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第三章 辿り着いた場所

 家を出てから三日も経っていた。

 7月のカレンダーは役割を終え、8月のページに変わる。

 都会では聞くことも出来なくなったセミの鳴き声が普通に聞こえる。

 ヒグラシの鳴き声も響き始めた。

 僕は今、南砂華島(みなみさかじま)にいる。

 都会を離れ、田舎に来て自然を堪能し、海岸沿いをバイクで走り、船で海を越えて。

 なかなか出来る体験ではないと思う。

 あの時、旅に出ようと思わなければ、僕は未だに家で蒸し暑いサウナ状態の部屋のベッドに横たわっていたかも知れない。

 何かが、僕の中で変わったんだ。

 いや、変わっていないのかも知れないが、変わろうとしているんじゃないか?

 無気力に毎日を生きる僕が、自分の力でここにいるんだ。

 夢を見に来た。眠っている時に見る夢じゃない。

 僕の夏は、ようやくここから始まったんだ。

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