ギフト1 【死にたくありません!】
俺は後藤勲、32歳独身。
年齢=彼女なし更新中だ。
高校を卒業してから12年。
近場の工場で働いては家に帰り寝て、休日はアニメや漫画、ゲームをして過ごして、また仕事へ向かう。
一部の人間にはつまらない日常だと言われるが、個人的にはとても充実した人生を謳歌していると思っている。
・・・思っていたのだが。
「誰かぁぁぁあああっ! 助けてくださぁぁああああいッ!!」
目が覚めると、俺は何もない空間にポツンと立っていた。
上半身は自由に動くのに、何故か下半身が全く動かない。
まるで体がここから動かくなと意思を持っているようだ。
だから叫んで助けを呼んでみた。
だってこの状態で体感1時間はこの状態なのだもの。
そんな時、上空から神々しい光が照らされた。
光が強くてよく見えないが、輝かしい光の中に人の形が見える。
まさか、まさかこの流れはッ!
スタイル抜群!
見麗しい美貌!
そして聞き惚れる声で囁く美声。
「アナタ様はもしかして! めがm」
脳内で構築された登場するであろう人物とは裏腹に、よぼよぼの白髭を生やした爺さんが出てきた。
「・・・よっ」
まるで近所の知り合いかのように軽い挨拶をしてきた爺さんに俺は「うす」と小さくお辞儀した。
決して残念な顔などしていない。
期待外れだという顔はしてると思うが。
「そんな期待外れみたいな顔をするでない」
やっぱり顔に出てたみたい。
謎の白髭爺さんはプルプルと震えた手に持つ紙を広げて中身を呼び上げる。
「え~、後藤勲。 32歳。 え~彼女なし。 え~特に変わりようのない平凡な日常を過ごしており彼女なし」
「おい、なんで彼女いないことを2回言った?」
「え~、最近始めたジョギング中に信号無視した車に轢かれ死亡。 そして彼女なし」
「いやだからどうして彼女ないことを何度も・・なんだって?」
「ん? 彼女なし」
「違う。 そこじゃない」
そこから何度も白髭爺さんは同じ個所(主に彼女がいないこと)を繰り返して音読するため、俺はこれ以上の辱めを受けない為に頭を深々と下げて爺さんが読み上げる紙を借りることに成功した。
「何々? 神託書?」
そこには俺のプロフィールとして作られたように個人情報がビッシリと記載されており、最後の分には俺がジョギングの最中に車に轢かれて死亡したことが書かれてあった。
「つまり、ここは死後の世界?」
「あ~、そうじゃな。 ドンマイ」
ものすごく軽い感じで親指を立てる爺さんに腹を立てることも忘れるくらい放心状態になる。
確かにこの不思議な空間と当たり前のように空中に浮いている白髭爺さんを見れば、ここが死後の世界だと言われれば辻褄が合う。
その現実が受け入れてしまっている自分の思考も、まるで死んでいる事を受け入れることが当たり前になっている自分に反論する余地が完全になくなっていた。
しかし。
死んでしまったことを受け入れてしまったが、どうしても湧き上がる感情があった。
「―――ない」
「・・ん? なんじゃって?」
顔を下に向け、絞り出したような声に耳を傾ける爺さんに、今度はハッキリと口にした。
「死にたくない。 俺はまだやりたいことが沢山あるんだ!」
続きの気になる漫画がある。
来季から始まるアニメがある。
新シリーズが発表されたゲームがある。
なにより、恋人と結ばれて結婚してそれなりの人生を送りたい。
ここが死後の世界で、目の前にいる爺さんが神様であるなら、俺はダメ出しで声に出して伝えてよう。
「俺はまだ、死にたくありません! どうにかなりませんか?!」
「ん~。 分かった」
・・そうだよな。
わかっていたことだけど死んだ人間をどうにかできるなら神様なんていらないよな。
「・・・ん? 今なんて言った?」
「いいよ。 生き返らせてやる」
「・・え~と、マジで?」
「うん。 大マジじゃ。 それじゃ」
すると爺さんは指を軽くクルッと回すと足元に魔法陣のようなものが出現した。
地面から光が輝きまるで無数のホタルがあふれ出たようだ。
「お主にはこれから ギフト を授ける。 その名も死者蘇生じゃな」
「へ? ん? 死者蘇生??」
「それじゃあ第二の人生。 思う存分がんばるのじゃぞ~」
そうして爺さんはまるで近所の学校へ向かう子供を見送るようにラフな感じで俺を見送った。
今の段階で俺がどうなっているのかまったくわからない。
わからないが、どうしても爺さんに1つ言いたいことがあるから声を大にして言いたい。
「なんか何もかも適当すぎじゃねッ!?」




