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勇気、ください。  作者: 愛野 恵。
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パソコンのない生活

 娘が1泊2日のキャンプに出かけている間に、大掛かりな部屋の模様替えを決行した私たち家族。6台あったパソコンのうち、寝室で私が寝る前に遊ぶ用と、リビングで娘がメインで使っていたパソコンを撤去したのだ。

 いない間に片づけてしまうなんて、ずるいかとも思ったが、生活を変えるには、今しかチャンスがないと思ったのだ。

 娘も、ネットの友達から煙たがられているような雰囲気だったし、顔も知らない相手から意地悪されたりしながら繋がり続けるのもどうかと思ったからだ。娘は友達が出来たと思い込んでネットで遊んでいたのだろうが、相手は娘よりかなり年上の20代の男の子たちで、最初は息子とゲームで遊んでいたのが、息子が遊ばなくなってきて、娘がずっとその人たちと遊んでいたのだ。

 20代の男の子にとって、当時9歳の小学生の女の子なんて、暇つぶし程度の友達にしかなれないだろう。現に、娘はそのゲームの内容を楽しむよりも、その子たちとゲーム内のチャットでお話することの方が楽しかったようなのだ。暇な時は、娘のおしゃべりに付き合うその子たちも、真剣に遊びたい時に、娘が話しかけてくるとうざったく感じるだろう。そうしてだんだんと、その子たちが遊んでいるゲームに娘が行くとすぐに「解散」ってなったり、遊んでいるゲームの部屋に鍵がかけられていて、娘が知ってる暗証番号じゃ開けれなくなったり、と、娘を避けている素振りが見受けられたのだ。

 仲間はずれにされて、悲しい思いをしながら遊び続けるよりも、パソコンが使えなくなったことにして、娘の生活の中からパソコンを消してしまった方がこの先いいんじゃないかと思ったのだ。私も一緒に寝室のパソコンを撤去することで「ママは遊んでるのに」と思われないようにした。私も毎日寝る時間を決めてパソコンをしていたが、以前ほど依存もしていなかったので、別に寝る前に遊べなくなってもいいや、と思えたのだ。


 キャンプから帰ってきた娘は、最初は部屋の変化にすぐ気付かなかった。リビングのパソコンは、テレビとモニターを共用してるので、テレビのモニターがそのままあれば、パソコンがなくなったことになかなか気付かないのだろう。キャンプで疲れていたのか、娘はその日はパソコンで遊ぼうとも思わなかったらしく、何も言わないまま夜を迎えた。

 寝室に一緒に入って、初めて娘が

「あれ?」

と、部屋の異変に気付いたのだった。

「ママのパソコンがないよ?」

私が寝室でパソコンを置いていたデスクの上には、息子が去年の夏休みの工作で作った本棚を置き、そこにいろんな単行本を並べておいたのだ。

「気付いた?パソコン、壊れてしまってん。ここのも、リビングのも」

「え・・・」

娘が一瞬悲しそうな顔を見せた。あのネットの友達と遊べない・・・と思ったのだろう。

「見て見て!本、めっちゃあるやろ?」

私は、本棚を置いてある机のところに行き、椅子に座って見せた。

「こうやって、本読めるねんで。今まであんまり本読むことなかったやろ?」

「うん」

「まだ本棚余裕あるから今度の休みに古本屋でも行こか」

「うん・・・ママも夜遊ばへんのん?」

「そやで!パソコン壊れてしもたから、しゃあない。ママもここで本読むわ」

そんなやりとりをして、その日は眠りについた娘だった。


 その日以来、娘も「パソコンで遊びたい」と言わなくなった。息子が使っているパソコンは使えるので、絶対に遊べないわけではないのだが、息子が「使うなオーラ」を放出しているようで、娘はずっと別の遊びをするようになった。

 今まで娘は結構なネット依存症になっていたので、突然パソコンで遊べなくなって、最初は何をして遊べばいいのかすらわからなかったようだった。私がヒントを出したり、一緒に遊んだりして少しずつパソコンのない生活に慣れてきたようだった。


 だんだん、学校でも友達が出来始めたようだった。相変わらず喋ったり発表は出来ないが、学校帰りに校庭で友達と遊んでから帰ってくる日も増えてきた。今まで、友達と遊ぶこともなく帰ってきてはネットで遊んでいたので、こうやって校庭でブランコやジャングルジムなどで体を動かすのはとてもいいことだと思ったのだった。娘が無理して喋らなくてもいい状況の中で、友達も数人いる。まずは、この状況の中から少しずつ娘が友達と会話が出来るようになればいいなぁ・・・。


 いつも娘と一緒に帰ってくれる仲良しの女の子は、週に2回ぐらい習い事をしているようだった。そうか、習い事か・・・。その子は塾と水泳教室のようだが、何か娘が楽しんで出来る習い事ってないだろうか。私はいろいろリサーチし始めた。

「あ、そうだ」

娘の幼稚園時代からの同級生が2人ほど、習っている習い事のことを思い出した。そこなら、気心知れてる友達がいるし、娘もすぐに馴染むんじゃないかな?私は早速、その習い事の体験予約を入れることにしたのだった。


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