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施設の中と言えば、ここに来た最初の私の予想通り、学校の校舎のような場所だった。体育館や校庭はないものの、各階にはいくつかの勉強机が並べられた教室に黒板や教壇がある。
でも、施設全体の窓には木の板が全個所に敷かれてあり、全く外の見えないようになっていた。まるで密閉空間だ。こんなとこに毎日居たらもやしになってしまう。
猫は誰もいないとある教室の中に入ると、一つの机の上に乗って話し出した。
「ここはね、普通の学校みたいに学年生で進級するわけではないんだ。各階にここと似たような教室はあるけど、それは全部頭の良さによって決まる。そしてここが君のいた教室」
他の教室と違って、ここの教室だけを見ると机が六つしかない。他の教室は一室に少なくとも十席はあった。
「なんでこの教室だけ、机が六つしかないの?」
私は不思議に思い、猫に聞いてみる。
「ここは、どの教室よりもより優れている六名が選出されて、授業を受ける場所だよ。君はその中の一人。そしてこれが、ここに来て開花してしまった君の才能だった」
猫はいったん口を閉じて深呼吸を置いてまた話し出す。
「ここでの生活は本当に窮屈なものだった。子供たちの不安や、故郷に帰りたいという願望を抱かせないために、窓ガラスには木の板が張られて外の光景を見せないようにした。それに外出すらも許可されなかった。
子供達は、校舎の裏の独房のような寝室から食堂を通ってこの教室に来る。毎日がその繰り返しだった。君はそんな生活をなんの疑いもなく、ただここの先生がいつも口に出す、楽園という言葉だけを信じて三年も暮らしていたんだ。階級はクラスで一番上で、とても優秀な子供だった。
子供達には、休憩時間というものは存在しなかったけど、食事をとる間、君達は他の子供たちと会話をすることができた。でも、ある日事件は起こったんだ」
「事件?」
「子供達がこの施設から脱走しようとしたんだ」
脱走という言葉を聞いてまた、少し頭が痛くなった。
「ここから脱走しようとした子供は三人。そのうち二人はフェンスを駆け上がる時、射殺された」
「もう一人はいったい誰?」
猫に対して問いかけると、猫は私の目の前まで来て、顔をじっと見て言う
「君さ。この施設で脱走できたのは君一人。そして、この場所の唯一の生き残りでもあった」
「私?」
私は戸惑いながら聞き返すと猫は歩き出し教室を出て廊下に出た。私はそれを何も言わずについて行く。