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記憶の断片と終わりの日に・・・

目を覚ますと私はまた、寝室のベットの上で寝ていた。ガラスの向こうにあるのは巨大な光を放つ玉。今じゃ、あの正体が分かっている。意識は、はっきりとしていた。体を起き上がらせ立ち上がり、ガラスに手をそっと付けてみる。

 もう、頭がひどく痛くなることはないだろう。私はすべて思い出したのだ。自分が誰で、何をしたのか。それに、自分はこの世のものではないことさえも。

 今となってはあの、猫が私に言っていたことがすべて理解できるような気がした。

雨の日、猫のぬいぐるみを渡された優しそうな老人に、あの後連れられて行ったのは、国の秘密裏に新兵器を開発していた地下ラボだ。長い階段を下りた先には、白い廊下に区々に分かれた部屋がいくつもあった。そこでは白衣を着た人間が、行ったり来たりを繰り返し、研究に没頭している様子だった。

 施設内には、なんだか分からない機械が無数に置かれている。白衣を着た人たちは老人に連れられる私を、蔑むような目で見るのが少しだけ怖かった。

 老人に連れてこられたのはラボの大きな一室だった。そこにはありとあらゆる研究のための機会がそろっていた。そこで、私に課せられたのは都市が一つ丸ごと破壊することができる兵器の製造だった。

 後から知ったことは、この老人は結局国の諜報部の人間だった。地獄のような施設から逃げ出した唯一の生存者の私に、国は目を留めてここに縛ったのだ。

 待遇はあの施設の頃とはすごい違いだった。寝泊りはビルのVIPルームのような部屋で行った。それは記憶を失って最初に目覚めたあの部屋だった。

 毎日食べきれないほどの食事が決まった時間に部屋に運ばれた。外界と極端な接触は禁止されていたものの、そんなの私は特に望まなかった。

 研究所と部屋を往復し一年の月日が経った。ここで私は、カナリアの街に住んでいたら決して目覚めなかった、天才学者の才能がここに来てより一層開花してしまったのだ。

 私はとうとう、どんな巨大な都市を一つ、灰に変えてしまえるような弾道ミサイルを開発させた。

 私の思いはずっと変わらない。これでこの世界を終わりにしたいと、それだけを強く思っていた。

そして、その思いがついに実現へと移しだそうとした時だ。

 他国への誘拐や亡命、それらを恐れたこの国は、兵器が完成したと同時に、私を殺してしまったのだ。

 今思えば、私の人生は何だったのだろうかとも思う。さんざん人に利用されてきて、こんな思いをしたのにそれは全部、報われなかったのだ。どうやら私はひどく神様の怒りを、知らず知らずに買ってしまっていた。

 私の願いといったいなんだっただろう。いつから人間が嫌になってしまったのだろうか。今となってはもう、分からない。

 もう一度、私はガラスの向こうに見える光を放つ巨大な玉に手を添えた。

 私が殺される間際、ミサイルプログラムにある細工をした。それはこの兵器が実際に、使用されるとき、管理システムをすべて乗っ取り、ミサイルの目標をこの街に自動的に変更させるというものだ。

 誰にも気づかれずに仕込んでおいたプログラムは、私が死んだあと、思惑通りに作動したみたいだ。だから、こんな結末を迎えることになったのだ。

 じきにたら、この止まってしまった空間は、動き出すだろう。私にはそんな気がした。

 もう、私には悔いることはない。最後にここで終わりの始まりを見られるのなら。


「これが、この世界にとって終わりの日だよ、カナ……」


 私はガラスに映るカナの姿を見て、小さくつぶやいた。すると、目から一筋の涙がこぼれる。そう言った瞬間、さっきまで止まっていた時間が、少しずつ動きだした。

そして今、見えているすべてのものが、あの巨大な玉の光の中へと消えていった。



 この世界には地獄は存在しない。あるのはすべて楽園だけ。

だから私は求めるのだ。この世界の終末を……。

ただ、最後に私は思うことがある。この世界は残酷なのだと……。



ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。

ここで「終わりの日に・・・」完結です。この話は特に続編などは予定してはいません。とにかく終わりです。毎週upするようなこと言っておきながらかなりマイペースな投稿になってしまいましたね。

次回作はマイペースであげていきたいですね。、その時にまた読んでくれたらいいなと思います。ではっ( `・∀・´)ノヨロシク

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