」

「大丈夫だけど、何か?」

 俺がソフィアさんに、ついて行こうとすると後ろから声が掛かった。

「おい待て、クソガキ!」

 振り返ると筋骨隆々の戦士タイプの男が五人、近づいて来た。

「何のようだ?」

「あなた達、止めなさい!」

「ソフィアさん、あんたは黙っててくれ」

「俺達はお前の様なクソガキは認めねぇ!」

「馬鹿か? 何の用か、聞いている。しかも、お前等に認めてくれなどと、言った事は無い」

「生意気な!」

「表に出ろ!」

「何だこいつ等は? 喧嘩を売りたいのか? 面倒くさい、五人纏めてここで来い」

「ぶちのめしてやる!」

 俺の挑発に簡単に乗り、拳を握り一歩前に出た瞬間、崩れ落ちる。全員気絶した様だ。武器は抜かなかったので、手加減して殴っておいた。

「あ~だから、止めなさいと言ったのに…………殺してませんか?」

「いや、相手も武器は抜かなかったし、かなり手加減してゆっくり突っついただけだ。しかし、何なんだ? 意味不明な事を言っていたが?」

「それについても、ギルドマスターが説明してくれます」

「?」

 首をひねりながら、ソフィアさんについてギルドマスターの部屋に行く。

「良く来たな」

「お呼びと聞いて。何か有りましたか? 下に変なのが居たんですが?」

「さっそくか? 実はな、お前さんにトロアの冒険者ギルド最強説が流れていてな」

「噂の類いですか?」

「それが、昨日魔法を見た者も多く、かなり広まって居る。事実だしな」

「そうですか? 探せば他にも居ませんかね?」

「ステータスを見せてもらう前なら同意出来たが、今は無理だな。この街どころか、間違い無く世界最強だろう」

「隠れた強者と言う者は、居るものですよ?」

「それでも限界はある。諦めろ、あの魔法は目立ち過ぎた」

「仕方有りませんね。ミスをしたのは俺ですし。話はそれだけですか?」

「いや、ここからが本番だ。強者とバレてしまった上、ゴブリン退治の実績まで作ってしまった。冒険者ランクを、そのままにしておく訳にはいかん」

「駄目なんですか?」

「ランクの信頼が無くなるからな。強い奴にも弱い無名の時はあるから、知らなければ何とかなるが、知られているのに低いランクのままには出来ん」

「そうですか、それも仕方ないですね」

「ひとまず、儂の権限で上げられる最高のBランクに上がってもらおう。本当なら、SSSでも良いぐらいだが、強さのみで上がれる最高位がBランクだ。A以上のランクに上がるには、強さ以外にも信頼と実績と人柄などが必要になる」

「へ~では、Sランクより強いBランクとかも居るんですか?」

「単純な強さのみなら一応、居る事は居る。しかし、それ以上に強い奴も居るからな、余り意味はない。第一、いくら強くとも信頼の無い奴に仕事を任せようとする者は少ない」

「なるほど」

「ギルドカードです」

 ソフィアさんが、買い取りの時に預けたギルドカードを持ってきてくれた。確認するとランクはBになっていた。

「ありがとうございます」

「これからも頑張って下さい」

 これで、Bランク冒険者か。良いことなのか、悪い事なのか分からないが、なるようにしかならないだろう。これは諦めるしかない。

 俺は少し憂鬱になりながら、家に帰るのだった。



 トト村に着くと、また村が騒がしい。今度は一体何だろうか? 村人達は、みんな俺の家の方を見て様子をうかがって居るようだ。しかし、俺の家にはポチの分体が居る。泥棒などは入れないはずだけど?

「……い…………さ……」

「…しろ! ……………………………もえ!」

 家ではなく、横の馬小屋の方から言い争う声が聞こえて来た。人の家で何やってんだ? 近づくに連れて、話の内容が聞こえてくる。

「お願いです、放して!」

「黙れ! この俺が抱いてやると言ってるんだ、大人しくしろ!」

「止めて!」

「そのうち、もっとして欲しくなる」

 こんな所で強姦か? 馬小屋の中を覗くと、あのシルバーを寄越せと五月蝿い騎士がエリーの肩を抑えて、服の上から胸を揉んで居た。

 なんてうら………いや、けしからん。

「おい、人の家で何をしている?」

「ん? なんだ帰って来たのか。まあいい、話が有る。少し待ってろ」

「助けて!」

「助けて、と言ってるぞ? エリーと結婚するのか?」

「何を馬鹿な事を。しばらく遊んだら、売るか捨てるかだ」

「そうか」

 俺は、奴の手足をへし折った。

「ギャアアアア!」

 のたうち回る騎士を無視して、エリーを助け起こす。

「大丈夫か?」

「は、はい」

「今日は、どうしたんだ?」

「お母さんが、だいぶ回復して来たの。それでお礼を言いに……」

「良かったじゃないか。ところで、そこで転がっている騎士と……」

「何も有りません! お礼を言うために、家に来たら誰も居なくて。馬小屋から物音が聞こえたから、ここに居るのかもって覗いたら突然襲われてしまって」

「なんだ、空き巣か? こいつにどうして欲しい?」

「実際には胸を触られたぐらいで、何も無かったので、もう近寄って来なければそれで大丈夫です」

「そうかい?」

 俺は、騎士の手足の関節を砕いた。

「ギャアアアア!」

「おい! 財布を出しな!」

「き、貴様!」

「お? 余裕だね? もうニ、三本骨折るかい?」

「ま、待て! 腰の所の袋だ!」

 確認すると、金貨と銀貨入っている袋が有った。腰から袋ごと外して、そのままエリーに渡す。

「え?」

「迷惑料かな? 受け取って」

「こんなに受け取れません!」

「もらえないってよ。やっぱり手足や首を切り落とすか?」

「待て! 頼む! 持って行ってくれ!」

「わ、わかりました」

「こ、これで、良いだろう! 早く回復を!」

「そのまま、待ってろ。……家まで送ろう」

「いいんですか?」

「ま、待ってくれ! 痛くて死にそうだ!」

「しばらくそのままで、反省しろ」

 俺はエリーを家まで送って行った。家に着くと、エリーの母親が出迎えてくれた。エリーぐらいの子供が居るとは思えない、若々しい美女だ。

 正直名残惜しいが、あの馬鹿の処理をしなくてはならない。オーク肉や野菜、小麦粉と塩などを置いて身体をいたわり、体力を戻す様に伝えて帰った。………おのれ、プライベートでの美女との出会いなど、そうそう無いのに! あの馬鹿のせいで!



 家に戻ると、あの馬鹿は気絶していた。静かでちょうど良い。俺は後ろ襟を掴んで、引きずりながら村を出た。途中少し転移して、トロアの街の近くまで来た。

「おい! 止まれ!」

 門番が慌てた様に声を掛けて来た。

「どうしたんだ?!」

「トト村の俺の家に盗みに入ったこそ泥で、取る物が無いからと、村の女の子を強姦しようとしてたんだ。取りあえず手足をへし折って、捕まえたんで連れて来たんだ」

「泥棒か?」

「ああ、こいつの仲間が辺境伯様の屋敷に居るから、呼んでくれないか?」

「辺境伯様の屋敷に?!」

「こいつ王女様の護衛騎士の一人だ」

「なに!」

 厄介事の雰囲気に、門番達の動きが鈍くなる。……まあ、気持ちは分かるが早くして欲しい。

「じゃあ、直接連れて行くから通してくれ」

「……良いだろう。兵の中から二人程同行させてもらうが、かまわないな?」

「好きにしてくれ。あと、嘘を見破る魔道具は借りられないか?」

「ここにもあるが、持ち出す事は出来ない。辺境伯様の屋敷にもあるから、聞いて見ろ」

「なるほど」

 俺は騎士を引きずりながら、歩き出した。

「ま、待て。その、何と言うか、その人は引きずるのか?」

「ん? 手足をバラすとか、首だけで良いとか、そう言う事か?」

「ちげーよ!? 何さらっと殺そうとしてんだよ!?」

 結局引きずったまま、辺境伯様の屋敷についた。ボロボロの騎士を引きずって現れた俺に慌てて居たが、騎士団長を呼んで欲しいと頼むと直ぐに一人中に走って行った。

 しばらく待つと、王女様、辺境伯様、騎士団長、ファーナさんが現れた。

「呼んだのは騎士団長だけなんですが?」

「細かい事は気にしなくていいわ。どうしたの?」

「こいつの事だ」

 俺は泥棒騎士を四人の足元に転がした。

「トラル!」

「酷い怪我をしています! 回復魔法を!」

「待ちなさい! ……説明してくれるのよね?」

「ああ、こいつは俺の家に泥棒に入ろうとして失敗し、その腹いせにたまたま現れた村の娘を強姦しようとしていた」

「馬鹿な! 近衛騎士ともあろう者が、そんなまねするはずがない!」

「騎士団長、あんたの見る目が曇って居るんじゃ無いのか? あの感じだと、初めてではなく何度もやっている様子だったぞ?」

「証拠はあるの?」

「全部未然に防いだからな、証拠は無い」

「だったら………」

「だが、ここには嘘を見破る魔道具があるんだろう? 貸してくれないか?」

「偽証の宝玉か? 有る事は有るが……」

「辺境伯持って来てくれるかしら?」

「王女様、よろしいのですか? 近衛騎士が不利になるかも知れませんが?」

「かまわないわ。事の真相を知らねばなりません」

「わかりました」

 辺境伯様の指示で、この場に水晶球の様な物が運ばれて来た。

「これが偽証の宝玉だ。触りながら話せば、その者が嘘をつけば光る」

「なるほど、試してみても良いですか?」

「どうぞ」

 俺は宝玉に軽く手を乗せた。

「俺はかわいい女の子は嫌いだ」

 宝玉が淡い光を放った。

「おお! 凄いなぁ」

「………分かるけども、他に無かったの?」

 何故か残念な者を見る様な目で見られた。

「俺は本当は鳥なんだ」

 宝玉が淡い光を放った。

「うむ、きちんと作動するようだ」

「やり直しても、無かった事にはならないわよ?」

「ごめんなさい。……改めて、この騎士が俺の家に盗みに入ろうとして失敗し、たまたま来た村の娘を強姦しようとしていた。そこを発見し、手足を砕いて連れて来た」

 宝玉は光らない。

「本当なのね………」

「馬鹿な………」

「次はこいつだ」

 魔法で作った水を頭からかけて、ボロボロの騎士を起こす。

「グウゥゥ!」

「起きたか?」

 手足をへし折って、関節を砕いたため動かない腕を宝玉の上に乗せた。

「答えろ。お前は何をしに俺の家に来た?」

「行ってない!」

 宝玉が淡い光を放った。

「王女様! 騎士団長! 助けて下さい!」

「シルバーを盗みに来たんだろ?」

「騎士団長!」

 砕いた関節を軽く蹴飛ばす。

「グアァァ!」

「答えは、はいかいいえだ。シルバーを盗みに来たのか?」

「いいえ!」

 宝玉が淡い光を放った。

「村の娘を強姦しようとしたのか?」

「いいえ!」

 宝玉が淡い光を放った。

「過去に何度も娘を誘拐し強姦して、殺したり売りさばいたりしているな?」

「いいえ!」

 宝玉が淡い光を放った。その光を見て王女様が、騎士団長を詰問する。

「これはどういう事かしら?」

「それは……」

「どうして、この様な者が私の護衛に居るのかしら?」

「何かの間違いでは……」

「騎士団長、あの魔道具は当家の物です。間違いなど有りません」

 辺境伯様が、騎士団長の言葉を否定する。

「まさかとは思うけど、近衛騎士とはあの様な者ばかりなのかしら?」

「その様な事は有りません!」

「ではなすべき事をなさい!」

「失礼しました! おい! 捉えて連れていけ!」

「ハッ!」

 騎士団長の指示で、周りで見ていた他の騎士が奴を連れて行く。

「他に関わった者がいないか調べるのと、被害者の救出。貴族や一般兵まで含めて素行調査。この様な事柄は我が国の恥と知りなさい。即座に実行し賄賂やお目こぼしは許しません。すぐさま処断なさい」

「ハッ! かしこまりました!」

 騎士団長、自らも指示を出す為にどこかへ走って行ってしまった。

「へ~」

「不思議かね?」

 騎士や王女様の動きを眺めて居ると、辺境伯様が話し掛けて来た。

「正直、意外でした。あの騎士を軽く処罰して終わりかと思いましたので」

「我が国は、女神に認められた勇者を初代国王として起こった国だ。王家、貴族、騎士や兵士などは、強く高潔であれ、と定められている。中には悪い奴や腐った奴も居るが、大半は真面目で公正な者が多い。先程の騎士団長の言葉も、仲間を信じた上の言葉だ、許してやって欲しい」

「辺境伯様が気にする程の事では有りませんよ」

「そうよ。それよりもその村娘は大丈夫なの?」

「服の上から胸を揉まれたぐらいだな」

「胸ぐらい、じゃないわよ! 乙女の胸を何だと思ってるの!」

「俺じゃなくて、あいつに言えよ。……取りあえず、どうして欲しいか聞いたが未遂だったから近づかなければ、それで良いらしい。迷惑料として、あいつの持っていた財布をそのまま渡した…………良いよな?」

「大丈夫よ。……う~ん、それならまだ、マシかしら?」

「後はあいつがトト村に行かない様に、気をつけてもらえば村娘の方は大丈夫じゃないか?」

「分かったわ」

「一応言っておくが、俺の所に来たら……」

「その時は切り捨てて良いわ。と言うよりも良く殺さなかったわね?」

「それこそ未遂だったし、王女様の騎士だから少し気を使ったんだよ」

「そうなのよね。この私の騎士なのよね。………こんな事二度と出来ない様に、あの部分を踏み潰してやろうかしら?」

 おぉう……他人事ながら、縮み上がってしまい、腰が引けてしまう。

「クスクスッ」

 ファーナさんに笑われた。また心を読まれたらしい。

「それじゃあ、俺そろそろ帰って良いかい?」

「ええ、この埋め合わせは後日必ずするわ」

「あ、いえ、結構です」

「……何でよ?」

「王女様の埋め合わせなんて、新たなトラブルの種にしかならない気がする」

「失礼ね! 私をトラブルメーカーみたいに、言わないでくれるかしら?」

「ハイハイ。では、帰ります。失礼しました」

 俺は足早にその場を後にした。

「何なのよ!」

 王女様の声は聞こえないふりをした。最近本当にトラブル続きだ。早く帰って寝よう。



 翌朝、朝食を済ませて今日は朝からゴブリン狩りをするために森にやってきた。最近色々有ったので、ゴブリン狩りと言う名のストレス発散だ。

 昼過ぎまで時間をかけて、百匹以上のゴブリンを狩ってみた。以前はそれほどでも無かったが、長い迷宮攻略の日々である程度身体を動かさないとストレスが溜まるのかも知れない。少しスッキリした。

 せっかくBランクに上がったのだから、高ランクの討伐依頼を受けても良いかも知れない。



 早速依頼を探しにトロア街にやってきた。冒険者ギルドに行こうと歩いて居ると、道が混んで来た。この街にはそんなに居る訳では無いが、こんな事は初めてだ。人波を避けながら進むと、どうやら広場で何かイベントみたいな物をやっているらしい。

 何とか冒険者ギルドの入り口にたどり着いた時、少しだけ見ることが出来た。騎士達に囲まれた空間の中に、どこから運んで来たのか祭壇の様な物の上で王女様が神々しいオーラを放つ水瓶を掲げていた。言葉は聞き取れないが、何か話していてその言葉に反応して水瓶から水が溢れ出し辺りを濡らして行く。更に、霧も発生して街全体を包んで行く様だ。

 霧や水には魔を寄せ付けない聖水の効果を持って居るらしく、ある種の結界を形成している。ポチを見ても何ともないらしく、従魔には影響は無く野生の魔物のみを近づけ無い高度な結界だった。

 水瓶を掲げて祈る王女様は、神秘的で人間離れした美しさを持っていた。俺はしばしその美しさに見とれて、その場に立ち尽くした。

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