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ギフト2 【三十路は運動不足に後悔する】


 息を潜める。

 日中であるにも関わらず、地面に届く日差しはなんとか視界に困らない程度の明かりのみが広がる森林。

 周囲からは獣臭が漂い、まるで動物園の檻の中にいるかのように感じる。

 そんな中、茂みの間から見える視線の先から少しずつ近づいてくる()()に俺は怯えて隠れていた。

 あれが何かはわからない。

 ここがどこかも分からない。

 理解できることは、俺の命が危ないという現実だけが、近づいてくる足音と共に自分の心音が大きくなるのが分かる。

 

 「〇◇※△×?」

 「□〇△×◇・・」


 近づいてくる何かは複数いるらしく、茂みで見えない片側と何か分からない言語で喋っている。

 一歩、一歩とゆったりと近づいて遂に手を伸ばせば触れられるほどの距離まで来た。


 「・・・×〇◇※」

 「〇×」


 どうやら俺のことには気づかなかったらしく、何かはそのまま通り過ぎていった。


 「・・~~~ッ! はぁ」


 緊迫した空間から脱したことで思わず小さい息が漏れた。


 謎の白髭爺さんに生き返らせてもらった後、俺は気が付いたらこの日差しの明かりも少ない森の中に立っていた。

 右も左も分からずとりあえず周囲を警戒しながら森を彷徨っていると、()()に出会った。

 遠くから見えたシルエットは人間と変化ない姿をしていたが、見た目が全く違う生物だった。

 言葉も通じず、あれは何故か俺の姿を見るなりに襲い掛かってきた。

 ギリギリのところで避けることに成功はしたが、振り切られた腕の先にあった気は一発で吹き飛ばし、地面は足の跡がめり込むほどの力量に俺はすかさずにその場から逃げることにしたのだ。

 そして、今にあたる。

 

 「まずはこの森を抜けることを優先にしないと、このままじゃあれに俺は・・・」


 あれに遭遇した際に見えた光景を思い出す。

 あれがたむろっていた場所には人間の男の姿があった。

 しかし、その姿はあまりにも見るに堪えないものとなっており、その光景に認識するまでかなり時間がかかったが、落ち着いた今にハッキリと脳内で理解した。

 

 「あれは・・あの光景は・・・ッ!!」


 思い出しただけで震える光景を思い出した直後だった。

 横から何か視線を感じる。

 

 (まさか・・いやだけどそんな・・)


 ゆっくりと最悪な想定を外れる事を願いながら視線のある方へ向けると。


 「・・・〇△」


 涎を垂らして満面の笑みを浮かべる あれ の姿があった。


 「ぎぃやぁぁぁぁぁああああああッ!!!」

 「※△〇×!!」

 「×◇※〇ッ!?」


 大声をあげて全力ダッシュで逃げる。

 こういう時はいつも日頃の運動をしてこなかった過去の自分を恨む。

 三十路に入っても学生の頃から運動だけはそれなりに鍛えてきた驕りのせいで、この年齢になってもそれなり走れるといつも考えていたのだが、たった50mほど走っただけで息が切れる。

 走る足も重く明らかにスピードも落ちている。

 

 「ぜぇ! ち、ちくしょー! こんなことならお金を出してでもジムに行っとけばよかった!!」

 

 しかし、そんなことをいまさら後悔してもすでに遅い。

 今までサボってきた運動のツケが回ってきたのだ。

 500mもない距離を走ったあたりで あれ が伸ばした手が俺の肩を掴んだのが分かる。

 

 「も、もう駄目だッ!!!!?」


 すべてを諦めて足を止めようとしたその瞬間。


 「止まるな!」


 上空から聞き覚えのある言葉が聞こえた瞬間、俺の肩を掴んだ あれ は衝撃音と共に頭から地面にめり込む形で倒れこんだ。

 その光景を見ていたもう1人の あれ は焦った様子で仲間を置いて森の奥へと消えていった。

 俺はというと諦めて倒れこみそうになった足を踏ん張りながら地面に尻をつけ、荒くなった息を整えながら上空から あれ を地面に吹き飛ばした声の主をみる。


 「あんた、その言葉。 もしかして日本人?」


 日差しが入らなかった森に穴をあけて太陽の明かりをスポットに立つその人物は、まだ小学生ほどの蒼い瞳をした少年だった。

 

 

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