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勇気、ください。  作者: 愛野 恵。
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スクールカウンセラー

話したくても話せない。場面緘黙をご存知ですか。

このお話は場面緘黙症と診断された娘を持つ母親の思いを綴ったお話です。

 娘が小学3年生の頃、学校の担任の先生から言われた一言。

『スクールカウンセラーを受けてみませんか』

正直、「なんで?」という気持ちが強かった。カウンセラー受けないといけない理由なんてあるの?

 担任の先生が言うには、

『学校で、言葉を発さないんです』

どうやら、元々自分から手を挙げるタイプではないが、順番に回ってくる本読みとか、簡単な自己紹介でさえ、娘の番になると、口を固く閉ざし、結局は言えずに終わってしまうようなのだった。



 母親の私には、娘が言葉を発さないことが信じられなかった。だって、いつも家の中では「ちょっと黙ってくれる??」というぐらい、話しかけてくるからだ。

 小さい頃から、元気が良すぎる子供ではなかった。どちらかと言えば、おとなしいが、それでも、人並みにアホなことは言うし、ふざけたり、笑ったり、ごく普通の子だと思っていた。



 娘が3年生になってようやく、学校側からカウンセラーを受けてみたらどうでしょう、と言われたのだが、学校側が言うには、1年生の頃から、娘は話さなかったようなのだ。

 私は、ワケがわからないまま、スクールカウンセラーを受けることにした。



 カウンセラー当日。PTA本部役員をしていた私でも、入ったことがない教室に入る日がやってきた。中に入ると、普通の教室ではなく、やわらかな落ち着いた雰囲気の部屋だった。

「どうぞ、おかけください」

カウンセラーの先生に言われるまま、席につく。先生の簡単な自己紹介の後、カウンセラーが始まった。

「娘さんは、小さい頃からおとなしい性格ですか?」

先生に聞かれ、娘の小さい頃を思い出してみる。元気のいい子供のような『見て見てー!!』と自分に気を引かせるような行動はしないが、幼稚園の頃も普通に近所の子供たちと遊んでたし・・・

「普通だと思いますが・・・どちらかと言えばおとなしいですね」

と、答えてみた。

「おうちでは、どうですか?」

「家では、よく喋ります。もう、うるさいぐらいです」

「娘さんは、学校では一言も話さないと担任の先生に伺ったのですが・・・」

「そうみたいですね。私も電話で聞いてびっくりしました」

「娘さんは、場面緘黙ばめんかんもくという症状かも知れません」

「え、場面・・・なんですか、それ」

その時の私には、聞きなれない言葉だった。場面緘黙って何なの・・・?




 カウンセラーの先生にもどういう症状なのか聞いたが、私は家に帰って場面緘黙について調べてみた。



 場面緘黙とは、小児期に多い不安障害の症状の一つ。

言葉を話したり理解する能力はほぼ正常であるにもかかわらず、家庭などでは普通に話せるものの、学校や職場など特定の場面では、不安や緊張から話せなくなってしまうという症状です。

早期に発見・対処ができれば改善の可能性が高いとされますが、日本ではまだ認知度が低く支援が遅れています。そのため、いじめや不登校、うつ的症状など二次障害で苦しむ人も多いといいます。



「そうなんだ・・・」

パソコンの画面に出てきた場面緘黙の説明の文章を読み、私の頭に不安がよぎる。なんで、娘が?娘に何があったのだろう。そもそも、場面緘黙になる原因って何なの?私は再びパソコンの画面を食い入るように見る。



 場面緘黙症の子供の多くは、先天的に不安になりがちな傾向がある。また、内向的な性格であることが多く、これは脳の扁桃体と呼ばれる領域が過剰に刺激されることによると考えられている。この領域は、脅威の兆候を感知すると「闘争・逃避反応」を引き起こす。

 場面緘黙症の子供には、感覚情報の処理に問題のある、感覚統合障害(SID)と呼ばれる障害を持つ者もいる。これは不安を引き起こし、子供は「閉鎖」させられて話すことができなくなる。

 場面緘黙症の子供のうちおよそ20~30パーセントは、会話障害あるいは言語障害をも併せ持っている。このことによって、子供は話すことが要求される場面でストレスを感じる。また、両親の母語が異なる子供や、言語の異なる外国に暮らす子供、幼少期に外国語にさらされた子供は、話すことが要求された言語について自信を失ってしまうことがある。いずれの場合も子供は内向的な性格を示すが、このような言葉の問題によるストレスは、子供を緘黙にしてしまうのに十分な不安の原因となる。

 場面緘黙症の原因が虐待・ネグレクト・心的外傷によるものであるとは限らない。場面緘黙症の子供は、全く話すことができない状態に症状が進行するケースもあり得るが、ほとんどの場合、場面によっては話すことができる。一方、心的外傷による緘黙は、通常、突然あらゆる場面で話すことができなくなる。



「うーん・・・」

娘には会話障害や言語障害はないと思う。何かの不安がストレスになって、心を閉じてしまうのだろうか。娘にそんな不安を与えてしまったのは、もしかしたら母親の私なんだろうか・・・。私は、娘が小さい頃に、娘にどんなことがあったのか、出来る限り思い返してみることにした。


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