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勇気、ください。  作者: 愛野 恵。
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話し下手

 娘は赤ちゃんの頃、まとめて眠るいい子だったが、それでも時々夜中に起きることもあった。私はそんな娘を再び寝かせるまでは寝られないので、最初はずっとテレビをつけて起きていたが、ちょうど怖い映画のCMを夜中に見てしまって、怖い思いをしたので、そこから夜中にテレビを見なくなった。そこで、私は旦那さんが遊んでいたオンラインゲームサイトに登録し、自分も遊び始めたのだった。

 

 最初は、一人きりで遊ぶようなパチスロなどで遊んでいたが、月日が経ち、違うゲームを始め、ゲームを通じて仲間も出来、気付けばオンラインゲームサイトにすっかりのめりこんでいた。

 そして、娘が1歳になろうとする頃、6歳の息子も私の影響でそのサイトでゲームをしだした。6歳でネット遊びもどうかと最初は思ったが、周りの子が持っている高いゲーム機を買い与えることも出来なかったので、ゲームで健全に遊ぶぐらいならいいだろう、と思って私が見ているところで遊ばせることにしたのだ。息子はゲーマーの私の血を受け継いだのか、教えもしないのにどんどんとゲームサイトに慣れていった。そして、息子の遊ぶ姿を見ていたら、おもしろそうなゲームをしていたので、私もそのゲームを始めたのだった。

 そのゲームは、1人~6人で冒険に出るRPGのようなゲームだった。1人でも遊べるが、やはり仲間が出来て楽しさも倍増した。一緒にボスを倒したり、チャット機能で冗談言いながら遊ぶのは本当に楽しかった。


 私がゲームに一番のめりこんでいた時期、パソコンはリビングに1台、寝室に1台あった。日中はリビングのパソコンしか使えないし、実家で親と兄と私の家族で同居していたので、堂々と遊ぶことは出来ず、いつも家事の合間に「ちょっとだけ」と言い訳をしながら遊んでいた。

 しかし、育児もあるし、食事も、実家にいる家族全員の分を私が担当していたので、独身の兄に私が遊んでいる姿を見られると

「用事しろや。腹減ったから早くご飯にしてくれ!」

と、まるで女中扱いだった。兄は生活リズムがみんなとずれていて、自分が勝手にその時間に食べたいだけなのに、その食事も私に作らせていた。母親が「私がするのに」と言うのを、兄は「こいつ遊んでるからこいつにさせればいい」といつも言うのだった。そのせいもあって、実家では思うように遊べず、私も唯一のストレス解消が出来ずに、イライラしてしまうことが多々あった。


 実家を出てからは、相変わらず家事の合間にゲームをする日々だったが、実家にいる時より、気持ちが落ち着いて遊べるので、私はとても満足していた。

 そして、マイホームに引っ越ししてからは、パソコンが一気に増えた。家族4人、一人一人が使えるように4台、その他旦那さんの仕事用、息子の友達が遊びに来た時に使えるようにさらに1台、合計6台のパソコンが家中の部屋に設置されていた。旦那さん専用のパソコン以外は、中古の安い物だったので、そんなに高価な物ではないけれど、息子の友達が遊びに来たりすると「すげー」となる状態ではあった。


 そんな中、娘も私たち両親とお兄ちゃんがパソコンで遊んでいる姿を見て育ってきたので、当然パソコンで遊びたがった。最初はお絵かきソフトなどでお絵かきをしていただけなのだが、私や息子と同じ冒険ゲームをやりたいと言い出し、小学校3年になった頃に、オンラインゲームサイトに娘も登録をしたのだった。


 ここから、娘の生活が変わってしまった。最初はお兄ちゃんやお兄ちゃんの友達と遊んでいた娘だったが、息子がネット上の仲間を見つけてその人たちとよく遊ぶようになり、その人たちに娘を紹介し、一緒に遊ぶようになり、その後は、息子がだんだん遊ばなくなってきても、娘がそのネットの仲間と遊ぶようになっていったのだった。

 学校から帰ってきたら、すぐにパソコンをつける。宿題は少し休憩してから、という言い訳で。念のため、娘には一人で遊ぶ時はリビングで私から見える場所で遊んでね、と言っておいた。ゲーム内のチャット機能などでどんな話になるかわからないからだ。娘はごく普通に仲間とチャットをしていたが、びっくりするほど早打ちのブラインドタッチになっていた。いつのまにこんなに上達したのか。


 しかし、学校で「場面緘黙症」ということを言われて以来、私はこういうネットでのチャットで話す生活が多少なりとも場面緘黙の悪化に影響してるのではないか・・・と考え、娘からネット生活を切り離す方向で考えていた。ただ普通に「パソコンもうやめて」と言っても娘に悲しい思いをさせるだけなので、娘が4年生になってすぐの頃、ある作戦を決行したのだ。

 1泊2日で、学校のキャンプがあったその日、娘のいない我が家では大掛かりな作業をしていた。寝室とリビングのパソコンを撤去したのだ。娘には、パソコンが壊れちゃったということにして、私も今までは娘が寝てから寝室で遊んでた生活を改めようと決めた。娘だけパソコン禁止にしたら不公平だから、私も娘の前では遊ばないことにしたのだ。

 ネットでチャット機能で話すことに慣れてしまったら、日常生活で人と話すのが下手になる。実際、ゲームにはまっていた私は、仕事先で人と話すのがとても下手になったと自分で実感したからだ。娘も場面緘黙になり、ネットの世界で文字で話すことによって、この先場面緘黙が直らなかったら困る。だから、思い切ってパソコンを撤去したのだった。



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