赤く光る球体
初めましての方は初めまして。お久しぶりの方は、めちゃくちゃお久しぶりです。大塚です。今回から前に書ききれんかった『終わりの日に……』という、自作小説を書きあげていきたいと思います。更新日は毎週、金曜日か土曜日の夜、9時頃には上げて行きたいと思います。( `・∀・´)ノヨロシク
まだはっきりとしない意識の中、私はベットの上で仰向けになりながら目を覚ました。身体にかかっていた薄いタオルケットを乱暴に剥ぎ、頭を手で押さえながら体を起こす。
頭の中がぐらぐらと揺れる。ひどい貧血でも起こしたように手足に力が入らない。
私は膝の上に広げられた手の平を見てそう感じた。そこから滲み出るような、ドロドロとした汗がさらに気持ち悪かった。
私が寝ていたこの部屋には特に何もなかった。あるのは、今私が乗っている一人用の白いベットに、分厚い本が納まっている木製の本棚だけ。だが寝室だというのにここはまるで高級ホテルのVIPルームかと思うくらい広い造りをしていて、妙に落ち着かない。
ベットに密着した壁はすべてガラス張りでそこから街の風景が見える。
この部屋がある建物よりずっと高い高層ビル街に、その向こうには夕日が反射する水平線まで見える。いや、初め私は海の彼方へと消えて行く夕日だと思ったが、あの赤く光を放つ球体はそうではないことに、すぐに気が付いた。
それはまるで何も前振りなく地上に降り注いで来た、巨大な隕石のように、その球体の頭上に褐色の尾を描きながら降ってきている最中のようにも感じた。そして爆弾が破裂したように辺り一面を光の渦の中に包みこもうとしていた。それが最初夕焼けだと勘違いさせてしまったのだろうと思った。
あれはこの街の模様し物の花火なのだろうか。それとも本当に爆弾や隕石がこの街に降ってきているのだろうか。
そんなことを黙々と考えながら、私は不思議に思いガラスの壁に手をそっと添えた。
だが、光を放つ球体は、奇妙なことにその場に静止したままで、全く動こうとはしなかった。それは、あの球体だけではない。ここから見下ろせる道路には、車や人、それに空を舞う数匹の鳥までもが、時間を切り取ったかのように止まっていた。
こんな奇妙な状況で動いているのは私だけ。なぜなのかは全く分からない。ここまでくる記憶を必死で思い出そうとしてみてはいるのだが、頭の中に浮かんでくるのは空白の映像だけだった。
「カナン……」
そんな中、唯一思い出すことのできた名前を、ガラスの向こうに薄く映る私に言ってみた瞬間、私の右目から一筋の涙が、こぼれ落ちた。指先で涙を拭きとるが、全然止まらない。こんな時、いったいどうすればいいのだろう。別に泣きたくなんかないのに、胸をきゅうっと締め付けられたみたいに呼吸も次第に粗々しくなる。『カナン』その名前にどんな意味があるのか全然分からないのに、どうしてこんなに悲しい気持ちになってくるのだろうか。
その真実を知る術は、今の私には到底できないことだ。それが少しだけ情けなく感じた。